第2章 国産炉の開発
§2臨界実験装置

日本原子力研究所では原子力長期開発計画の主眼である増殖炉開発の一環としてトリウム系の核特性の基礎資料 を得ることを目的として水性均質臨界実験装置および半均質臨界実験装置を設けることとなった。

1.水性均質臨界実験装置

 この実験装置はD20-Th02系の核特性基礎資料を得るためのもので,32年度から予備実験が開始された。
33年度は重水,酸化トリウムの取扱法の検討を行なうとともに酸化トリウムが250g/lまでの重水スラリーについて熱中性子拡散距離のデータを得た。この結果を用いて設計を行ない現在製作中である。これは球形の炉心タンクのまわりに球形のブランケットタンクを同心的に配置した2領域の装置で,炉心部には20%濃縮の硫酸ウラニル(235U分2kg)の重水スラリーが,ブランケット部には,液化トリウム(全量3ton)の重水スラリーが入っている。装置にはこのほかに,炉心液およびブランケット液のための諸タンク,計測および制御安全系統設備が付属しており,防護設備として,鉄製コンテナーとコンクリート製の遮蔽が用意されている。
 この実験装置ではブランケットに重水を入れた場合と酸化トリウム重水スラリーを入れた場合のそれぞれについて,臨界濃度,炉周期,温度係数,中性子スペクトル,転換比等の測定を目的としており,熱出力は10W以下となっている。またコアーおよびブランケットで使用されるスラリーの流動伝熱については流動伝熱ループの設計を行なった。このループには腐食浸食のテストセクションを含み,34年度から本格的な実験が開始された。

2.半均質臨界実験装置

 これは半均質高温ガス冷却増殖炉の研究のために計画されたものである。
 この臨界実験装置は20%濃縮酸化ウラン(235U分15kg),酸化トリウム(全量75kg)および黒鉛からなる大きさの等しい2個の正六角柱状の炉心集合体とこれらを載せる架台,計測および制御安全系統設備等から構成されている。
 この装置では,臨界量,中性子束分布,温度係数,反射体の効果等の実験が計画され,熱出力は10W以下となっている。


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