第11章 放射能調査

§1 概 況

 わが国における放射能調査が組織的に行なわれるようになったのは,昭和32年度からで,米ソの核実験が頻繁になり,国内および周辺に放射性物質の降下が盛んとなり漁場に対しでも脅威を与えるようになり始めた頃である,放射能調査はわれわれの周囲の放射能レベルを測定することによって国民生活への影響に関する基礎資料を作成しておくためのものであり,またこの基礎資料によって,放射能が高まったか否かを直ちに判定できる効果を持つものである。放射能調査ははじめは放射性降下物によるものを対象にしていたが漸次原子力の平和利用に対するものを行なうようになってきた。最近では核実験の停止によってわれわれの周囲の放射能レベルは減少しつつある。
 放射能調査の面における国際的協力の組織としては国連科学委員会がある。これは核実験による人体,とその環境に対する放射線の影響を調査研究するために30年に設けられたもので33年8月にその調査研究の結果が公表され,次回の報告は37年に行なうこととなり,現在そのための調査研究活動が行なわれている。一方国際地球観測年(32年7月から33年12月)に大気および海水の動きの調査研究のため設けられた放射能データセンターはその後も存続し現在4箇国にセンターがあり各国の報告書の整理および情報の提供を行なっている。わが国には気象庁内にセンターがあって上述の業務を行なっている。


目次へ          第11章 第2節へ