第3章 日本の立場
§2核原料資源の貧困

核融合の時代となれば別であるが,核分裂の力を利用しようとする現在の原子力開発にあたって,ウラン,トリウム 等核原料が必要であることは言うまでもない。世界的にみてウラン資源の分布状況等については近年大規模な探 鉱が行なわれた結果,推定埋蔵量も年々増加しているが,おもな産地としては米国,カナダ,南ア,ベルギー領コンゴ ,フランス,オーストラリア等があげられる。
 一方わが国においては,原子力の開発に手をつけた当初から,地質学的にみて国内ウラン資源に多くの期待は持てないと考えられていた。全国的規模に及ぶ概査は地質調査所の手で29,30年の準備期間をおいて31年度から3ヵ年間にわたって約3億円の経費を投じて行なわれ,ウラン資源賦存の可能性のある地域約200,000km2のうち80,000km2を重点的に取り上げて調査を行ない,現在なお残余の地域を対象として探鉱が進められている。今日までのところ,有望地としていくつかの地点があげられているが,企業的な見通しを立てうるのはまだ岡山,鳥取県境の人形峠およびその周辺地区のみである。この地区とてもまだ探鉱の途中であって,埋蔵量の推定も今後増加することが期待されているが,現在判明しているところでは0.06%品位のものが約140万tonであって,将来のわが国の需要量の予想からすれば自給ということはきわめて困難なことで結局ウラン資源は大部分を海外に求めざるをえない。せめて精鉱(イエローケーキ)の形で海外から輸入し,精製錬だけでもみずから行ないたいというのが現在のわが国の立場である。


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