第8章 核融合

§3 わが国における研究開発の現状

 わが国における核融合の研究も高温プラズマに関する物理現象の解明の段階にあり,大学,国立試験研究機関,民間企業体などにより行なわれている。これを経費の出所から分類すると大別して文部省予算と原子力予算になり,原子力予算は国立研究機関に対するものと,民間企業体に対する原子力平和利用研究委託費にわけられる。

 大学関係では32年度に大阪大学が超高圧電源およびピンチ効果に関する研究をはじめて以来,東北大学,東京教育大学,東京大学,名古屋大学,京都大学等でプラズマの発生,測定等プラズマ物理に関する研究が行なわれており,その実験データのいくつかはすでに学会などで発表されている。(第8-2表)に35年度文部省科学研究費のうち核融合関係のものを示す。
 一方,国立試験研究機関では電気試験所が33年度以来,環状放電管による高温プラズマーの発生および観測,ならびに複合ピンチの特殊計測法の開発を行なっており,実験結果は学会にも報告されている。また原研でも34年度から開発室を設け,プラズマに関する理論的検討,ブラズマ発生装置,測定装置の検討を行なっている。
 さらに民間企業でも原子力平和利用研究委託費を受けて33年から研究をはじめわが国独自の着想にもとずくイオンサイクロトロンレゾナンス方式によるプラズマ発生の研究,スカロップ型装置による実験が行なわれた。まだプラズマ発生および測定に関する技術的研究も34年にひきつづきイオン源,ミリ波測定の研究を進めている。(第8-3表)に35年度の核融合関係委託費を示す。

 なお研究開発の進展とともに研究の連絡,運営のために各種の委員会が設けられ活動を行なってきた。以下にそれを記す。かっこ内は発足の年月で,すでに使命を終えたものはその年月も記す。
 核融合懇談会(昭和32年2月)
 原子力委員会核融合専門部会(昭和33年4月〜35年10月)
 日本学術会議核融合特別委員会(昭和34年4月)
 原子力研究所核融合研究委員会(B計画)(昭和34年4月〜33年3月)
 電気学会核敷合専門委員会(昭和34年4月)
 プラズマ研究所設立準備小委会(旧34年9月,改35年2月〜4月)
 プラズマ研究所 スタデイグループ(昭和35年5月)
 なお現在わが国の高温プラズマ発生装置の現況を総括してみると,「わが国の高温発生装置の現況」(附録6-2)のごとく12研究グループが16台の装置を建設また婆計画中である。


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