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6-2 原子力発電所及び研究開発機関や大学における研究開発施設等の廃止措置

 原子力発電所や研究開発機関及び大学等の研究開発施設等において、多くの施設が廃止措置に移行することを決定しており、廃止措置について安全を旨として計画的に進めていく必要があります。また、廃止措置は長期にわたることから、技術及びノウハウの円滑な継承や人材の育成を同時に進めることが重要であるとともに、施設の解体や除染等により大量の放射性廃棄物を発生させることから、廃止措置はこれらの放射性廃棄物の処理・処分と一体的に検討し、取り組むことも必要です。


(1) 廃止措置の概要と安全確保

① 廃止措置の概要
 通常の実用発電用原子炉施設等の原子力施設の廃止措置では、まず、運転を終了した施設に存在する核燃料物質等を搬出し、核燃料物質による汚染の除去を行った後、設備を解体・撤去します。加えて、廃止措置で生じる放射性廃棄物は、放射能のレベルに応じて適切に処理・処分されます。
 IAEAは、各国の廃止措置経験等に基づき、廃止措置方式は次の2つに分類されるとしています [32] [33]

  • 即時解体9
    施設の無制限利用、あるいは規制機関による制限付き利用ができるレベルまで、放射性汚染物を含む施設の機器、構造物、部材を撤去又は除染する方法です。この場合、廃止措置は、施設の操業を完全に停止した直後に始められます。この方法は、廃止措置の迅速な完了を意味します。
  • 遅延解体10
    安全貯蔵や安全格納ともいわれ、施設の無制限利用、あるいは規制機関による制限付き利用ができるレベルまで、放射性汚染物質を含む施設の一部を処理又は保管しておく方法です。それらは、ある期間の後に必要に応じ除染して解体されます。

 以前、IAEAが廃止措置の一つの方法として分類していた密閉管理は、放射性汚染物質を長期間にわたり耐久性のある構造物に封入しておく方法です。現在では、廃止措置の方法の一つというよりも、事故を経験した原子力施設等の過酷な状況にある施設の例外的な措置と捉えられています。なお、米国では、事故炉ではない核開発用原子炉に適用した廃止措置を密閉管理と呼んでいる例があります。
 我が国の原子力発電所の廃止措置に関しては、総合エネルギー調査会原子力部会(現総合資源エネルギー調査会電気・ガス事業分科会原子力小委員会)が廃止措置の作業内容、費用等の検討を行い、その結果が1985年に報告されました。この報告書では、原子力発電所の廃止措置のための標準工程は、5年から10年の密閉管理期間の後、施設を解体撤去(3年から4年)する「安全貯蔵-解体撤去」とされています [34]


② 廃止措置の安全確保
 廃止措置に当たっては、原子力事業者等は原子炉等規制法に基づき、施設の廃止措置に関する計画(廃止措置計画)を定め、原子力規制委員会に提出します。原子力規制委員会は、廃止措置計画が規則で定める基準に適合しているか審査し、認可を行います。廃止措置中の安全確保に関する主な要求事項は、施設内への放射性物質の閉じ込め、放射線の遮へいです。施設の適切な維持管理方法、放射線被ばくの低減策、放射性廃棄物の処理等の方法が、原子力規制委員会により廃止措置計画の審査で確認されます。
 なお、原子力施設の高経年化が進んだ場合において、施設の稼働停止から廃止へのより円滑な移行を図るため、事業等の廃止に伴う措置を実施するための方針(廃止措置実施方針)を事業の許可等を受けた後速やかに作成し公表することが義務付けられています(原子炉等規制法改正法(平成29年法律第15号))。廃止措置実施方針においては、廃棄する核燃料物質によって汚染された物の発生量の見込み、廃止措置に要する費用の見積り及びその資金の調達の方法その他の廃止措置の実施に関し必要な事項を定めることとされています。これを受け各原子力事業者は、2018年12月に廃止措置実施方針を公表しました。廃止措置実施方針は、記載内容に変更があった場合、及び、廃止措置実施方針の公表後5年ごとに全体の見直しを行い、必要な変更を加えるものとされています。


