第4章 アイソトープ
§2 需給状況

1.アイソトープの輸入

 アイソトープの輸入は32年度以来,あいかわらず増加の傾向にあり,33年度での輸入外貨割当は約55万8千ドルに達した。その状況の推移は,(第4-1図)に示すとおりである。
 現在わが国に輸入されているアイソトープは,その核種が50あまりであるが,その主要核種別のアイソトープの輸入実績をみると,33年度60COの大線源の増加がきわめて著しく32年度の3倍に達している。
 次に(第4-1表)で,その実績を示すが,32Pの伸びがやや頭打ちとなったが,131の輸入量は約1.4倍になっている。

 なお,アイソトープの輸入先は初めアメリカが主であったが,最近はカナダ,イギリス,フランス,オランダなどからも輸入されるようになった。
 その29年度からの推移を(第4-2表)に示す。

 なおこれら上記の各図表には示されていないが,33年度のアイソトープ輸入実績のうち60Coの大線源の輸入額は約1億余円で,輸入総額の58%を占めている。輸入先別ではアメリカからの輸入額が全体の約63%で,その輸入アイソトープのおもなものはやはり60Coの大線源の約9,000万円であり,イギリスのそれは主として32P,131Iその他標識化合物となっている。
 わが国で使用するアイソトープの大部分は海外からあおいでいる状況にあり,輸入不可能な短半減期の特殊なもののみを国産によっており,その量も後述するとおりごく少量にすぎない。
 したがって,使用者の希望に応じ適宜入手し,供給の円滑化をはかる必要があるのでアイソトープの使用確認申請書を通じて,利用者の意向を反映して供給を確保するとともに,アイソトープの輸入の促進がはかられている。このため32年度から関税定率法の一部改正が行なわれてアイソトープの輸入に関し,免税措置が講ぜられている。

2.アイソトープの国内生産

 わが国におけるアイソトープの生産は,主として輸入不可能な短寿命の核種24Na,42K,などであって,理化学研究所のサイクロトロンならびに東京大学(理工学研究所)および京都大学(化学研究所)のサイクロトロンで生産されているが,後者の2研究所ではほとんど学内研究用のみであり,前者でできるものが,普通国内の使用者に販売されている。しかしその販売量はきわめて少量であり,その推移を示すと第4-3表のとおりである。

 なお国内生産の基礎を固めるため,32年9月から運転を開始した日本原子力研究所のJRR-1(ウォーター・ボイラー型原子炉)でも,アイソトープの試験的な生産を行なっているが,32年度に引き続き,33年度も24Na42Kはいうに及ばず,新たに64CUについても要望に応じて1バッチ(1仕こみ)1mc程度の操業を数回行ない研究目的に利用されている。またこれ以外の他の核種を生産するためJRR-2,JRR-3(国産1号炉)の操業開始を目標として,鋭意その製造研究の歩を進めている段階で,近い将来において,国内アイソトープの需要の一端をになうことが期待されている。
 次に,輸入アイソトープの14C,35S等を使用して国産標識化合物の生産も30年度から小規模に開始され,(第4-4表)のように漸次増加しているが,現在ではその使用する種類6核種,生産される標識化合物は約60種類にまで及んでいるが,まだ需要の大部分を輸入にまっている状況にある。


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