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資料 第34回国際原子力機関総会政府代表演説 科学技術庁長官 原子力委員会委員長 大島友治 |
(冒頭挨拶) 議長 私は、貴下が第34回国際原子力機関総会の議長に選出されたことに対し、心から祝意を表するものであります。貴下の豊富な経験と卓越した指導力により、本総会が実り多きものとなり、原子力の平和利用に関する国際協力の促進に資することを強く確信するものであります。 (我が国の原子力開発利用と国際協力) 議長 原子力を巡る情勢は、我が国においても決して容易な状況にはありませんが、我が国は、原子力を基軸エネルギーとして、その開発利用を積極的に推進しており、その現状を紹介いたします。 まず、核燃料サイクルについては、自主的な核燃料サイクルの確立を目指し、濃縮、再処理及び放射性廃棄物の処分を目的とした施設建設計画を推進しております。 高速増殖炉については、1992年の臨界を目指して、原型炉「もんじゅ」の建設を進めております。 また、人類の恒久的エネルギー源として期待される核融合については、実用化に向けて積極的に研究開発を推進しており、さらに国際熱核融合実験炉(ITER)計画については、概念設計活動に続く工学設計段階の活動に関しても、より一層主体的な役割を果すべくITER工学設計中央チームの活動に必要な施設の整備を行うなど引き続き積極的に協力を行っていく所存であります。 さらに、国際原子力機関においても、ソ連政府からの提案及び支援要請に基づくチェルノブイル国際研究センターにおける共同研究の推進及びチェルノブイル原発事故後の各種対策に関する有効性の評価を目的とする諸活動の進展が期待されているものと承知しておりますが、我が国としては、人道的観点からの配慮も含め新たな活動の円滑な実施に向け、可能な限り協力して行く所存であります。 (原子力発電と地球環境問題) 議長 世界の原子力発電は、既に全世界の発電電力量のおよそ17パーセントを供給するまでに成長しております。我が国においても原子力発電が総発電電力量の約4分の1を供給しており、主要なエネルギー源の一つとして確固たる地位を築いております。 近年、地球環境保全への関心が高まってきておりますが、原子力については、本年7月のヒューストン・サミットにおいても地球環境問題の解決に重要な役割を果たす旨再確認されました。我が国としましては、かかる地球環境保全の観点からも、今後とも原子力の開発利用を積極的に推進して行く所存であります。 (安全確保とパブリック・アクセプタンス) 議長 原子力の開発利用を円滑に推進して行く上で、安全の確保はもとより、原子力に対する公衆ないし社会の正しい理解と協力を得ることが極めて重要であります。我が国といたしましては、引き続き、安全の確保に最大限の努力を払って行く覚悟であり、国際原子力機関による原子力発電の安全確保に関する諸活動に積極的に貢献して行く所存であります。 また、原子力に対する公衆ないし社会の正しい理解と協力を得るためには各国関係者の積極的な対応が強く期待されるところでありますが、同時に各国間の密接な情報交換等の国際的連携を強化して行くことも重要であります。我が国は、本年3月に国際原子力機関に対し、特別拠出を行うとともに、本年10月下旬に我が国の青森県においてジャーナリスト対象の原子力地域セミナーの開催受入れを決定した次第であります。同セミナーが、我が国の原子力開発利用の推進に寄与するのみならず関係諸国のパブリック・アクセプタンスの形成に資することを期待するものであります。 (核不拡散体制の強化と保障措置の重要性) 議長 ご高承のとおり、今次総会の直前には、ジュネーブにおいて世界の大多数の国の参加のもとに第4回核不拡散条約再検討会議が開催されました。従来より一貫して原子力の開発利用は厳に平和利用に限って進められるべきであるとの確固たる立場を維持している我が国としても、国際的な核不拡散体制の維持、強化に資するよう積極的に貢献する旨表明した次第であります。 かかる観点より、我が国は、核不拡散条約の枠外にあって有意な原子力活動を行っている国が可及的速やかに核不拡散条約を締結することを希望すると同時に、核不拡散条約の締約国であり、国際原子力機関の包括的保障措置を受諾していない国については、早急に包括的保障措置を受諾するよう強く希望するものであります。また、我が国は、原子力関連資機材の輸出に当たっては、輸出先国が核不拡散条約を締結しているとともに、包括的保障措置が適用されていることを許可の条件とするなどの厳格な措置を講じており、関係国も、同様の措置を講ずるよう推奨したいと考えます。 また、核兵器保有国における保障措置適用の範囲拡大は、核不拡散体制の普遍性を高める上で大きく寄与するものと考えます。今後は、国際原子力機関の資源の許す範囲で、漸次保障措置の適用範囲を拡大して行くべきであると考えます。 保障措置制度は、現在に至るまで、有効に機能してきましたが、今後の厳しい財政事情に鑑み、保障措置の効果の低下を招かないことを前提に、査察業務の合理化、省力化等を進めることが重要であり、国際原子力機関で引き続き検討が行われることを強く希望するものであります。 我が国といたしましては、平和利用に徹した原子力先進国のひとつとして、核不拡散と原子力の平和利用の両立が可能であることを更に実証して行く所存であり、この面での関係諸国及び国際原子力機関の一層の理解と協力を期待するものであります。 (技術協力) 議長 我が国は途上国における原子力平和利用の普及に大きく貢献する国際原子力機関の技術協力活動に対しては、今後とも出来る限りの支援を約束するものであります。 技術協力基金については、国際原子力機関の技術協力活動を重視し、分担金と同様、毎年割当て額に応じ着実に増額に協力してまいりました。今後は、長期的な目標及び運用方策について一層現実性のある検討が行われて行くことを期待するものであります。アジアの開発途上国を対象とする国際原子力機関の地域協力(RCA)は、地域的な原子力協力の先駆的、代表的成功例として評価されており、本協力に続きこのたびラテンアメリカ地域協力(ARCAL)及びアフリカ地域協力(AFRA)が発足の運びとなったことは誠に喜ばしいことであります。アジア地域協力に資金、技術両面において中心的役割を果たしてきた我が国としては、今後とも核不拡散に留意しつつ、地域のニーズに応じた可能な限りの協力を行う所存であります。 (行財政問題) 議長 国際原子力機関は、その運営の効率性において卓越した国際機関の一つであることは、広く認められております。これはブリックス事務局長以下事務局関係者が加盟国の財政事情に理解を示し、過去数年間実質ゼロ成長予算の維持に最大限の努力を払ってこられた賜物であると存じます。 国際原子力機関が、今後とも重点活動の選定を含め、より現実的かつ効率的な運営を心がけていくことを強く期待するものであります。 (結び) 議長 国際原子力機関は、今日まで、国際社会において核不拡散に貢献しつつ、原子力の平和利用を推進する国際機関として遺憾なくその重大な使命を果たしてきました。 この一年間は我が国の遠藤理事が理事会議長を務め、国際原子力機関の円滑な運営に協力してまいりました。今後は事務局に優れた人材を提供することを含め、このような国際原子力機関の重要な役割に鑑み、我が国としても引き続き積極的な役割を果たしてまいる決意であります。 ご清聴ありがとうございました。 |
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