第4章 関連機器の開発
§1圧力容器

原子炉の主要部分を入れる炉心部は通常の圧力容器に比べて多くの問題を持っている。すなわち高温高圧である のみならず,不純物あるいは腐食に対する条件がきわめてきびしい。
 これは不純物や腐食した物質が放射化され冷却水系を循環するおそれがあるからである。
 このため原子炉用圧力容器には内面を不銹鋼でおおったクラッド鋼が使用される場合が多い。
 わが国では最も条件のきびしいと考えられる加圧水型原子炉用のクラッド鋼を目標に圧延方法と溶接肉盛方法が研究されていたが約200mmのも゛のが試験的に製作されるようになった。しかし今後はさらにこれを上回るものが必要となるすう勢にあるので引き続いて研究が進められている。またここの加工がきわめてむずかしく,特にその残留応力が問題となるので,エポキシ樹脂を用いる光弾性皮膜法を利用して応力の分布を測定する方法の研究が行なわれ見通しが得られたので,さらにその除去方法について研究が進められている。
 一方ガス冷却黒鉛減速型のような原子炉ではステンレス鋼の内張りは必要ないが非常に大きなものを現場で溶接する必要がある。
 そのうち最も重要なことは現場において溶接体を予熱,焼鈍する技術を開発することと,溶接部を検査する方法を確立することである。前者については,高周波加熱による局部焼鈍法が民間企業により開発され,実験的にはほぼ満足な結果が得られている。後者についても従来のベータートマンをさらに小型軽量化して現場可搬型にする研究が行なわれ,約1m3の容積に圧縮された本体を約100m離れた場所から遠隔操縦し,厚さ100mm前後の溶接部の現場検査ができるようになった。


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