第2章 原子炉
§3臨界実験装置

日本原子力研究所は水性均質増殖炉および半均質増殖炉を開発するために臨界実験装置を建設中である。
 一般に原子炉の設計にあたって用いられる計算理論は,まだ完成されておらず誤差が大きいので,正確な核的定数を得るためには,実験によらざるをえない。このため実際の原子炉と同様の燃料体および減速材を使用し,臨界状態で各種核的定数の測定を行なう装置が使用される。これを臨界実験装置と呼び,原子炉の研究および開発にあたってのきわめて有用な実験用具として,諸外国において早くから利用されていた。
 わが国においても,日本原子力研究所が水性均質増殖炉と半均質増殖炉とを開発するにあたって,各臨界実験装置を設けることとなっており,また,大学,民間企業等でも濃縮ウラン水冷却型の臨界実験を行なうことが計画されている。
 臨界実験装置はその使用目的から燃料,減速材等の構成,材料の量や配置が固定化されておらず,装置自身に実験上の大きな可撓性をもたされている点が一般の原子炉と異なり,このため原子炉等規制法によれば,臨界実験装置は原子炉の場合と異なり,核燃料物質の使用に係る許可事項として規制されている。しかしながら,実験装置内部では原子炉と同じく核分裂の連鎖反応が行なわれ,実験に必要な過剰反応度を内臓している。
 したがって,臨界実験に係る核燃料物質の使用の許可にあたっては,一般の核燃料物質の使用の許可の際に検討されている事項のほかに,実験装置の安全性,操作および管理の方法,使用者の技術的能力について十分検討されなければならない。
 したがって日本原子力研究所の臨界実験装置の設置にあたって政府としては万全を期するために,その安全性について原子力委員会に意見を求めた。
 原子力委員会はこの安全性について,34年4月原子炉安全審査専門部会にはかり,審査を行なった。
 その結果,水性均質臨界実験については,34年6月末に部会の審議を終り,さらに原子力委員会で検討が加えられ,「申請された実験項目のうち,ブランケットにスラリーを入れる実験を除けば安全である。なお,ブランケットにスラリーを入れて行なう実験は十分な資料が得られて後再申請すべきである」旨の答申が行なわれ,9月にはこの線に沿って核燃料物質の使用が許可された。
 半均質臨界実験については,9月に安全である旨答申が行なわれ,10月には核燃料物質の使用が許可された。


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