第9章 核燃料
§2 わが国の開発状況

2−4 天然ウラン金属の加工

 金属ウランを鋳塊から燃料棒まで加工する技術については,JRR-3の取替燃料を対象として,原子力研究所を中心に,圧延法,押出法とに着目し,天然ウラン棒の加工に必要なデータをうるため積極的に研究を進め,一応加工技術は確立され,取替燃料6トンの発注も36年5月国内メーカになされた.当初から第2次以降の燃料はできるだけ国産でまかなうという原子力委員会の方針があるが,この国内発注によって,はじめて国産技術による民間の核燃料が実際に原子炉に使用されることになった。
 なお民間企業が試作したJRR-3用燃料棒の米国における照射試験も35年9月から行なわれ,近々実験結果が判明することになっている。
 また,東京工業大学に設置された臨界未満実験装置用天然ウラン2.5トンの製造も燃料公社が担当し,加工は民間企業が分担して行なった。
 この加工はトン単位の金属ウランを用いる国内でのはじめての加工であって,それぞれ抽出,圧延または鋳造に関する,加工技術の貴重な経験を得ることができた。
 また,前述JRR-3用燃料素材としての4トンは各種の試験を終え35年7月カナダAMF社に送付され,さきに国際原子力機関から提供された3.2トンといっしょに加工され,36年3月わが国に到着し現在燃料要素の組立が行なわれている。
 一方,民間企業における研究開発は着実な進展をみつつあるが,先進国に格段の立遅れにあるわが国の原子力技術水準の飛躍的向上をはかるため,海外の進んだ技術の導入も行なわれた。 (付録7参照)


目次へ          第9章 第2節(5)へ