第13章 科学者技術者の養成

§2 専門部会の答申

 本専門部会は,34年1月原子力関係科学者技術者の養成訓練に関する当面の対策を検討するために設置された。設置以来,養成訓練計画,大学における原子力利用に関する教授研究に対する要望事項,アンケートによる調査結果等の検討および審議をすすめ,35年4月13日に原子力委員長に答申を行なった。
 この答申においては,33年夏,原子力委員会が実施した「原子力関係科学者技術者に関するアンケート」の分析がすすめられ,急増が予想される原子力関係科学者技術者を確保するためには,今後計画的な養成訓練を行なうべきであるとして,そのために科学者技術者の範囲,需要数,当面の対策等が述べられている。その中には注目すべき特色が二つある。その一つは,養成訓練の対象とする原子力関係科学者技術者の範囲を規定したことであり,他のーつは,原子力関係科学者技術者の需要数を推定するに当り,できうる限り業務規模等と関連せしめつつその数を具体的に推定していることである。
 前者について若干詳しく述べると,原子力の研究開発の現状ならびに将来の発展方向からみて,養成訓練の対象とする原子力関係科学者技術者の範囲は次の四範ちゆうとすることが適当であるとして,それぞれ次のごとく規定している。
〔範ちゆう-A〕原子力物理,原子力工学等,原子力関係専門分野について高度の知識,技術を有する科学者技術者。
〔範ちゆう-B〕機械,電気,物理,化学冶金等の専門分野についてそれぞれの知識技術を有し,あわせて原子力関係専門の知識,技術を要する科学者技術者。
〔範ちゆう-C〕放射線利用関係科学者技術者。
〔範ちゆう-D]放射線安全管理者(helth-physicist)
 以上のごとく,原子力関係科学者技術者の範ちゆうを規定したのは,その各々のバランスを考えることにより,一部門でも片手落にならぬよう将来の原子力開発体制を総食的に推進することを意図したものである。
 需要者数の推定については,放射線利用を除くあらゆる分野の原子力研究開発の業務に従事する科学者技術者をとりあげ,原子力関係研究部門,原子力発電部門,原子力関係機器製造部門,核燃料関係部門の四部門に分けて推定している。これらの部門についての推定に際しては,例えば,150MW級の原子力発電設備の製作,建設運転を行なう場合において必要な科学者技術,者数を推定し,これに32年末策定の「発電用原子炉開発のための長期計画」等による昭和45年度の建設中発電所基数を掛けて全体の需要数を導き出すという作業が行なわれた。これらの推定値には,きわめて多くの不確定な仮定が含まれているとはいえ,各部門別に,メガワット当りの需要数を推定し,これに出力数を乗じて算定するという方法は,この答申の大きな特色である。需要数推定表を(第13-1表)に掲げておくが,45年度需要数を推定する際に用いられたものが,31年度に策定された長期基本計画,32年度に発表された発電用原子炉開発のための長期計画であるから,これらの推定値は,当然今年末までに改訂され発表されることになっている新長期計画に準拠して改められなければならない。


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