(2) 廃止措置の状況

① 原子力発電所の廃止措置
 我が国では、2020年3月末時点で、実用発電用原子炉施設のうち、日本原子力発電株式会社東海発電所及び敦賀発電所1号機、東北電力株式会社女川原子力発電所1号機、中部電力株式会社浜岡原子力発電所1、2号機、関西電力株式会社美浜発電所1、2号機及び大飯発電所1、2号機、中国電力株式会社島根原子力発電所1号機、九州電力株式会社玄海原子力発電所1、2号機、四国電力株式会社伊方発電所1号機の廃止措置計画が認可されています(表6-1)。また、四国電力株式会社伊方発電所2号機は、2018年3月に廃止が決定され、同年5月に運転を終了しています。その後、2018年10月に廃止措置計画認可申請書が原子力規制委員会に提出されています。
 2018年6月には、東京電力が福島県知事との意見交換の中で、東電福島第二原発の全号機を廃止する方向で検討を進める旨を表明しました。さらに、2019年7月に東京電力の社長は福島県知事との面会において、1~4号機全ての廃止措置の意向を伝えました。その後、東京電力は、2019年7月31日に東電福島第二原発の全4基の廃止を決定し公表しました [35]


② 研究開発施設等の廃止措置
 文部科学省は、原子力機構の保有する原子力施設の廃止措置に関する事業管理の在り方等の検討のために、科学技術・学術審議会原子力科学技術委員会の下に原子力施設廃止措置等作業部会を設置して、2018年4月に中間まとめを取りまとめました。この中間まとめでは、多くの施設を同時に廃止措置等する際には、様々な課題を同時に解決し、またその支出を適切に管理していく必要があるため、「事業管理・マネジメントの観点」及び「財務管理の観点」から、今後原子力機構において試行的に取り組むべき内容について取りまとめています [36]
 本中間まとめ及び改正原子炉等規制法により2018年末までに廃止措置実施方針の作成を求められたことを受け、バックエンド対策(廃止措置、廃棄物処理・処分等)が東海再処理施設(TRP11)の廃止措置に70年間を要するなど長期にわたること等に鑑み、原子力機構は2018年12月に「バックエンドロードマップ」を公表しました。バックエンドロードマップでは、今後約70年間を第1期(2028年度まで)、第2期(2029年度から2049年度)、第3期(2050年度以降)に分けて、現存する原子力施設89施設のうち原子炉等規制法の許可施設79施設を対象に、廃止措置、廃棄物処理・処分、及び核燃料物質の管理の方針が示されています。また、施設解体費用、廃止措置等で発生した廃棄物の処理処分費用で構成されるバックエンド対策に要する費用の合計額は、1兆9,100億円と見積もられています [37]。バックエンドロードマップの内容は、「施設中長期計画」において具体化されています。「施設中長期計画」(2020年4月改定)では、バックエンドロードマップ第1期の2028年度までの計画(施設の集約化・重点化、施設の安全確保、バックエンド対策)が示され、集約化・重点化方針に基づき、89施設のうち、継続利用施設46施設、廃止施設43施設が選別されています。廃止施設43施設のうち、16施設を第3~4期中長期目標期間中に廃止措置を終了する施設として計画し、その他の施設は、第5期中長期目標期間以降も廃止措置を継続するものとしています [38]。なお、バックエンドロードマップ全般の妥当性や、バックエンド対策に要する費用について、試算手法を精査し、今後のバックエンド対策や費用の試算精度の向上に関する助言を受けること等を目的として、文部科学省及び原子力機構は2019年4月にIAEAに対し、ARTEMISレビュー12の実施を要請しました。同年6月にIAEAより、実施受入れの回答が得られています [39]
 原子力機構における廃止措置の中でも規模の大きなものとして、「ふげん」、「もんじゅ」及び東海再処理施設の廃止措置があります。「ふげん」の廃止措置計画は、原子力規制委員会によって2008年2月に認可されました。廃止措置は4段階の期間に区分して実施され、2033年度までに完了する予定です [40]。「もんじゅ」の廃止措置計画は、原子力規制委員会によって2018年3月に認可されており、30年間にわたる廃止措置の全体工程を4段階に区分し、段階的に進められます。第1段階では、燃料体の取り出しを最優先に実施し、2022年度に完了する予定です。第4段階の建物等の解体撤去は2047年に完了する計画です [41]。東海再処理施設の廃止措置には70年を要する見通しです。同施設の廃止措置計画は原子力規制委員会によって2018年6月に認可されており、現在、高放射性廃液のガラス固化処理等が最優先で進められています [42]。これらのほか、共同利用施設として、各種の照射実験、中性子ビーム実験、放射性同位体(RI)製造や医療照射等に利用された研究炉であるJRR13-2、放射化分析、半導体用シリコンの照射、原子力技術者の養成等に利用されたJRR-4、放射性物質の放出挙動を究明するための過渡臨界実験装置TRACY14、重水臨界実験装置DCA15等の様々な種類の施設の廃止措置が進められています(表6-1)。
 このように、原子力機構が保有する原子力施設の廃止措置に向けた検討が進められたことを受けて、2019年1月に原子力委員会は「日本原子力研究開発機構における研究開発施設に係る廃止措置について(見解)」を取りまとめています。その中で、原子力委員会は、「ふげん」や「もんじゅ」、東海再処理施設のように大規模で廃止措置に長期間を要する施設があることや、廃止対象施設の数や種類が多いことを原子力機構の施設の廃止措置における特徴として挙げた上で、以下の点について見解を示しています。

