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第38回国際原子力機関(IAEA)通常総会について

1.日程:1994年9月19日(月)~9月23日(金)

2.場所:オーストリアのウィーン国際会議センター

3.参加国:加盟国121カ国のうち20人の閣僚を含む100カ国が参加、我が国からは、
田中眞紀子科学技術庁長官(原子力委員会委員長)
都甲 泰正 原子力安全委員会委員長
赤尾 信敏 在ウィーン国際機関日本政府代表部特命全権大使
岡崎 俊雄 科学技術庁原子力局長
林   暘 外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官
並木 徹 通商産業省資源エネルギー庁長官官房審議官
 らが出席

4.主要議題審議結果概要
(1)全般的概要
①今次総会は、北朝鮮の保障措置協定履行、核物質密輸問題、保障措置の強化・効率化、原子力安全等IAEAの直面する重要課題について原子力分野での国際協力推進の中心的専門機関としての立場から活発な議論が行われ、総じて有意義な総会であった。
②今次総会の議長には、スイス・エネルギー省次官のAlec Jean BEAR教授が選出された。
③我が国政府代表として田中大臣が演説を行い、二十一世紀の地球社会における原子力平和利用の意義及び核不拡散体制の維持・強化の重要性を指摘し、その際、北朝鮮の核開発問題に対する懸念を表明するとともに、核物質の不法取引問題について各国が協力して積極的に検討を進めるべきことを強調した。

(2)個別事項
①北朝鮮の保障措置協定履行
 54カ国の共同提案による下記内容の決議案が圧倒的多数をもって採択された。(その主な概要は次のとおり)
  ・保障措置協定実施のための事務局長と事務局の公平な努力を推奨し、理事会決議を強く支持。
  ・国連安保理事会で要請された北朝鮮の査察活動を実施するために努力し続ける事務局を推奨。
  ・北朝鮮の保障措置協定の不追従を続けていることに対し懸念を表明。
  ・北朝鮮に協定の完全実施に向け、直ちにIAEAと協力すること、同協定に関して全ての保障措置関連情報の提供と施設への立ち入り許可を認めることを促す。
  ・本件を第39回通常総会の議題に含むことを決定。

②核物質の密輸問題
 下記内容の決議がコンセンサスに採択された。
 (その主な概要は次のとおり)
  ・各国が核物質の密輸防止のため所要の措置をとることを加盟国に要請する。
  ・IAEAがこの分野で現在行っている加盟国を支援する活動を強化する。
  ・不法取引事件に関するデータの分析、収集及び核物質防護分野でIAEAがIAEA憲章に基づいて実施しうる事項について検討し、加盟国と関連する国際機関によって指名された専門家グループ会合で議案を用意する。
  ・12月又は遅くとも来年3月の理事会に提案すること、等。

③保障措置の強化・効率化
 「保障措置制度の強化・効率化」に関する決議が採択され、事務局長は来年3月の理事会に保障措置強化・効率化のための提案を提出すべきこと等が盛り込まれた。

④原子力安全、放射線防護及び放射性廃棄物管理
 6月外交会議において採択された原子力安全条約が9月20日署名開放されたこと等が報告された。
 又、「放射性廃棄物管理の安全確保」に関する決議が採択された。(原子力安全条約について我が国は、9月20日に署名。同日の署名は38カ国、その後9月28日現在で46カ国)

⑤技術協力
 技術協力の強化は、途上国の最大関心事項であり、「技術協力の強化一般に関する決議」で近年の途上国の主張である開発に直結するプログラムの策定が言及されている。
 又、個別の分野として、「低廉な飲料水生産計画」及び「水資源管理へのアイソトープ分布の利用」についての決議が採択された。

⑥南アフリカのIAEA及び理事会における地位
 本件は、国連においてあらゆる制裁措置が解除されたことに伴い、IAEAの活動にも全面的に復帰すべき旨も決裁がコンセンサスにて採択された。
 なお、南アフリカの指定理事国への復帰問題については引き続き検討することになった。

⑦イスラエルに対する技術協力の再開
  ・本件は、イスラエル提案による決議は採択に付されず、替わりに以下の内容の議長サマリーが採択された。
  ・議長ステートメントによって、総会はイスラエルに対する技術協力の再開を了承する。
  ・議長ステートメントによって、総会は、理事会がパレスチナ当局の管轄下にある領域において実施すべき技術プロジェクトを発掘することを希望するとの立場を表明する。
⑧対イラク国連決議687・707及び715の履行
  ・イラクについては、核兵器関連機器及び物質の無力化が進展したことを踏まえ、引き続きモニター等の面でイラクの全面的な協力が必要であることを強調した決議がコンセンサスにて採択された。

⑨理事会における指定議席
 理事会メンバーの指定方法は不透明であるとして改善を求めたフィリピン提案による議案等は、総会の賛同を得ることにならず、決議等の採択を求めたフィリピンに対して米国が本件は今後総会での審議を打ち切り、必要ならば後日他で検討を行えばよいとする動議が提案され、これを採択により採択した。

(3)その他
 田中大臣は、原子力分野での世界各国の有力者が集まるIAEA総会出席の機会に、米、仏、韓国の各国代表及びIAEAブリックス事務局長との会談を行い、右関係各国及びIAEA事務局との相互理解の促進、関係強化を図った。

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