第7章 原子力関連機器

§5 工業用計測器

 昭和24年わが国にはじめてアイソトープの輸入が許可されこれが医学,農学等に利用されてきたが,最近では工業面に広く応用され相当量のアイソトープが工業用計測器に利用されるようになった。
 次にその主なものについて述べる。

 (1) 厚み計
 厚み計は放射線が物質の中を通過するとき吸収によってその強度が減少する原理を利用したものである。一般に広く用いられているのは,β線またはα線の線源と放射線の強度を測定する機器の間に測定する対象を入れて厚さを測定するものである。したがってこの厚み計は,測定物に接触せずして,厚みを迅速に測定できるから,紙,プラスチック,ゴム,アルミニュウム等の薄板や箔を作る工場でそれら製品の厚みを測定するのに用いられ,さらに最近はシートの厚み測定だけでなく,β線を使用して導火線薬量や巻タバコのつまり具合の検出にも用いられている。
 アメリカではこの種の厚み計が,商品として相当量生産され,すでに多くの工場で実用に供せられているが,わが国でも最近かなり手広く利用されるようになってきた。

 (2) 液面計
 これは厚み計と同じ原理を利用したもので一般には容器の外側の相対する箇所にγ線源とガイガー計数管を置き,双方とも同時に並行して上下させ,液面を測定するのである。したがってこの液面計は,化学工場等で困難な仕事の一つとされている高圧タンク中の液面測定や,肥料工場,レーヨン工場,製鉄工場等において液体が非常にねばりこいもの,ならびに化学的に腐蝕をおこし易いものに対して用いられている。

 (3) その他工業計測器
 造船台にのった船体。橋桁の上にのった鉄橋,山奥に設けられた水力発電所の鉄管等熔接後に動かすことのできないものの熔接箇所の検査に用いられる熔接検査器がある。
 その他γ線による位置標示の原理を利用した列車信号機並びにウラン鉱の自動車探査またはヘリコプター探査に利用される自動探査器としてのUスコープ等がある。
 このようにアイソトープ利用の工業用計測器は最近応用面が拡大されて工業界において益々開発されてきている。


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