  • 廃止措置予算の確保
  • 廃止措置計画の立案、実施体制の構築と責任を明確にした廃止措置の運営
  • 規制機関との対話
  • 合理的な安全確保と計画遅延の防止
  • 廃止措置に係る知見や情報の共有
  • 人材育成と知識継承
  • 廃棄物処理処分
  • コミュニケーション

 その上で、国による長期にわたる継続的な予算手当をすべきこと、廃止される施設の運転管理等に関わる経験や知識の継承を行うとともに、人材の育成を図るための対策を用意すべきこと、地元や国民等ステークホルダーとの対話・コミュニケーションに努め、廃止措置について信頼を醸成すべきこと等を指摘しています。また原子力委員会は、今後の原子力機構の廃止措置に係る進捗状況や対応状況について、適宜フォローアップしていくこととしています [43]
 以上に加え、東京大学、立教大学、東京都市大学等の大学の研究炉、民間企業の研究炉でも廃止措置が行われています。我が国における原子力施設の廃止措置の状況は表6-1に示すとおりです。

表 6-1 我が国における主な原子力施設の廃止措置の状況
施設等 運転終了時期等 炉型等 備考
原子力機構 JPDR 1976年3月 BWR 1996年3月解体撤去
2002年10月廃止届
JRR-2 1996年12月 重水減速冷却 廃止措置中
DCA 2001年9月 重水臨界実験装置 廃止措置中
ふげん 2003年3月 新型転換炉
原型炉
廃止措置中
(原子炉周辺設備の解体撤去期間中)
JRR-4 2010年12月 濃縮ウラン軽水減速冷却スイミングプール型 廃止措置中
TRACY 2011年3月 過渡臨界実験装置 廃止措置中
もんじゅ 2018年3月
廃止措置計画認可
高速増殖原型炉 廃止措置中
東海再処理施設(TRP) 2018年6月
廃止措置計画認可
再処理施設 廃止措置中
日本原子力発電(株) 東海 1998年3月 黒鉛減速
炭酸ガス冷却炉
廃止措置中(原子炉領域外の解体撤去)
敦賀1 2015年4月 BWR 廃止措置中
東北電力(株) 女川1 2018年12月 BWR 廃止措置中
東京電力ホールディングス(株) 福島第二1 2019年9月 BWR 運転終了
福島第二2 2019年9月 BWR 運転終了
福島第二3 2019年9月 BWR 運転終了
福島第二4 2019年9月 BWR 運転終了
中部電力(株) 浜岡1 2009年1月 BWR 廃止措置中(原子炉領域周辺設備解体撤去期間中)
浜岡2 2009年1月 BWR
関西電力(株) 美浜1 2015年4月 PWR 廃止措置中
美浜2 2015年4月 PWR 廃止措置中
大飯1 2018年3月 PWR 廃止措置中
大飯2 2018年3月 PWR 廃止措置中
中国電力(株) 島根1 2015年4月 BWR 廃止措置中
四国電力(株) 伊方1 2016年5月 PWR 廃止措置中
伊方2 2018年5月 PWR 運転終了
九州電力(株) 玄海1 2015年4月 PWR 廃止措置中
玄海2 2019年4月 PWR 廃止措置中
(株)東芝 TTR-1 2001年3月 教育訓練用原子炉 廃止措置中
日立製作所(株) HTR 1975年 濃縮ウラン軽水減速冷却型 廃止措置中
東京大学 弥生 2011年3月 高速中性子源炉 廃止措置中
立教大学 立教大学炉 2001年 TRIGA-Ⅱ 廃止措置中
東京都市大学原子力研究所 武蔵工大炉 1989年12月 TRIGA-Ⅱ 廃止措置中

