第12章 放射能調査
§3 調査の結果

3−1 大気および環境の放射能

 大気中の放射能は,上空ほど濃度の増加がみられるが,核実験停止以来大気中の全放射能は(第12-1図)のように春季に極大値を示しながら次第に減少をつづけている。

 春先における放射性降下物の増加の現象は,冬期に冷却された極地方の成層圏内の空気が春先に太陽輻射によって急激に暖められ,垂直混合が盛んになり,主として中緯度上空にある圏界面のくいちがった部分から対流圏内にひろがるためであると推定されている。
 雨水中の放射能は(第12-2図)のように34年7月頃から急速に減少している,また,35年2月にフランスがサハラ砂漠で行なった実験の影響が数日後にあらわれている。すなわち,東京で毎分3,000カウントを記録し,米子などでも,雨水のなかにその影響がみとめられた。同国はその後35年4月,12月,および36年4月の3回実験を行なったが,その影響は認められてない。これは,核実験の規模が比較的小さいこと,実験の方法,気象条件などによるものと思われる。
 90Srや137Csなどの地表降下量は,(第12-3図)のように34年後半から減少を続けている。しかし,これらの半減期は長いので地表で蓄積され現在もなお増加をつづけている。

 土壤中の放射能は,地域的にみれば,裏日本が高い。また,海洋の放射能は漸次減少しつづけている。


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