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高速炉システム国際会議概要報告

動力炉・核燃料開発事業団

1. 既要

 標記国際会議、略称「FR’91」が10月28日(月)から31日(木)まで国立京都国際会館において開催され、海外(米国、フランス、イギリス、ドイツ、ソ連、インド、中国、IAEA、EC等)から約150名、我が国から約470名と当初予定(400名)を大幅に上回る合計620名の参加を得て、成功裡に終了した。
 11月1日(金)には「もんじゅ」見学(海外から約100名、国内から約30名参加)と動燃アトムプラザでの「敦賀ミーティング」(地元から約100名参加)が行われ、翌11月2日(土)には動燃大洗工学センター及び電中研我孫子研究所の見学が実施された。

2. 開会セッション

 初日(10月28日)の開会セッションでは、三島組織委員長(東大名誉教授)の司会のもと伊原日本原子力学会長、飯田関電副社長及び石渡動燃理事長の挨拶があった。この中で、飯田関電副社長からは高速炉開発に対する日本の電力会社の取組が紹介され、実証炉(60万KWe)の予備的概念設計を進めるとした上で、将来の実用化のためには今後とも画期的な技術革新が必要であることが強調された。石渡動燃理事長からは、現在総合機能試験中の原型炉「もんじゅ」の国際的活用とともに、従来の大型MOX炉の実用化を推進しつつ次世代に向けてそれ以外の技術体系についても幅広く柔軟に取り組むことが重要であることが述べられた。

3. 技術セッション

 開会セッションに続く全体セッションでは、主要国の高速炉及び関連する燃料サイクルの開発計画の進展状況が報告された。各国からの報告の要点は以下の通りであった。

 米国からは先進液体金属炉(ALMR)計画として、金属燃料を用いた統合型高速炉(IFR)計画と小型モジュール炉PRISMの設計が紹介され、2007〜2010年頃に実用化を目指して、安全性の向上、アクチナイド核種の消滅処理、経済性の向上及び許認可性の確立を目標に開発が進められていることが述べられた。IFRについては、その技術的成立性の実証を1995年までに完了するとしており、金属燃料と乾式再処理の組合せで経済性の目標も達成可能であるとの報告があった。

 欧州からは、フランス、ドイツ、英国の研究機関、電力、メーカーが協力して開発を進めている欧州統一炉(EFR)の開発状況が報告された。欧州では、大型MOX炉路線で2010年頃の実用化を目指しており、現在進めている統一設計については、電力の要望を取り入れ、1933年には安全レポートまで作成し、非公式な評価を行うこととしている。燃料サイクルについては、フランスからはMOX燃料の成型加工及び再処理の開発状況並びにその実績として1991年5月までに約2000体の燃料集合体の製作、約29トンの再処理を行ったこと、英国から再処理を中心にDFR、PFR燃料の実績と欧州実証プラント(EDRP)の報告があった。いずれにしても経済性の向上が今後の課題としている。

 ソ連からは、BN−350及びBN−600の各種のトラブルを含む運転経験に加え、BN−800、BN−1600の開発状況についての説明があった。説明の中で、増殖性とともにチェルノブイルの影響からゼロナトリウムボイド反応度炉心の開発が強調されていた。

 インドからは、実験炉FBTR及び原型炉PFBRの開発経緯及び現状が報告された。発表では、FBTRの運転経験と燃料に酸化物、炭化物あるいは金属を用いた場合の長期開発展望が説明された。

 日本からは高速炉開発として、原型炉の開発状況、実証炉の設計状況並びに将来の実用化に向けた研究開発の進展が報告され、また燃料サイクル開発として、動燃を中心とした開発状況とともにMOX燃料の再処理の実用化へ向けての段階を追った開発計画が説明された。

 全体会議に引き続いて初日(10月28日)午後の後半から最終日(10月31日)の午前中にわたり3会場に分かれて18の口頭発表セッション(パラレルセッション)とともに、29日、30日両日には6会場に分かれてのポスター発表のセッションが設けられ、高速炉の設計、建設、機器システム、燃料サイクル、安全性、経済性など個々の分野における研究開発成果、技術経験の発表、討論が行われた。この中で、「もんじゅ」については特別に1セッション設け、プロジェクトの総括報告、設計・建設の経験、試運転など9件の発表を行った。

 なお、発表論文件数は全部で280件(前回リッチランド会議では150件)、その内口頭発表が150件、残りの130件がポスターセッションで発表された。国別の発表論文数の内訳は、日本114件、欧州71件、米国46件、ソ連23件、中国13件、インド9件:その他4件であった。

