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巻頭言 原子力委員会委員長就任に当たって
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現在、我が国の原子力発電は、総発電電力量の約3割を占め、その安定した運転実績と世界最高水準の信頼性の実現により、我が国の国民生活の向上及び産業経済の発展に不可欠なエネルギー源として定着してきております。エネルギーの海外依存度の高い我が国は、今後とも、経済性、供給安定性、環境影響等において優れた特徴を有する原子力を我が国のエネルギー供給構造の脆弱性の克服に貢献する基軸エネルギーとして位置付け、長期的視点に立って、安全確保を大前提に、その開発利用を推進していく必要があります。現在、青森県六ケ所村において、ウラン濃縮施設の着工をはじめとした核燃料サイクルの民間事業化が着実に進展しているほか、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」についても、順調に建設が進められております。今後とも安全確保を大前提に、これらのプロジェクトが円滑に進められるよう、積極的な支援を行っていくことが重要であると考えております。 また、創造的、革新的領域の研究開発としては、核融合、高温工学試験研究等の先導的プロジェクト及びレーザー、人工知能等の基盤技術開発等を積極的に推進し、次代の創造的な科学技術の育成を図ることとしております。 さらに、昨年、新日米原子力協力協定の発効及び核物質の防護に関する条約への加入が行われましたが、これらは、我が国が原子力先進国としての国際的な責務を果たしつつ、改めて原子力開発利用の牽引車として、国際社会に貢献する姿勢を内外に明らかにしたものであります。今後は、日仏原子力協力協定の改定に向け、日仏原子力協議の円滑な進展を図るとともに、先進国との共同研究、開発途上国との研究交流等を進めるほか、外国人研究者の受け入れのための適切な国内環境の整備等を積極的に推進してゆくことが重要であります。 さて、以上述べましたような原子力開発利用の着実な進展にもかかわらず、原子力を取り巻く現下の国民世論には、厳しいものがあります。特に、チェルノブイル原子力発電所の事故等を契機として、原子力開発利用に対する反対運動が一部に生じており、国民の原子力に対する不安が高まっていることは誠に残念であります。このため、原子力施設の安全確保のための不断の努力を積み重ねることはもちろん、関係機関の総力を挙げて、国民の立場に立った、きめ細かく分かりやすい広報活動を心がけ、国民の理解と協力の増進を図ってゆくことが今日の最重要課題であると考えております。その際、原子力開発利用に携わる者が一丸となり、粘り強く努力を続けていくことが重要であり、マスメディアを通じた広報活動のみならず、国民に直接生の声で語りかけるような草の根的な広報活動を展開していくことが必要であります。私といたしましては、このような時期に、原子力委員会の委員長を務めますことの責任の重大さを痛感し、今後全力を尽くして職務に励む所存でありますので、御支援、御協力を賜りますようお願いいたします。 |
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