第10章 放射線障害防止および廃棄物処理
§4 研究開発の現状

4−3 その他の機関

(1) 海洋投棄用放射性廃棄物容器に関する研究
 将来の放射性廃棄物の海洋投棄に備えて,その容器について耐圧および腐蝕試験を行なう研究で,円筒モルタル容器を作成し,250kg/cm2の水圧試験を行ない,円筒半径(r),モルタル壁の厚さ(t)と限界破壊圧力との関係を求め,深度2,OOOmの場合にはt/rが0.25となるような壁の厚さが必要なことが分った。また試験片を毎秒数米で流れる人工海水中に浸して耐蝕試験を行ない,人工海水中の鋼板の腐食には溶在酸素,流速が大きな要因となることが分った。なお上記実験室内の結果を確認するため引続き臨海実験を行なっている。

(2) 放射性廃棄物の海洋投棄に関する研究
 これは将来放射性廃棄物を海洋へ投棄する場合に備えて海の性質を測定しておこなうとする研究で,3000米までの深海の流速を測るための4箇の釣合ウキ,水中聴音器および増幅器からなる測定装置が本年度完成し,予備実験を行なった.この方法は釣合ウキを任意の深さに沈め,それからの超音波を受信して流速を測るものである。
 また,深海水の循環の模様とその速度を明らかにするため,深さ2000m,4000m,5000m,6000mから資料を採取しその中の14Cの放射能の測定を行なっている。

(3) 空気中の放射性物質に対する対策の研究
 放射性粉塵の吸入による障害防止のため,通気抵抗が小さく,効率のよいガスマスクの試作を行なっている。

(4) 放射性物質による空気汚染度制定方式の確立に関する研究
 ダストサンプラーの検査,検定方式を確立するため,放射性物質の粒子の大きさとろ紙の通気度による補集効率の測定を行なっている。

(5) 原子力平和利用施設の放射線障害防止のための設計基準に関する研究
 前年度に行なった原子力利用施設の実地調査を参考として,照射室の設計基準の改定のため照射室内の迷路の設計基準,塗床材料基準,汚染処理施設の設計基準等に関する研究を行なっている。


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