第6章 燃料製造技術の研究開発
§2ウラン燃料の基礎的研究

1.ウラン合金

 日本原子力研究所においてはウラン合金系の冶金学的特性を検討し,この方面の基礎データをとるとともに新しい合金燃料を開発するためU-MO(MO最高20%)系合金の溶解鋳造法および得られた合金の各種性質の検討等について基礎的の研究を進めている。
 A1N-U系合金においてはアルミニウムにウランを2,5,10,20%加えたそれぞれの合金を大気中で溶解,鋳造し,これから溝ロール圧延,冷間引抜等で直径5mmの線材を製成し鋳塊と合わせて常温および高温の引張試験,加工試料の水焼入(550°Cで3時間保持した後水焼入)後の時効硬化(100°Cと300°C)の追及,合金の各製造段階での組織を検討した。ウラン20%のものを除いて加工は容易であるが鋳造時の偏析はいくぶんみとめられこの点の改良が今後問題である。引張り強さおよび伸びはウランの増加とともに大きくなる。時効硬化に関しては時間的にはあまり差がないが,ウラン10%では抗張力が時効の前後で10.5から7.8kg/mm2mmたウラン2.0〜10.0%では伸びが30%から65〜75%に変ることがわかった。
 U-MO系合金については20%までのMOを添加した合金を高周波真空溶解炉でアルミナ・マグネシアのルツボを用いて溶解した。1次溶解では1,450°C,30分保持しても溶解しないが,2次溶解することによって偏析のないウランを鋳塊することに成功した。アルミナルツボを用いるとAlの混入量が多く,今後の検討を要する。加工はいわゆるα相の温度範囲で行なえば比較的容易であることがわかった。おもな試験要目は熱処理による組織変化の検討を行なうことにあるが,特にMO低濃度の合金系における組織変化,変態機構は複雑であり,実用範囲から遠ざかる理由の一つもここにあるのではないかと思われる。
 コールダーホール型原子炉を対象としたU-Cr系合金燃料棒の製造研究が実施された。この研究はアーク溶解炉を使用してU-Cr合金の溶解造塊,熱間鍛造,抽伸仕上げ,熱処理等の各工程および真空焼鈍,最適クロム含有量,分析等について検討し,熱サイクル効果および照射成長の少ない均一健全な燃料棒の製造条件を確立するため進められてきた。このほか高純度ウランおよびその合金を得るために,アーク真空溶解炉の開発研究等が行なわれた。

2.セラミック系燃料

 セラミック系燃料は,・溶解により製造される金属ウラン燃料に比し,その耐熱,耐食性がよく,長時間燃焼にたえうるので,その製造方法もはやくから注目されている。国内においては二酸化ウラン燃料の製造法に関する研究が前年度から行なわれ,二酸化ウラン燃料の製造法の基礎的資料が得られたが,本年度は新たに酸化ウラン系セラミック燃料に関して次のような研究が34年度までの継続研究として始められた。

1)スウェージング等による酸化ウラン燃料体の製造に関する研究。
この研究は酸化ウラン燃料体の製造費を大巾に引き下げることを目標として,高密度酸化ウラン粉末を被覆管に充填し,これを圧縮加工して高密度の酸化ウラン燃料体を製造する方法を確立するため,高密度で強圧縮に適する二酸化ウラン粉体の製造条件,被覆管への充填方法,圧縮方法,仕上方法等について研究する。
2)ウラニヤ・トリヤ系セラミック燃料の製造に関する研究
この研究は真空ホットプレスによるウラニヤ,トリヤ2成分系のセラミック燃料の製造法を通常のセラミック製造法と比較検討する。
3)二酸化ウラン焼結体の製造に関する研究
この研究は抽出法による棒状二酸化ウラン焼結体の製造法の確立に資せんとするものである。
一方,二酸化ウラン系燃料はその耐熱,耐食性等にすぐれた性質を有しているにもかかわらず熱伝導度が小さくかつ機械的強度が小さい等の欠点があるので,これらの欠点を少なくするための一方向としてウランカーバイド系セラミック燃料の製造に関する研究が始められた。この研究も34年度までの継続研究として二炭化ウランの製造工程等について目下研究中である。


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