第4章 核燃料の開発
§1 概説

 核燃料としてのウラン鉱物にはいろいろあり,世界的にウラン資源としてその対象とたつているものは瀝青ウラン鉱,閃ウラン鉱およびカルノー石であるが,わが国ではウラン鉱物として,いわゆるペグマタイト鉱床に伴うウラン鉱物(ユーゼン石,フエルグソン石,サマルスク石,石川石,苗木石,ゼノタイム,褐簾石および恵那石等)が知られていた。
 従来わが国におけるペグマタイトは古くから窯業原料(長石,珪石)として一部分採掘され昭和17〜18年頃,福島県石川町附近および岐阜県苗木町附近の稀土類,放射性鉱物が一部開発の運びになつたが,いすれも生産をあげるに至らなかつた。戦後においては,これらペグマタイト鉱床は放置されたままになつていたが,原子力の平和利用が強調されるにつれて,核原料資源として注目されるようになつた。(長石,珪石は戦後も続けて採掘されている)
 29年に原子力予算が成立するに及び,国内における核原料資源を早急に開発する必要が認められ,工業技術院地質調査所がこれに当つた。
 しかし地質調査所のエアボーン(飛行機による探査),カーボーン(自動車による探査)等による概査が進むにつれて当時予期されなかつた地域にウラン鉱物が発見され,国内資源にも相当の希望がかけられるに至つた。そのうち,中国地方の倉吉地区,人形峠地区,倉敷地区等におけるウラン鉱物,および31年末に発見された東北地方気仙沼市南部地区のウラン鉱物は代表的なものである。
 31年8月設立された原子燃料公社は地質調査所の概査結果に基き有望地区の企業化調査を実施するととになり,一連の核原料資源の探査開発の体制が確立されることになつた。一方民間企業の探鉱を奨励するため,31年度から通商産業省から探鉱補助金が交附されることとなつた。またウランの製錬については,技術的に未知に属する分野であつたので,早急に開発するため,まずウラン鉱の選鉱,抽出,金属ウランの製造等の試験研究を推進する一方,原子燃料公社においても一貫したウラン製錬の試験操業を実施する計画がたてられた。


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