4. パネル討論

 最終日(木)の午後1時半より3時間半にわたって、各国、国際機関の代表による「高速炉の役割、将来動向」と題するパネル討論が行われた。
 植松OECD/NEA事務局長が座長を、松野国際運営委員長(動燃)が全体調整役(モデレーター)を務め、近藤技術委員長(東大教授)の会議全体の技術総括を含めた基調報告に続き、J.D.Griffith(米国エネルギー省)、B.Wolfe(米国GE社)、A.Mergui(フランスNERSA社―SuperPhenixの所有会社)、J.Durston(英国NNC―原子力エンジニアリング)、V.M.Poplavsky(ソ連原子力産業省)、P.Dastidar(IAEA)、池亀亮(電事連)の各パネリストからの発表があり、その最後に植松座長よりOECD/NEAの諮問委員会での討論に基づいて経済性見通し、実用化のタイミング等について見解が述べられた。

 各パネリストからは、地球環境、資源確保からの高速炉の必要性、実用化に向けての安全性確保、経済性向上、そのための革新技術開発の重要性、高速炉によるTRU消滅の可能性、さらに踏み込んで国際協力、PAの必要性などが述べられたが、主張には基本的な点であまり違いは見られなかった。
 パネリストの発表後の討議では、高速炉実用化の目標時期について会場から「資源のほとんどを輸入に頼っている日本が、実用化を2030年としているのはどういうことか。日本のような先進国こそ進んでやるべきではないか。」という質問(米国)が出ていた。
 パネル討論終了後の閉会に際しては、主催者を代表して岡部原電社長から会議を総括した挨拶があった。なお、次回の高速炉システム会議は、欧州で1995年開催することとなった。

5. 技術展示/「もんじゅ」展示

 展示会場では、国内外の24の高速炉関連企業、機関が技術、製品などの展示を行った。その中で、フランスは会場中央に大きくスペースをとって、CEA/COGEMA/FRAMATOMEが炉から燃料サイクルの開発まで業務の紹介を行っていたことが目立った。
 「もんじゅ」に関しては、特別展示として別に会場を設定して建設の歩みから各機器の模型、実物部品の展示・紹介、リビングPSAのデモンストレーションなどを行った。

6. 敦賀ミーティング

 本国際会議の一環として京都での会議終了後の11月1日に、敦賀市の動燃アトムプラザにおいて、海外の高速炉開発状況を「もんじゅ」の地元関係者に理解を深めてもらうために敦賀ミーティングを開催した。
 石渡動燃理事長の挨拶の後、Kochetkov(ソ連)、Bouchard(フランス)、Xu(中国)、Griffith(米国)の各氏より、各国の高速炉の運転経験、開発成果とともに、エネルギー資源と原子力の必要性、原子力に対する世論の動向等について講演が行われた。敦賀ミーティングには、地元関係者約100名の他、京都会議の参加者約30名(海外は約10名)も加わった。敦賀ミーティング終了後、同アトムプラザにおいて、「もんじゅ」見学ツアーの参加者を加えて懇親会を開催し、海外の高速炉開発関係者と地元関係者が直接懇談できる場が設けられた。

7. 本会議の特記事項

 今回の会議における発表及び交流において得られた特記すべき点、気づいた点は次の通りである。

(1) 国際的理解・交流の促進
 海外から高速炉開発のリーダークラスを含む第一線の担当者が150名参加したことは、発表、討論、見学を通して、日本の高速炉への取組みに対して理解を得る良い機会となった。それと同時に470人の国内参加者がこれら海外参加者の話を直接聞き、意見交換ができた点でも大きな価値があった。

(2) 「もんじゅ」の国際的役割への期待
 「もんじゅ」セッション(Session−8)、「もんじゅ」展示等を通じて、「もんじゅ」試運転への参加など国際的に「もんじゅ」への高い関心が集まった。

(3) グローバルな視点での開発、国際協力
 実用化時期の議論にもあるように、グローバルな視点からの高速炉開発の意義、努力が重要視されてきた。また、国際協力においても、共同作業、分担開発を指向する動きが出てきた。

(4) FBRの高度化、多様化
 今回の会議の基調テーマになっている「革新技術」の高速炉実用化、高度化における重要性と、「革新技術」によって軽水炉体系に勝るブレークスルーの可能性の認識が一般的になってきた。この分野では日本の長寿命燃料、コンパクト機器・配管、免震、2次系削除などの開発は一歩先んじていると感じられた。
 MOX以外の燃料としては、金属燃料に対する米国における開発努力のほか、窒化物燃料について仏、米、日、ソからその優れた炉特性の可能性が示された。

(5) 中国の高速炉開発計画の具体化
 中国の高速炉開発の全体像が明らかになった。
その要点は以下のとおり。
 ・FBR研究センター’90年発足、Naループ20基運転中
 ・発電実験炉FFR(First Fast Reactor)’96年着工
 ・モジュラー型炉の導入〜2015年、大型FBRの導入〜2025年

 なお、中国の計画には、イタリー、仏、ソが技術協力している。
 付記:「FR’91」開催中の10月28日に、日欧間のFBRの研究開発協力に関する覚書(MOU)が、双方の運営委員会の間で調印された。日本側は原電、動燃、原研、電中研を代表して運営委員会議長の岡部原電社長、石渡動燃理事長が、欧州側は仏CEA、独KFK/Interatom、英国AEAの代表が調印した。

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