(出典)日本原子力産業協会「日本の原子力発電炉(運転中、建設中、建設準備中など)」 [44]、原子力規制委員会HP「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約第6回国別報告」(2017年) [45]等に基づき作成


(3) 廃止措置の費用措置

① 原子力発電所等の廃止措置費用
 通常の実用発電用原子炉施設の廃止措置は、(ⅰ)長期間にわたること、(ⅱ)多額の費用を要すること、(ⅲ)発電と費用発生の時期が異なること等の特徴を有することに加え、合理的に見積もることが可能と考えられます。そのため、解体時点で費用を計上するのではなく、収益・費用対応原則に基づいて発電利用中の費用として計上することが、世代間負担の公平を図る上で適切であるとの考え方に立ち、電気事業者が電気事業法に基づいて廃止措置費用の積立てを行っています。
 なお、再処理施設については、「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」(平成17年法律第48号)の規定に基づき、電気事業者が再処理機構に拠出金を納付しています。

② 研究開発施設等の廃止措置費用 原子力委員会による「日本原子力研究開発機構における研究開発施設に係る廃止措置について(見解)」 [43]でも指摘されているとおり、原子力機構の研究開発施設の廃止措置には、国による長期にわたる継続的な予算手当が求められます。
 廃止措置の実施に当たって原子力機構は、本部組織において廃止措置や廃棄物処分等を担う「バックエンド統括本部」を設置し、同本部のマネジメントの下で、具体的な廃止措置を拠点・施設ごとに実施します。主務大臣から交付される運営費交付金について、理事長裁量により原子力機構内における配分を決定し、廃止措置費用に充てています [46]

コラム  ~諸外国における原子力施設の廃止措置の基本方針~

米国

 原子力施設の許認可取得者(操業者)は、DECON(即時解体)、SAFSTOR(安全貯蔵)、又はENTOMB(密閉管理)の3つの廃止措置戦略のいずれかを選択できます。また、発生する廃棄物の処分場の有無等の要因により、施設の一部を安全貯蔵状態に残したまま施設を解体又は除染するSAFSTORとDECONの組合せを採用することもできます。
 原子力発電所の廃止措置は、規制機関(NRC)が公衆の健康と安全のために必要と認める場合を除き、60年以内に終了することが求められています [47]

ドイツ

 原子力施設の廃止措置戦略として、即時解体と安全貯蔵の2種類のオプションを認めていますが、政府の諮問委員会は即時解体を推奨しています。実際に安全貯蔵方式を選択したのは一部のプロトタイプ炉で、大部分の施設が即時解体方式を採用しています [48]
 ドイツの廃止措置許可には大きく分けて3つの方法があります。最も採用されているのは、いくつかの部分許可に分ける方法です。例えば、第一次ではタービン建屋等、第二次では原子炉建屋内設備、第三次では格納容器の解体撤去等のように分けられます。ヴュルガッセン原子力発電所では、最終状態の更地回復まで6段階に分けて許可申請しています [49]

フランス

 規制機関である原子力安全機関(ASN)が、原子力施設の廃止措置方法として、安全貯蔵方式や密閉管理方式ではなく即時解体方式を採用するよう事業者に勧告しています。その理由としてASNは、以下のような点を挙げています。

