第6章 核融合
§3答申案の決定

核融合専門部会は33年5月原子力委員会からの諮問に応じ,わが国における核融合研究の方針ならびに研究体制を 審議検討することになった。この間国会においても核融合研究を本格的に取り上げるよう要望されたこともあり, 日本学術会議の総会においても大学におけるこの分野の基礎研究を重視するよう政府に勧告された。専門部会は これらの動きとジュネーブ会議の報告を検討し,今後の核融合研究の進め方について一応の結論を得,34年3月原子 力委員会に答申した。その骨子は次の通りである。
 「当面の方針として,A計画およびB計画の二つの計画を並行的に進める必要をみとめ,A計画は基礎研究に重点を置き,新しい着想の具体化と,新しい研究分野に働く研究者の養成に重点をおく。このため大学にプラズマに関するいくつかの講座の増設,新しい着想の検討,装置の試作を目的とする研究グループの設置が必要である。」「B計画は,諸外国である程度成功の可能性の示された実験装置,またはその改良型を建設し,その建設過程において得られる経験と,作られたプラズマの利用によってわが国の研究水準の向上をはかる。実験装置は摂氏1,000万度程度の温度を得ることを目標とし,その経費は3〜10億円が予想される。B計画に適した実験装置の型式の選定,設計を行なうためのグループを日本原子力研究所に設置し早急に活動を開始する。B計画の実施機関はグループの成果を検討して決定する。」「以上のA.B両計画の実施に際して,国内の諸機関,諸専門分野間の交流を盛んにして,組織化された研究を行なうとともに,諸外国と研究者の交流を盛んにすることを考慮する。」


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