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5-2 科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系の整備と国民への提供


 原子力委員会は2016年12月、理解の深化に向けた根拠に基づく情報体系の構築についての見解を取りまとめ [2]、国民が関心や疑問を持ったときに、自ら調べ、疑問を解決し、理解を深められるような情報体系の整備の必要性を指摘しました。そのためには、根拠を分かりやすく解説した情報を提供するとともに、自らの関心に応じて調べ、必要に応じて専門的な情報までたどれるようにすることが重要である旨を述べています。また、同見解では、このような情報体系の整備にまず着手する分野として、国民の関心が高く、原子力政策の観点でも重要な「地球環境・経済性・エネルギーセキュリティ(3E)」、「安全・防災(S)」、「放射性廃棄物」、「放射線被ばくリスク」の4点を挙げています。
 この指摘を踏まえ、原子力関係機関では、分野別に委員会や連携プラットフォームを立ち上げ、情報体系の整備に向けた検討を進めています。特に、「3E」と「S」に関する情報体系整備については、情報体系の具体化を検討しています。
 例えば量研は、原子力規制庁からの委託により、「放射線影響・放射線防護ナレッジベースSirabe1」を構築し、2019年3月に公開しました。Sirabeは、放射線防護の基準の作成等の規制活動に資するだけでなく、放射線規制の根拠となる放射線影響や放射線防護に係る最新かつ国際的な知見を、規制当局を含む関係者及び国民に広く共有することを目的として構築されています。Sirabeの掲載内容は体系的に整理されており、説明には出典が記載されているため、自らの関心に応じて調べ、より専門的な内容にアクセスすることが可能となっています。例えば、我が国の放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一を図ることを目的として設置されている放射線審議会に関しては、設置経緯や、東電福島第一原発事故後の機能・役割の強化等についての説明に加えて、1999年に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」等の同審議会の機能・役割の変化の経緯が確認できる資料にもアクセスすることができ、同審議会をめぐる政策の変遷とその根拠が分かりやすく示されています。(図5-1) [3]


図5-1 ナレッジベース「Sirabe」における体系的な情報整理の例

図5-1 ナレッジベース「Sirabe」における体系的な情報整理の例

(出典)「放射線影響・放射線防護ナレッジベースSirabe」等に基づき作成


 原子力機構は、インターネットを通じて原子力に関連した科学的かつ客観的な情報提供を行う「原子力百科事典ATOMICA2」の再構築を検討しています [4]
 さらに、一般財団法人日本原子力文化財団は、「国民各層との対話を通して、原子力やエネルギー、放射線について的確な知識と理解を普及する」ことを目指し、エネルギーや原子力に関する網羅的な情報を提供するウェブサイト「エネ百科3」を運営しています。エネ百科では、原子力やエネルギーに関する説明資料の作成等に利用可能な図面集、原子力や放射線等に関する電子パンフレット、原子力に関する専門用語や時事ネタに関する解説記事、子ども向けも含めたコラム等、多数のコンテンツが提供されています。また、同財団の主催するセミナーの報告レポートや、高校生が作成したエネルギー・放射線に関する教材等も掲載されています [5]

コラム ~英国政府による政策情報の提供~

 英国政府は様々な政策に関して、その政策自体を説明するだけでなく、政策の根拠となる情報や関連する報告書等の文書をまとめてウェブサイト上で公表しています。
 例えば、英国政府は原子力発電利用を推進していますが、2025年から2035年にかけて運転開始する100万kW以上の原子炉新設に関する国家政策声明書(NPS4)の改定に向けて、パブリックコンサルテーションを行った上で、新設サイトの選定基準と評価プロセスを2018年7月に決定しました。政府は、パブリックコンサルテーションで寄せられた公衆からの疑問に答える形でまとめた決定文書だけでなく、NPS改定に際して考慮すべき気候変動対策や環境保護等に関する目標や要件を示した複数の報告書も公開しており、関心を持った国民は政策に関する詳細な情報を参照することが可能です。

NPS改定に向けた新設サイト選定基準と評価プロセスに関するサイト

NPS改定に向けた新設サイト選定基準と評価プロセスに関するサイト

(出典)英国政府ウェブサイト [6]に基づき作成


  1. http://sirabe.nirs.qst.go.jp/sirabe/
  2. 原子力関係機関の専門家、実務家、学識経験者の協力を得て作成されたインターネット上の百科事典。2009年より一般財団法人高度情報科学技術研究機構が運営してきましたが、2019年3月から原子力機構が業務を引き継ぎ、運営しています。
  3. https://www.ene100.jp/
  4. National Policy Statements


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