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総合エネルギー調査会原子力部会報告書について


(商業用原子力発電施設の廃止措置のあり方について)
昭和60年7月
通商産業省資源エネルギー庁

Ⅰ 検討の経緯

 我が国の原子力発電は、30基、2,253.1万kWeの規模に達している。このような我が国の原子力発電の着実な進展に伴い、最終的に運転を終了した後の商業用原子力発電施設(以下「原子力発電施設」という。)の取扱い、いわゆる廃止措置について、その具体的な方法(工程)を明らかにし、廃止措置に係る諸対策の確立を図っていくことが重要な課題となっている。

 かかる認識の下に、昨年3月以降、総合エネルギー調査会原子力部会に設けられた原子炉廃止措置対策小委員会において、原子力発電施設の廃止措置に関し、我が国の実情に合った合理的な工程(標準工程)、費用対策、廃棄物の処分、技術開発等について審議が行われてきたが、このたび7月2日の同小委員会において検討が終了し、7月15日に開催予定の原子力部会において報告がとりまとめられることとなった。

Ⅱ 報告書の概要

1 廃止措置の基本的な考え方

 運転を終了した原子力発電施設は、最終的には解体撤去することを基本的な方針とする。

2 標準工程
(1) ケーススタディ

 作業者の受ける線量、廃止措置費用、廃棄物量等を算出するため、標準的な原子力発電施設についてケーススタディを実施し、その結果に基づいて我が国の実情に合った合理的な廃止措置方式及び安全貯蔵期間を選定し、これを標準工程とする。

(2) 標準工程

① 廃止措置方式は、作業者の受ける線量、廃止措置費用等から原子力発電施設の規模、炉型等に関係なく密閉管理-解体撤去方式(注1)とするのが適当である。

② 密閉管理による安全貯蔵期間は、解体撤去作業期間(3~4年)に作業者の受ける年間線量が運転中と同程度となる5~10年程度とするのが適当である。

(注1) 原子力発電施設全体を閉鎖して一定期間管理した後、解体撤去する方式
3 費用対策
(1) 必要性

 今回、標準工程が明確になったことを踏まえ、廃止措置費用についての電気料金、企業会計及び税制面での具体的な対策の検討が望まれる。

(2) 廃止措置費用算定と算定方法
① 廃止措置費用は、標準工程に基づき、一般的に適用されている工事費積算法によって、合理的に見積もることが可能である。(個別積算法)

② この個別積算法はケーススタディで用いた方法であり、これによれば、例えば110万kWe級の原子力発電施設で安全貯蔵期間が5年の場合、廃止措置費用は約300億円(注2)(1984年度価格)となる。

(注2) 放射性廃棄物の処分費用は含めていない。

4 廃棄物の処分
(1) 廃棄物の種類及び量

① 廃止措置に伴って発生する廃棄物量は、例えば110万kWe級の原子力発電施設で約50~55万トンである。

② この廃棄物は、低レベル及び極低レベル放射性廃棄物並びに放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物から成り、その大部分は放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物である。例えば、安全貯蔵期間が5年の場合で、その約98%は放射能レベルが10-4キュリー/トン未満の廃棄物である。

(2) 廃棄物処分の基本的な考え方

① 低レベル放射性廃棄物及び極低レベル放射性廃棄物の処分は、所要の管理の段階を経て管理不要の状態に至るものとする。

② 放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物は通常の産業廃棄物と同様の扱いをすることができ、スクラップ、骨材等として再利用に努めるものとする。

(3) 合理的な一般区分値(注3)等の設定

 廃棄物の合理的な処分を可能にするためには、一般区分値等を定めることが必要である。

(注3) 放射性廃棄物と放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物とを区分する放射能レベル(現在、原子力安全委員会で検討中)
5 技術開発
(1) 基本的な考え方

 原子力発電施設の廃止措置については、既存技術又はその改良により十分対応可能だが、作業者の受ける線量の低減、作業の効率化等のため、今後、計画的かつ効率良く技術開発を推進することが必要である。

(2) 技術開発課題

 作業者の受ける線量の低減、作業の効率化及び放射性廃棄物発生量の低減を図るため、その開発効果が大きく、今後長期的視点に立って積極的に推進する必要がある技術開発課題は以下のとおりである。

①解体前除染技術 ②放射性機器・設備の解体技術 ③堅牢な構造物・建屋解体技術 ④放射性金属廃棄物の再利用のための除染技術 ⑤廃止措置を考慮した設計
6 安全確保とパブリックアクセプタンス(P.A.)

