第4章 核燃料
§2 わが国の開発状況

2−1 探鉱

 従来,わが国において,資源的価値のあるウラン鉱床の存在は,発見されておらず,従って,核原料物の国産資源の確保の意味で,その発見が各方面で待望されていた。
 29年9月,岡山県三吉鉱山から,初めて,金属鉱床に伴う砒銅ウラン鉱が発見されて以来,主として,工業技術院地質調査所の数次にわたる調査の結果,鳥取県倉吉地域の鉱脈型鉱床,鳥取,岡山県境人形峠の推積型鉱床,その他各地の旧杭,露頭等において含ウラン鉱床が発見されるにいたった。
 地質調査所は,精査の前段階である概査を担当しており,31年度より,ウラン鉱賦存の可能性のある地域,約20万平方キロメー トル(日本の面積の約半分)を対象として,エアボーン・カーボーン調査を行ない,36年度末までに,経費4億3240万円をもって,約14,100平方キロメートルの概査を終了した。 一方,原子燃料公社は,31年8月に設立され,地質調査所の概査のあとを受けて現在まで,5年間探鉱に従事し,これによってわが国のウラン資源の実態は,急速に把握されつつある。
 31年度より35年度までに投入された燃料公社の探鉱費は,総額約12億円で,このうち,人形峠-東郷鉱山の探鉱費は,約9億円で,全体の80%近くを占めている。36年度には,約3億円の探鉱費が充当された。

 この地質調査所および燃料公社2機関の探鉱により,現在,特に,重要視して,探鉱を行なっているのは,鳥取県中部-岡山県北部地区(いわゆる倉吉,人形峠地区)兵庫県北部,京都府北部地区(奥丹後-宮津地区)新潟県中部地区(三川,赤倉,小国地区)岩手県豊沢地区,秋田県田沢湖地区等に分布する花崗岩上の新第三紀層基底部に胚胎する堆積型鉱床である。
 初年度より,継続して坑道探鉱まで行なってきた,人形峠鉱山およびその周辺地区の概要は,次のとおりである。
 人形峠のウラン鉱床は,倉吉地区の鉱米が発見された直後,30年11月に地質調査所のカーボーンによって発見された。燃料公社は,設立と同時に,地質調査所から探鉱を引きついだが,現在までの調査では,鉱床を胚胎する新第三紀層は,人形峠付近を一帯に,鳥取,岡山両県にわたる約150平方粁メートルに広く分布していることが判明している。採鉱作業は,広範囲にわたる地表調査,試錐および坑道探鉱によって行なわれ,人形峙-東郷鉱山は,相次ぐ新鉱床の発見により,その埋蔵量は,第4-5表のとおり平均品位0.065%(U3O8)として287万トンとなり,35年の215万トン,36年の242万トンに比し逐年増加の一途をたどっている。

 ウラン鉱物は,人形峠鉱山の比較的浅い部分の酸化帯では燐灰ウラン石がまた,深部の非酸化帯では人形石が認められている。
 人形峠および東郷鉱山のウラン鉱床は,その鉱石の性質,埋蔵量,品位などの諸点から,現在までのところわが国随一の資源的価値をそなえているものである。
 今後は,この地域内における既知鉱床の詳細な探鉱を行なうと同時に,この地域周辺に分布する一連の含ウラン新第三紀層の探鉱範囲を拡大して行く予定であり,また,地質調査所における概査の結果異常地帯と認められた地区についても探鉱を進める予定である。
 一方,通商産業省は,民間企業に対し,31年度以来核原料物質開発促進臨時措置法(31年5月施行)にもとづき,探鉱補助金を交付して,核原料物質の探鉱を奨励している。36年度までに,延べ84鉱山にたいし,約1.4億円を交付し,探鉱を促進してきた。36年度には,約1200万円を,8鉱山に交付した。補助金交付実績は第4-6表のとおりで,漸減の傾向にあり,その成果も,対象鉱山で局部的には,高品位ウラン鉱が発見されているものや,学問的に興味を引くものもあるが,概して,鉱床の規模,品位とも思わしくない。


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