第1章 総論
§2 国内の動き

2−2 機構および法制の整備

 32年頃から原子力委員会を中心として原子力災害補償について検討を進めてきたが,数年間にわたる苦心のすえ画期的法律として36年6月には,「原子力損害の賠償に関する法律」および「原子力損害賠償補償契約に関する法律」が公布され,37年3月から施行された。
 この2法は,原子力災害の発生に当って,被害者の保護を図ると同時に,原子力事業の健全な発達に資することを目的としたもので,無過失責任と責任の集中損害賠償措置の確立,賠償措置額を越えた場合の国の援助,あるいは,特定の場合をてん補するための政府補償契約の確立などが規定されている,これによってわが国においても,本格的な原子力開発利用の態勢がようやく整備され,今後の発展が期待されることとなった。
 原子炉の安全審査に関しては,従来各界の権威で構成された原子炉安全審査専門部会によって行なわれていたが,36年4月には原子力委員会設置法の改正により,原子炉安全専門審査会が,原子炉の安全審査を行なう常設機関として法制化された。また,ソ連の核実験再開以来の放射能問題に対処して,36年10月内閣に放射能対策本部が設けられ,あるいは37年4月には,原子力委員会が「放射性降下物による障害防止に関する対策の基本に関すること」をもあわせ所掌することが明確になるなど,この面での機構の充実がはかられた。


目次へ          第1章 第2節(3)へ