第11章 原子力関連機器および材料

§1 概 況

 わが国における原子力関連機器および材料の研究開発は,まず,JRR-3(国産1号炉)をめざして原子力研究所と民間企業の協力のもとに進められ,その大部分が国産化されている.また,民間企業,原子力研究所,国立試験研究機関等で,圧力容器,熱交換器,ポンプ,送風機,原子炉制御装置等の主として軽水冷却炉およびガス冷却炉を目標とする原子炉関連機器:黒鉛,重水,ステンレス鋼,アルミニウム,ベリリウム,ジルコニウム,ボラル等の原子炉材料:中性子測定器,シンチレーションカウンタ,電離槽式放射線測定器,フイルムバッジ等放射線測定器:コッククロフト型加速器,ベータトロン,バンデグラーフ型加速器,線型電子加速器,共振変圧器型加速器等の粒子加速器等について試作研究等が行なわれた。
 これらの研究開発のうち,生産に直結しない基礎的な研究は主として原子力研究所,国立試験研究機関,大学等で研究が進められており,生産に直結するような研究開発は民間企業で進められている。政府はこれらの民間企業における研究開発を推進するために,原子力平和利用研究費補助金,研究委託費交付状況(付録2-2)にみられるごとく,34年度までに研究費補助金として,約9億5,570万円,研究委託費として,約5億8,360万円を,35年度にはそれぞれ1億9,400万円,1億2,610万円を支出した。
 このように研究開発が進められた結果,原子力関連機器については,建設中の東海発電所用圧力容器,熱交換器が国内で製造される等かなりの成果が得られている。しかし,炉の高出力,高効率化の要求を満たすためにはさらに多くの研究開発が必要である。放射線測定器については,需要の極めて少ないものおよび特に高度の性能を要求されるもの以外は国産化されており,35年度の放射線測定器の国産額は約9億6,000万円,輸入額は1〜6月で約1億3,200万円となっている。今後の大きな課題は半導体の使用による機器の小型化と耐久性の向上である。粒子加速器については粒子加速器設置状況(付録6-1)にみられるごとく,共振変圧器型加速器を除いて殆んど国産品が使用されているがやはり高性能のものは輸入されており,工業利用の面からは国産品ではわずかにベータトロンが実際現場で使用されているほかは,研究用,実験用の域を出ていない。原子炉材料については,十分外国製品に匹敵しうる黒鉛を製造しうるようになったほか,年間数トンの重水製造技術が確立される等かなりの成果を見ている。しかし,炉の高温高圧化の要求を満たすためには,より高温強度の高い材料が必要であり,この点に関して,例えば,燃料被覆材料としての不滲透性黒鉛の研究等が進められている。


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