第1章 原子力のあゆみ
§2 34年度におけるおもな発展

2−2 熱中性子増殖炉の開発

 日本原子力研究所においては,将来の動力炉開発をめざし,かねて熱中性子増殖炉の研究開発すすめてきていたが,これに属する水性均質炉(AHR)と半均質炉(SHR)とについて,いずれも年度内に臨界実験装置を完成し,米国からこれらに必要な燃料である濃縮ウラン17kgの供給を受けるため,交渉中であったが,35年4月第3次および第4次細目協定の成立に伴い近く燃料入手の見込みがたち,35年度中には実験を開始しうるところまで進展している,このうち水均質炉は,米国AECがオークリッジ研究所において開発中のものとほぼ同様のものであるが,半均質炉は日本原子力研究所独自の構想に基づいて設計されたもので,酸化ウランおよび酸化トリウムと黒鉛とを均一に混合しペレット状にしたものを燃料としこれを不滲透黒鉛のサヤにおさめ,ガスまたは液体ビスマスをもって冷却する方式である。同様の構想は英国原子力公社ウィンフリス研究所の高温ガス冷却炉(HTGCR)にもあるが,原子力研究所の場合は,冷却材にもガスを利用する方法と並んで液体ビスマスを利用する方法を研究開発しているところに大きな特色がある。この型式にはなお非常に困難な技術的問題をもかかえているが将来効果的に発展すれば,小型にして高性能の動力炉が開発される可能性があるものと期待される。


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