第11章 原子力関連機器および材料
§2 原子力関連機器

2−2放射線測定機器

 放射線測定機器については,これまでに,中性子測定器,シンチレーションカウンタ,電離槽式放射線測定器,フイルムバッジ等の試作研究が行なわれた。
 35年度は,民間企業で34年度に引き続き微弱放射線量測定器の試作研究が行なわれた。これは電離箱と振動容量電位計を組み合わせ,チャージング・メソッドにより極微弱線量率(0.6μr/hr〜6mr/hr)から強線量率(0.6mr/hr〜600r/hr)まで変化する場合無調整で積算値を測定し,自動記録が可能なことを目的としている。チャージング・メソッドを採用した結果,振動容量電位計は従来熱雑音等に災わいされて,10-16アンペア以下の微少電流の測定は困難であったが,10-18程度まで測定が可能になった。また,2個の電離箱を用いて,これを差動接続することによってバックグランド放射線の影響を除き微弱放射線を測定するための電離箱の試作にも成功した。
 また,生物学,化学,物理学等で測定分析が必要となる3H,14C等の軟β線ならびに軟X線および低エネルギーγ線等を効率よく測定分析できる液体螢光体ならびにNaI螢光体を用いる低エネルギー放射線測定器の試作研究が民間企業で行なわれている。
 この他,民間企業では従来のフイルムバッジに比して退色の小さいγ線および中性子線線量計ガラスの研究が行なわれた。このガラスはメタリン酸アルミ,メタリン酸リチウム,メタリン酸銀等を含むもので,その試作に際しては放射線に対する感度の上昇,均一性および再現性に注意が払われた。このガラスバッジは13週間の積算線量を測定できうるうえに,指につけたり,腕につけたり,眼鏡につけたりすることができる。
 また,亜酸化窒素の分解による大線量のγ線の測定法の研究が民間企業で行なわれている。これは精製した亜酸化窒素の放射線分解による圧力変化を測定することによって大線量のγ線を測定しようとするものである。
 モニタ関係では,放射性廃液申のα線濃度を連続的にしかも高速度で検出および記録し,その濃度が10-7μc/ccを超た場合は,警報を発するモニタを製作するための基礎的な資料を得るための研究が民間企業で行なわれている。
 一方,原子力研究所でも,半導体放射線検出器について基礎的な研究が進められている。また,α線サーベメータ,直線増幅器およびログコンバータのトランジスタ化についての研究が進められているが,トランジスタの特性のばらつきが大きいため,個々のトランジスタの特性を調べねばならない状況にある。


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