  • 技術的、財政的に将来の世代に対する負担を先送りするべきではない
  • 廃止措置作業は長期にわたり、多額の資金が必要となる
  • 現時点で、一部の放射性廃棄物を除き、廃棄物の処分方法が確立されている

英国

 廃止措置方法の基本は、人や環境へのライフサイクルリスクやその他の関連する要素を考慮した上で、合理的に実行可能な限り早く進めることとされています。しかし、施設再利用の実現性、放射能の減衰効果の利点、人と環境へのリスクの低減等を考慮して、遅延解体方法を選択することもできるとしています [50] [51]
 現在、廃止措置対象の原子炉はマグノックス炉(ガス冷却炉)ですが、(ⅰ)放射能の減衰により作業員のアクセス性の向上ができる、(ⅱ)放射性廃棄物のカテゴリ変更が期待できる、(ⅲ)地層処分対象の放射性廃棄物の暫定保管を回避する等の理由から、その廃止措置の基本方針は、閉鎖後約85年間をかけた遅延解体としています [52]

コラム  ~諸外国における原子力施設の廃止措置事例~

米国

 バーモント州のバーモントヤンキー発電所(BWR、出力65万kW)は、1972年に運転を開始し、2014年12月に運転が恒久停止されました。事業者は当初、安全貯蔵により2075年を目途に廃止措置を完了させる意向でしたが、プラントが廃止措置の専門事業者に売却され、その事業者が2026年までに廃止措置を完了させる計画を策定しています [53]

ドイツ

 シュターデ原子力発電所は、1972年に運転を開始し、ドイツの脱原子力政策に伴い2003年に閉鎖されました。原子力部分の解体では、原子炉容器を一体撤去するのではなく、建屋内で水中切断・解体する工法が用いられました。この工法は、既に廃止措置が進んでいた同国ヴュルガッセン原子力発電所で初めて原子力発電所に適用されたものです。ドイツでは、先行事例も活用することで効率的に廃止措置を進めています [54]

フランス

 フランスでは発電炉のほか、再処理施設、高速炉、ガス拡散法ウラン濃縮プラント等の廃止措置を行っています。軽水炉の使用済燃料を再処理したフランス初の再処理工場UP2-400は、1966年の運転開始から1995年までに黒鉛減速ガス冷却発電炉の燃料約5,000tと軽水炉使用済燃料を約4,500t処理しました。現在は、操業を終了し廃止措置が進められており、2019年11月時点で20~30%まで進捗しています。廃止措置費用は約40億ユーロで、廃止措置期間は30年以上が予定されています。我が国の東海再処理工場の廃止措置に参考になる事例といえます。
 発電炉の例としては、1972年に運転を開始した黒鉛ガス炉(GCR16)であるビュジェイ1号機があります。1994年に閉鎖されて以降、非原子力部分の解体、燃料の搬出等が実施されています [55]。ただし、事業者であるEDFは、解体によって発生する黒鉛廃棄物の処分場が決定していないこと等のため、長期的かつ段階的に廃止措置を進める戦略の採用を規制当局に提案しています。廃止措置の進め方の決定に当たっては、廃棄物処分が可能な状態か否かも考慮されることになります [56]

英国

 英国では、ガス冷却炉(マグノックス炉)は全て操業を終了し閉鎖され、基本方針に従い遅延解体のため維持管理(C&M17)の状態に入る又は準備の段階にあります [52]。原子力開発の中心地の一つであったセラフィールドサイトでは、軍事用プルトニウム製造用の原子炉、商用炉、使用済燃料の再処理施設等、多種類の原子力施設が建設、操業されてきました。現在、これら多くの施設は、リスクレベルによる優先度に従い廃止措置が進められています。


  1. Immediate dismantling
  2. Deferred dismantling
  3. Tokai Reprocessing Plant
  4. ARTEMISはIntegrated Review Service for Radioactive Waste and Spent Nuclear Management, Decommissioning and Remediation Programmesの略。ARTEMISレビューは、原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物等に関するIAEAの安全基準や他国の実経験を基にしたピアレビューミッションサービス。
  5. Japan Research Reactor
  6. Transient Experiment Critical Facility
  7. Deuterium Critical Assembly
  8. Gas Cooled Reactor
  9. Care and Maintenance



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