第12章 放射能調査
§3 調査の結果

3−2 農作物,家畜および食品の放射能

 農作物の汚染は,一般に外部からの附着と土壤からの吸収によるものとがあるが,前者の影響が大きいものと推定されている。玄米,小麦などに含まれる90Srの量は次第に増加を示している。地域的には,裏日本が高い値を示している。また水稲は陸稲より高い値を示した。
 家畜については,(第12-4図)のように汚染増加の傾向がみられる。

 海洋生物中の90Sr含量は,陸上生物に比較してきわめて低く,1gの灰分について,0.009〜0.11μμCの範囲にあり,深さに対する90Srの含量の差はみとめられない。含量の絶対量として,比較的大きなものはサクラエビ(駿河湾),アサリ殼(東京湾),メバチ骨(ビキニ近海),カラフトマス肉(日本海)であり,それぞれ灰分1gにつき0.079,0.108,0.097,0.097μμCの90Sr含量を示している。137CSについてはいまだ分析値が少なく,90Srと同程度もしくは以下と推定されている。


* IS.U.(ストロンチユウムユニツト)はある物質中のカルシウム1gに対して90Srが1μμC含まれる場合の濃度をいう。

 食品の汚染については,35年9月の第8回国連科学委員会に日本から報告したように,食物200種について,90Srの含量の調査を行なった結果によると,32年5月,東京における1日の食物中に2.03uμCであったものが,35年5月には,8.5μucと約4倍になっていること,裏日本の食物の汚染が大きいことなどが認められた。


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