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高速増殖炉開発計画専門部会報告書 昭和63年8月 1.はじめに (1)原子力開発利用長期計画においては、高速増殖炉を我が国の将来の原子力発電の主流にすべきものとして開発することとしており、その開発を進めるにあたっては、軽水炉によるウラン利用体系に勝るものとして高速増殖炉によるプルトニウム利用体系を構築していくことを積極的に目指すこととしている。 また、「高速増殖炉の開発は相当の長期にわたって、官民の適切な協力体制の下に、不断の努力を傾注する必要があり、その具体的展開については、今後、原子力委員会の高速増殖炉開発計画専門部会において引き続き審議を進めることとする」旨が定められている。 高速増殖炉開発計画専門部会は、1984年に高速増殖炉開発懇談会の報告書がとりまとめられた後の高速増殖炉の実用化に向けた内外の情勢の変化も考慮して、 ① 高速増殖炉の開発に関する長期的推進方策の審議を行うべく、1986年5月に設置された。 本専門部会においては、原子力開発利用長期計画に基づいて、原型炉「もんじゅ」の建設が1992年の臨界を目途に進められるとともに、実証炉の開発が基本仕様選定を1990年頃、その着工を1990年代後半に行うことを目標として進められていることを踏まえて、関係機関における研究開発の的確かつ効率的な推進を図る必要があることに鑑み、昨年4月より基礎調査分科会において、関係機関の研究開発の状況等をレビューするとともに、炉の開発を中心に、研究開発推進に当たっての基本的事項及び研究開発課題について調査検討を進めてきた。 本検討のとりまとめに当たっては、次の3点を基本とした。 ① 原子力開発利用長期計画に示された基本計画を踏まえ、国内関係機関における研究開発等の状況及び海外の動向のレビューを行うとともに、現状における課題等を整理・検討し、また、今後の研究開発の進めかたについて具体的な検討等を行い、研究開発の方向あるいは実施にあたっての重要事項等を明らかにする。なお、今後の研究開発の進展に対応して、核燃料サイクルの研究開発についても調和のとれた推進が図られるよう配慮する必要がある。 2.高速増殖炉開発を巡る状況 (1)高速増殖炉開発の意義 高速増殖炉は、発電しながら消費する以上の核燃料を生成する画期的な原子炉であり、この高速増殖炉によるプルトニウム利用が本格化すれば、将来的には天然ウランの所要量を大きく低減させ、原子力利用における核燃料資源の制約に関する問題を基本的に解決し得るものと考えられる。 したがって、高速増殖炉を我が国の将来の原子力発電の主流にすべきものとして開発を進める必要があり、その推進にあたっては安全性、経済性等の観点から、軽水炉によるウラン利用体系に勝る高速増殖炉によるプルトニウム利用体系を積極的に構築していくことが極めて重要である。 我が国がかかる観点から、その研究開発を積極的に推進していくことは、国内のエネルギー供給基盤の強化のみならず、国際社会のエネルギー安定確保にも長期的に貢献していくという政策的意義をもつものである。 また、高速増殖炉の技術は極めて広範な科学技術領域に立脚した総合システム技術であり、その研究開発の推進は広範な科学技術の水準の向上にも資するものである。 (2)我が国の研究開発の状況 我が国の高速増殖炉の開発は、1956年の原子力委員会「原子力開発利用長期計画」に基づいて開始され、初期には日本原子力研究所(以下、原研)を中心に基礎的な研究が実施された。続いて原子力委員会は1966年、「動力炉開発の基本方針について」を定め、高速増殖炉開発をナショナルプロジェクトとして、各界の協力のもと、総力を結集して進めることとし、その推進機関として動力炉・核燃料開発事業団(以下、動燃)が翌年設立された。 動燃の設立に際しては、実験炉「常陽」の概念設計書を始めようとする原研の成果が移管され、以後、動燃を中心として、基盤となる技術の研究開発が体系的に実施されるとともに、これらを集約して実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」の開発が進められてきた。