第6章 放射線の利用
§2 アイソトープの利用

2−3 使用状況

 わが国におけるアイソトープ使用事業所数は,33年4月の障害防止法の施行以来,その正確な実体の把握が可能となった。それによると第6-6表に示すごとく使用事業所数の総計は885,うち医療機関が31.8%ともつとも多く,次いで民間企業が30.7%,大学27.0%,研究機関10.5%の順になっている。ただここで注目すべきことは(第6-4図)にも明らかなごとく,障害防止法の施行になった33年4月末においては,医療関係33.9%,ついで大学が30.1%で民間企業は大学より少なく26.6%を占めていたにすぎなかたが,35年7月末には30%と漸次伸びていることで,これは民間企業でのアイソトープ利用が近年次第にひろがっていることを示すものである。

 33年の4月から34年12月までの1年8ヶ月間に106件の新規利用が申請され,同じく35年に入って7ヶ月間ですでに80件の増加がみられた,次に,日本放射性同位元素協会からのアイソトープ出荷件数をみると(第6-7表)のように,34年度の総数は8932件で,33年の8419件に比して約6%の増加を示している。この出荷件数を専門分野別にみると,医学関係が73.8%,理工学関係15.5%,農学関係8.0%となっている。

 またこのうち主要な核種の使用機関別の使用量は(第6-8表)のごとくで,各使用機関が使用している核種,量にそれぞれ特徴があり,いかなる分野ではどのような方法あるいは目的にアイソトープを使っているかが推定できよう。 32P, 131I,198Auについては大学医学部での利用がもっとも多く,これらの利用がまたかなり研究的性格をもっていることが推察される。一方,60Co大線源の利用が大学,病院,研究機関,それに民間においても活発に行なわれていることは注目してよい。また民間においての利用が多種にわたりかなりの量に達していることも民間会社の強い関心を示すものといえよう。


*日本放射性同位元素協会から使用者に対して34年度中に配布されたアイソトープの量を示し,前出の輸入量とは当然等しくない。


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