第1章 総 論
§2 国内の動き

2−1 原子炉建設の進展

 わが国の原子力平和利用が本格的に開始されてから6年を経たが,この間に計画された原子炉のうち幾つかが36年度に完成し,今までの努力の成果があらわれた。35年度末に稼動中の原子炉は日本原子力研究所のJRR-1およびJRR-2のわずか2基に過ぎなかったが,36年10月には近畿大学のUTR型原子炉,12月には立教大学のTRIGA-II型原子炉および株式会社日立製作所のタンク型原子炉,37年3月には東京芝浦電気株式会社の水泳プール型原子炉がそれぞれ臨界に到達した。このうち,日立製作所および東京芝浦電気の研究用原子炉は。,政府の助成金による国産原子炉であり,わが国原子力技術の水準を示すものとして大いに意義がある。特に日立製作所の原子炉は,燃料の加工も含めて純国産と称して差支えないものであり,その意欲は高く評価すべきである。
 36年度に着工された原子炉としては,原子力研究所のJRR-4,京都大学の研究用原子炉(ともに水泳プール型)があり,これに建設中の日本原子力発電株式会社東海発電所,原子力研究所のJRR-3およびJPDR,武蔵工業大学のTRIGA-II型原子炉,さらには設置許可申請中の三菱電機株式会社研究用原子炉を加えると,運転中の6基のほかに7基の原子炉があることになり,合計13基という原子炉数は,世界で第6番目ということになる。

 これらの原子炉の建設過程においては,当初想定されなかった各種の困難が生じた。たとえば,JRR-2における燃料要素中の介在物,TRIGA-II型原子力炉におけるタンクの漏洩防止,東海発電所における圧力容器鋼板の取替えといったことがあり,こうした問題の解決のために関係者の非常な努力が払われたが,これらは将来のための貴重な経験であう,こうした経験を積み重ねながら原子炉の建設技術が修得されつつある。


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