第4章 関連機器の開発
§2冷却回路用機器

冷却回路用機器の他の分野に使用されるものと異なる点は無漏洩であること,きびしい耐食性が要求されることで ある。
 これらは最初から実用規模のものを試作することは不可能であるので研究が段階的に行なわれている。現段階は非常に小型のものの試作を終了し,その経験をもとにより大型のものを試作中であり,これにより実用規模のものの製作をするための経験を得られるものと考えられる。

1.ポンプ・送風機等

 熱伝達回路の研究に関連して,軽水用高圧密閉電動ポンプ,炭酸ガス送風機および液体金属用電磁ポンプが試作研究されている。
 軽水用高圧密閉電動ポンプは最も条件のきびしい加圧水型原子炉の仕様を目標として約20馬力程度のものの試作を行ない,ステンレス肉盛溶接によるケーシングの溶接加工,炭素ベアリングの硬度,摩耗の試験等について多くの経験を得た。この経験をもとにしてさらに350KVA,l800rpm,140kg/cm2,300°C程度の大型を目標として試作研究を開始した。この研究が完成すれば実用規模の高圧密閉電動ポンプの国産化の見通しが得られるものと期待される。
 炭酸ガス送風機はコールダーホール型炉程度の条件を目標として,輻流型および軸流型について研究されていたが,一応試作を終了した。この研究の重点は軸封部にあることはいうまでもないが,オイルシールを使用した結果,炭酸ガス圧力約20気圧,常温,回転数300〜3,000rpm,流量なしにおいて漏洩量約1.4kg/dayであり実用可能の見通しが得られた。
 液体金属NaK用ポンプはきわめて特殊なものであり,この熱伝達回路と同様わが国における経験もきわめて乏しいのでまずきわめて小型のものを試作することに重点がおかれ,一応試作に成功し多くの経験を得たがなお未解決の問題が多く,今後の研究にも多くの困難が伴うものと考えられる。

2.バルブ

 バルブの研究はまず口径50mmのベローシールセーフティバルブの試作から始められた。研究の重点は大型ベローの試作であったが45kg/cm2,常温において長時間繰返し操作に耐えるものが試作されている。しかしベローを使用したバルブは性質上,高温,高圧,大型のものには適さないのでグランドパッキングを使用して,しかも漏洩のないバルブを開発する必要がある。したがって上記ベローバルブに引き続いて口径15mm,3000C,140kg/cm2,流速10m/sec,のウェッジゲートバルブおよびパラレルスライドバルブの試作研究が行なわれている。
 原子炉の圧力計は高い信頼度を要求されるとともに材料,受圧部の構造,遠隔指示法等について従来のものと異なった多くの問題点があるので,この試作研究が行なわれている。この研究の中心は受圧部用として耐熱,耐食,耐放射線損傷の大きな材料を開発し,これに最も適する受注部構造を試作研究することである。その受圧部方式としてベローダイヤフラム,ブルドン管,直線ブルドン方式が考慮されている。


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