① 原子力発電施設の廃止措置については、原子炉等規制法に基づき、原子炉廃止届が提出され、主務大臣は必要があると認めるときは原子炉設置者に対し災害防止上必要な措置を命ずることができることとなっており、これにより安全は確保される。

② 廃止措置について地域住民等の理解を得ることに努め、今後の原子力発電の円滑な推進を図るため、地域住民を始めとする一般国民に対し積極的に広報活動を推進することが必要である。


原子力発電所の運転・建設状況(昭和60年7月1日現在)

標準工程検討の流れ図

廃止措置方式の概要

最終的に運転を終了した原子力発電施設一覧(1万KWe以上)

総合エネルギー調査会原子力部会名簿
(昭和60年7月15日現在)

 (氏名) (役職名)
部会長 松根 宗一 (社)経済団体連合会常任理事

 青井 舒一 (株)東芝代表取締役副社長

 有澤 廣巳 (社)日本原子力産業会議会長

 飯田 孝三 関西電力(株)取締役副社長

 飯田 庸太郎 (株)日本電機工業会原子力政策委員会委員長

 生田 豊朗 (社)日本エネルギー経済研究所理事長

 伊藤 俊夫 日本原子力発電(株)取締役会長

 井上 力 (財)発電設備技術検査協会理事長

 圓城寺 次郎 日本経済新聞社顧問

 大垣 忠雄 日本原燃産業(株)代表取締役社長

 大島 恵一 東京大学名誉教授

 神谷 和男 日本開発銀行理事

 小林 健三郎 日本原燃サービス(株)代表取締役社長

 白澤 富一郎 (社)海外電力調査会会長

 鈴木 善照 海外ウラン/資源開発(株)取締役相談役

 瀬川 正男 (社)日本原子力産業会議副会長

 高島 洋一 埼玉大学教授

 田宮 茂文 (財)工業開発研究所参与

 中川 潤一 日本輸出入銀行理事

 西 政隆 (株)日立製作所取締役副社長

 西家 正起 金属鉱業事業団理事長

 野澤 清志 電気事業連合会副会長

 林 政義 中部電力(株)取締役副社長

 藤井 孝 (財)原子力工学試験センター理事長

 藤波 恒雄 日本原子力研究所理事長

 藤原 一郎 電源開発(株)副総裁

 別府 正夫 新エネルギー総合開発機構顧問

 牧浦 隆太郎 日本ニュクリア・フュエル(株)代表取締役会長

 三島 良績 東京大学名誉教授

 水野 渡 東京電力(株)取締役副社長

 村田 浩 (財)原子力安全研究協会理事長

 村松 敦 (株)日本興業銀行常務取締役

 山下 勇 三井造船(株)相談役

 吉田 登 動力炉・核燃料開発事業団理事長
(五十音順 敬称略)
原子炉廃止措置対策小委員会名簿
(昭和60年7月2日現在)

 (氏名) (役職名)
委員長  都甲 泰正 東京大学教授

 青井 舒一 (株)東芝代表取締役副社長

 秋山 守 東京大学教授

 飯出 庸太郎 (社)日本電機工業会原子力政策委員会委員長

 石川 寛 日本原子力研究所副理事長

 石原 健彦 (財)原子力環境整備センター理事

 伊藤 好弘 中部電力(株)取締役副社長

 浦田 星 (株)日立製作所専務取締役

(昭和59年7月26日第4回委員会まで)

 今西 淳郎 富士電機(株)顧問

 梶山 泰男 (財)原子力工学試験センター理事

 鎌田 勲 日本経済新聞社論説委員

 神谷 和男 日本開発銀行理事

 近藤 俊幸 東京電力(株)常務取締役

 向坂 正男 国際エネルギー政策フォーラム議長

(昭和60年2月1日第8回委員会まで)

 鈴木 範雄 日本原子力発電(株)常務取締役

 武田 康 (財)エネルギー総合工学研究所研究顧問

 豊田 正敏 東京電力(株)取締役副社長

 長岡 昌 日本放送協会解説委員

 楢崎 正博 電気事業連合会理事事務局長

(昭和60年2月1日第8回委員会から)

 西 政隆 (株)日立製作所取締役副社長

(昭和59年9月7日第5回委員会から)

 濱口 俊一 関西電力(株)専務取締役

 原 豊明 電気事業連合会理事事務局長

(昭和59年12月4日第7回委員会まで)

 福地 稔 (社)日本電力建設業協会専務理事

 森 一久 (社)日本原子力産業会議専務理事

(五十音順 敬称略)

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