このナショナルプロジェクトには我が国の電力、メーカー等も動燃への人材派遣あるいは機器の製作等を通して参画し、技術的蓄積が着実に行われてきている。 電気事業者は1966年から1972年にかけてアメリカのフェルミ炉計画にメーカー等とともに参加したのを手始めに、軽水炉で培ってきた技術を背景に実証炉設計に向けての合理化設計研究等を実施し、また種々の要素研究を(財)電力中央研究所(以下、電中研)を含めて行い、自己の技術蓄積を図ってきた。さらに、原型炉「もんじゅ」の建設に協力して技術協力と工事施工管理を行い、実務の習得をも図ってきた。1987年の原子力開発利用長期計画においては、原型炉に続く実証炉の設計、建設、運転は電気事業者が主体となって進めることが明確にされた。電気事業者は実証炉の業務を日本原子力発電(株)(以下、原電)に委託している。 実証炉の開発に関する研究開発の実施にあたって、原電、動燃、原研、電中研は4機関で構成する高速増殖炉研究開発運営委員会を設け、所要の協議、調整を行い、円滑かつ効率的な推進を図っている。 この他、高速増殖炉実用化に係るものとしては、国の支援を受けて行われている耐震試験等の技術確証試験、主要機器のフィージビリティスタディ等がある。 一方、核燃料サイクル分野の研究開発の現状を見ると、高速増殖炉再処理技術については、動燃において研究開発が進められ、現在、工学規模の試験が可能な施設(リサイクル機器試験施設)の設計を行っている段階にある。 なお、今後は、これらの成果を十分に踏まえ、2000年過ぎの運転開始を目途にパイロットプラントの建設計画の具体化を図ることとされている。 また、MOX燃料加工技術についても動燃において研究開発が進められ、プルトニウム燃料製造施設(PFPF)FBRラインが1987年には完成し、1988年より運転を開始することになっている。 以下に主要関連機関の研究開発状況を示す。 ① 動力炉・核燃料開発事業団(3)海外における高速増殖炉開発の動向 ① 欧州3.研究開発推進に当たっての基本的事項 (1)高速増殖炉開発のシナリオ 研究開発の推進方策の検討に当たっては、研究開発成果の反映・活用される場である実証炉から実用炉に至る開発のシナリオを踏えて、各技術分野毎の重点的な課題および研究開発目標の明確化等を図ることが重要である。実用化に至る開発シナリオとしては、原子力開発利用長期計画に基づいて、次の通りとした。 ① 2020年代から2030年頃の実用化を目標として原型炉「もんじゅ」に続く実証炉をはじめとする複数の炉を適切な期間をおいて継続的に建設する機会を設定する。研究開発はこれらの建設段階毎に収れんさせつつ実用化を見通した形で長期的観点から総合的に実施していく。(2)研究開発推進の体制 高速増殖炉の研究開発における官民の役割分担については、現在、民間における実証炉関連研究が立ち上がりつつあり、今後、民間の研究開発が本格化していく状況にあることから固定的なものとして設定することは適当ではないが、当面はそれぞれが以下の考え方にそって研究開発を推進することが妥当と考えられる。 (国) ・高速増殖炉実用化に向けた先導的、基盤的な研究開発、データベースの整備等の基礎研究、開発リスクの大きい研究開発等、民間のみでは十分な実施を期待しがたいもの。 (民間) ・実証段階以降のプラントの設計、建設、運転に必要な研究開発実証炉の開発に当たっては、設計、建設、運転に主体的役割を果たす原電と、これまでの高速増殖炉研究開発の中核的役割を果たし、かつ、今後の関連研究開発においても重要な役割が期待されている動燃が密接に連携し、また、原研、電中研、メーカー等関係する研究開発機関も含めた協調体制の下で、整合性をとりつつ、それぞれの機関がその役割に即して、責任を持って進めていくことが重要である。 高速増殖炉の研究開発関係機関の協力体制として、原電、動燃、原研及び電中研の4機関で構成する高速増殖炉研究開発運営委員会が1986年に発足している。本委員会は、国の高速増殖炉の開発方針に基づき、国内関係機関が実施する高速増殖炉の研究開発業務の効率的な分担、運用及び関達する国際協力について協議、調整を行うことを目的として設置されたものである。