第2章 国産炉の開発
§1国産1号炉(JRR-3)

 日本原子力研究所にJRR-3実物大モデルの据付が完了し,冷却系の試験研究が行なわれた。
 まず炉心タンクの耐圧試験,漏洩試験の方法および,その実施に重点をおいて研究が進められた。耐圧試験については,試験圧力による変形などを調べてその後の試験方法に対する資料を得た。また漏洩はヘリウムリークテスターにより試験したが,非常に良好で5ヵ所の小さな洩れを除いて完全であった。次に冷却系の流量配分や系の流動特性に関して研究を行ない十分なデーターを得,また燃料棒の装填の不具合な場合等異常時の検査も行なった。これらの結果によれば現在のJRR-3の設計について特に変更すべき点はないことがわかった。
 一方,模擬燃料要素の流動試験を行ない,振動は問題にならないことがわかった。また流動抵抗の測定を完了して,各部の抵抗値を得たが,この結果,燃料棒個々の流量のばらつきは燃料棒の出口部の加工誤差によることがわかった。また分離機構,チャージングマシンによる装入,取出しの試験等を行ない,燃料棒の最終仕様を決定した。
 アイソトープ取扱装置についてはトレーロッドからカプセルを抜き取るときの製作試験を完了した。
 計測制御機構については,粗調整安全棒および駆動装置の第1次試作品の試験を行なった。この結果は,落下平均加速度(0.74g),オイルダンパーの動作,電磁クラッチの遅れ時間(12m-sec),クラッチの温度.上昇(20°C以下),ワイヤー切断時のショックアブソーバーの動作などはすべて予期したとおりで問題はない。
 また1,130回の繰返し落下試験ではなんらの劣化もみられなかった。この試験結果を参考にして現在第2次試作を行なっている。微調整安全棒駆動装置の第1次試作品についても試験を完了したが,ボールトナットスクリューのピッチが2/1000mm違っていたたや,動作できず,試作をやり直し,また増巾器類,コンパレータ等の製作も終り,シミュレータと組み合わせて特性試験を行ない,良好な結果を得た。
 一方燃料については,製造冶金ならびに物理冶金に関する各種基礎資料を得るため,小型高周波誘導溶解炉,次いで20kgの大型溶解炉を使用して天然ウラン(仏国製)の真空溶解,鋳造を行なうとともに30馬力の2段溝ロールを使って圧延試験を行った。かくしてその溶解加工条件について検討するとともに,得られたウラン棒につきX線等によりその組織の検討を行ない,諸外国で発表された結果とほぼ一致することを確認した。また燃料の被覆については,所定寸法の燃料要素を製造する研究が31年度から引き続き行なわれてきたが,33年度においてはウランの熱処理方法,ウランの切削および研磨法,引抜きによるアルミニウム被覆法等について研究を行ない,一応非結合型国産1号炉実寸法燃料棒を試作することができ,素材ウラン棒から最終製品までの一貫した製造技術の確立につとめている。
 しかしながら,今後はさらに,このような非結合型燃料棒の性能を改善するために,金属結合型にする方法の研究およびこれらの方法で作られた燃料棒を実際に原子炉の中に入れて,その性能を試験するインパイルテスト等を行なうこととなっている。


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