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第5章 原子力利用の前提となる国民からの信頼回復

 東電福島第一原発事故の政府事故調報告書では、事故の状況や放射線の人体への影響等についての政府や東京電力から国民に対する情報提供の仕方や内容に、多くの課題があったことが指摘されました。また、事故が発生した際の緊急時だけでなく、平時の情報提供の在り方についても課題が指摘されています [1]。これらの課題は、国民の原子力に対する不信・不安を招く主原因の一つとなったと考えられます。この指摘も踏まえ、原子力に携わる関係者は、国民の声に謙虚に耳を傾け、必要なあらゆる取組を一層充実し、信頼を回復させていくことが不可欠です。
 原子力委員会は2016年12月、理解の深化に向けた根拠に基づく情報体系の構築についての見解を取りまとめ [2]、国民が関心や疑問を持ったときに自ら調べ、疑問を解決し、理解を深められるような情報体系の整備の必要性を指摘しました。2018年3月には、原子力分野におけるステークホルダーとのコミュニケーション活動の事例と考え方を取りまとめました。

5-1 理解の深化に向けた方向性

 東電福島第一原発事故は、福島県民をはじめ多くの国民に多大な被害を及ぼしました。事故から既に9年が経過した現在でも、依然として国民の原子力への不信・不安が根強く残っています。さらに、事故を契機に、我が国における原子力利用は、原発立地地域に限らず、電力供給の恩恵を受けてきた国民全体の問題として捉えられるようになりました。
 事故により失われた原子力利用に対する信頼を回復するために、原子力に携わる関係者は、原発立地地域をはじめとする国民の声に謙虚に耳を傾けるとともに、原子力利用に関する透明性を確保し、国民の不信・不安に対して真摯に向き合うことが不可欠です。そのためにまず、科学の不確実性やリスクにも十分留意しながら、双方向の対話や広聴等のコミュニケーション活動をより一層進め、国民の関心に応え、取組や活動を強化していくことが必要です。また、海外の先行的な取組事例等を参考に、信頼のための第一歩として、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系を整えていくことが必要です。
 IT技術の進化に伴いコミュニケーション方法が多様化している中、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)をはじめとした国民の情報入手やコミュニケーションの手段の変化に対応していくことも必要です。また、社会に定着したインターネットを国民とのコミュニケーション活動のインフラとして利用できるような情報の整備が求められます。具体的には、国民が疑問に思ったときに、インターネット等を活用して自ら調べ、疑問を解決し、理解を深められるような環境の整備等の取組を実施していくことが重要です。



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