現在、その活動も軌道に乗ってきており、今後もかかる体制の下で具体的協力を進めていくことが適当である。 特に、動燃と原電との間においては、動燃が蓄積してきている技術の移転及び今後の実証炉の開発のための技術協力が進められており、その推進にあたっては情報の移転、人材の交流、施設の有効活用等、今後とも、幅広い対応を行っていくことが重要である。 (3)大型施設を必要とする研究開発 ① 我が国においては、動燃大洗工学センターに実験炉「常陽」、燃料・材料照射後試験施設、ナトリウム関係試験施設等が整備され、燃料の照射試験、主要コンポーネント機器の開発等が実施されてきており、また、電中研等においても大型施設による耐震等の研究が実施されて来ている。さらに、国際協力のもとに、アメリカ、フランスの所有する施設を利用した種々の研究開発等が行なわれて来ている。(4)国際協力 ① 国際的な高速増殖炉の研究開発の状況を概観すると、欧州においては主要国間の国際協力による実証炉開発が実施されており、一方、アメリカにおいては、エネルギー省が中心となって進めている新しいタイプの高速増殖炉概念の構築について、我が国との協力を希望して来ている状況にある。(5)その他の重要事項 高速増殖炉の実用化に向けた研究開発は、かなりの長期的に及ぶものであり、かつ、実用化までの間における炉の建設は少数基に限られること等から、高速増殖炉技術を担う人材の確保、育成、特に、技術者の世代間の技術、経験の継承を的確に行っていくことに十分配慮していくことが必要となる。 我が国における高速増殖炉の研究開発は、これまで、動燃を中心に進められてきたが、今後は、発電プラント技術としての実証、習熟及び性能向上並びに経済性の確立を図っていく実用化移行段階を迎え、特にメーカーの技術力、ノウハウ等がより一層必要となっている。 これまでメーカーは、高速増殖炉開発に関し、 ① 動燃が必要とする専門的人材の派遣等を通じ、技術の開発、蓄積及び人材の育成を図ってきている。 今後は、プラントの建設を適切な期間をおいて継続的に行い、設計及び関連した研究開発を実施することにより、これらのメーカーの技術力の継続的な維持・向上をも図り得るよう配慮する必要がある。特に、原型炉「もんじゅ」の建設の進捗に伴い、これらのプロジェクトの経験を有する人材を実証炉以降の開発に十分活用できるような対策について、検討を行うことが必要である。 4.研究開発課題 高速増殖炉の実用化に向けた研究開発は長期的な視点に立って継続的に実施すべきものであるので、実用化までに複数の炉を建設する機会を設定し、研究開発をこれらの場面で収れんさせつつ進めるとの基本的考え方をとっている。 今後の実用化に向けた研究開発においては、プラントの安全設計方針等、プラント構成を検討する上で基本となる「システム」、「安全」及び「耐震」の研究開発が重要であり、また、プラントの大型化、コスト低減、信頼性向上を目指して「炉心・燃料」、「プラント機器設備」、「構造・材料」及び「熱流動」の研究開発に重点的に取り組んでいく必要がある。さらに、プラントの運転・保守性の向上を目指した研究開発も必要である。 ここでは、それぞれの分野について、研究開発の当面する重要なステップである実証炉の設計、建設等の段階に着目しつつ、重要な研究開発テーマを取り上げるとともに、これらについて、研究開発内容、目標、成果の反映時期及び主な研究開発実施機関を明らかにした。また、成果の反映は実証炉以降となるようなものでも早急に着手を要するものは、その旨を示し課題に含めた。 (1)システム (2)炉心・燃料 (3)プラント機器・設備 (4)安 全 (5)構造・材料 (6)熱流動 (7)耐 震 (8)運転・保守 (1)システム a.研究目的(2)炉心・燃料 a.研究目的(3)プラント機器・設備 a.研究目的(4)安 全 a.研究目的(5)構造・材料 a.研究目的(6)熱流動 a.研究目的(7)耐震 a.研究目的(8)運転・保守 a.研究目的 |
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