第6章 燃料製造技術の研究開発
§3ウラン濃縮および再処理の基礎的研究

ウランの濃縮過程に使用される六フッ化ウランはその製造法が困難であるのみならず,非常に腐食性が強いので, これらの問題を解決するため六フッ化ウランの製造に関する基礎的研究ならびに六フッ化ウランの製造工程の移 送に要する耐食性機器類の問題が実施された。この研究によって各種ウラン化合物から六フッ化ウランの製造に 関する基礎的検討がなされるとともに六フッ化ウランの耐食性機器類としてフッ素樹脂を中心として研究が行な われた。
 またウランに関する基礎的研究として,ウラン化合物,特に有機ウラン化合物に関しては今までにその研究も少ないので,種々の新しいウラン化合物を合成し,その諸性質を調べることによって,ウランの濃縮に適するような化合物を発見しようとする研究が新しく始められた。このほか核燃料物質の精製に適した有機溶剤に関する研究として,硝酸トリウムのヘキソン抽出の際の抽出促進剤等について研究が行なわれたが,この研究によって抽出促進剤としては,ヒドラジン誘導体が有効に作用すること等を確認することができた。
 使用済燃料再処理に関しては溶媒抽出法によるものと濃縮ウラン系燃料のフッ化物分留による法とが検討されているが,後者はまだその研究に着手して日が浅く準備の段階にある。溶媒抽出法による研究は従来広く使用されているトリブチルリン酸エステルによる抽出の基礎的資料を求めて,抽出機構の解明を行ない,新溶媒発見への手がかりを得ようとするものである。研究の方法は熱力学的諸量の測定および各種吸収スペクトルの測定の二つの方法によって進められ,現在までのところ1)従来の説と異なり抽出を行なうリン酸エステル中の炭化水素基が長くなるにつれて抽出率は増大する。
2) ン酸エステルウラン系の吸収スペクトル中,可視部吸収によりウランが溶媒中で非イオン型であり,また赤外吸収によりウランがP=0基に結合している。
 等の知見が得られた。そのほか,空気脈動型抽出塔を使用してヘキソン水の2成分系について燃料再処理装置の流動特性を試験し,その結果に基づき,装置の各部の改善を行なった。
 またT.B.P.の精製の研究ではT・B・P・のケロシン溶液-水相系を60Coの7線で照射し,T.B.P.有機相の劣化をポーラログラフ法等で追跡した。


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