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資料
昭和63年8月1日 (1)我が国におけるウラン濃縮の事業化は、動力炉・核燃料開発事業団が中心となって開発を進めてきた遠心分離法の技術により進められている。 本年4月には、岡山県人形峠において、遠心分離法のウラン濃縮原型プラント(200トンSWU/年)の部分操業が開始され、この原型プラントは、来年1月頃には、全面運転に入る予定である。 この成果を踏まえ、日本原燃産業(株)は、青森県六ケ所村において、昭和66年頃の操業開始を目途に、商業用ウラン濃縮工場の建設計画を推進している。 (2)一方、我が国のウラン濃縮事業を取りまく環境は、現在、極めて厳しく、世界的なウラン濃縮役務の供給能力の過剰及び最近の急激な円高の進行により、国内におけるウラン濃縮事業の一層の経済性の向上が強く求められている。 このような状況の下、我が国において国際競争力のあるウラン濃縮事業を確立していくためには、今後、経済性の一層の向上を図り得るウラン濃縮新技術の開発・実用化が極めて重要な課題である。 (3)岡山県人形峠における原型プラントに採用された遠心機は、技術的にみて、ほぼ完成の域に達したものであり、その遠心機が青森県六ケ所村における商業プラントの第1期分(600トンSWU/年)に採用されることとなっている。この遠心機については、今後これ以上の飛躍的な技術的進歩は期待し難く、また、回転胴に高価な素材を用いていることから、今後のコスト・ダウンにも限界があるものと考えられる。 一方、新素材回転胴を用いた高性能遠心機は、これまでの研究開発の成果からみても、在来の遠心機に比べ大幅な性能の向上が見込まれ、また、遠心機の製造コストも、今後、低減化が期待されている。さらに、ウラン濃縮新技術のなかでは、最も開発が進んでいる技術であり、また、既存の技術あるいは設備との整合性もよいため、比較的容易かつ早期に実用化が可能な技術と考えられる。 このため、日本原燃産業(株)は、青森県六ケ所村において昭和70年頃から操業を開始する予定の商業プラントの第2期分(900トンSWU/年)においては、新素材高性能遠心機を導入することを計画している。 (4)当ワーキング・グループは、昭和63年5月以来、これまで4回の会合を開催し、新素材高性能遠心機の研究開発の現状を評価するとともに、今後の研究開発の進め方について調査審議を行った。 ここに、これまでの調査審議の結果を中間的に取りまとめたので、報告する。 2.新素材高性能遠心機開発の成果と今後の課題 (1)開発の成果 新素材高性能遠心機の開発については、昭和61年10月28日の原子力委員会ウラン濃縮懇談会報告書の中で、「官民の有機的連携の下に、関係者の人的交流も含めた積極的な対応により、新素材高性能遠心機についてできるだけすみやかに実用化への見通しを得るよう開発を進める」とされている。この方針に沿って、動力炉・核燃料開発事業団、日本原燃産業(株)及び電気事業者は、昭和61年12月、研究協力協定を締結し、新素材高性能遠心機の開発及びその製造技術の開発を進めてきた。 動力炉・核燃料開発事業団において進めてきた遠心分離機の開発については、これまで、単機開発、集合機開発、システム試験等を実施し、所期の成果を収め、現在ブロック試験の試運転を開始したところである。また、メーカーにおいて行われてきた遠心機の製造技術の開発については、ほぼ見通しが得られつつあり、今後、国の支援を受けて、さらに製造技術の改良を行う予定である。 これらの技術開発の成果を取りまとめれば、以下のとおりである。 ① 新素材高性能遠心機の開発(2)今後の課題 新素材高性能遠心機の開発は、前述のとおり、ほぼ順調に進められているところであるが、これを商業プラントに導入するためには、今後、ブロック試験の成果を見極めるとともに、以下の研究開発を進める必要があると考えられる。 ① 実規模カスケードの特性評価3.今後の新素材高性能遠心機の技術開発の進め方 (1)新素材高性能遠心機によりウラン濃縮の事業化を進めていくためには、前述したような技術的課題を解決するため、今後できるだけ早期に、パイロット規模試験装置(以下「パイロット・プラント」という。)の建設・運転を行う必要がある。 新素材高性能遠心機のパイロット・プラントは、商業プラントの設計・建設に必要なデータを取得するためのパイロット的役割を果たすとともに、商業プラントへの新素材高性能遠心機の導入を最終的に決断するための実証的役割をも果たすことが期待される。 (2)パイロット・プラントの遠心機の台数としては、①このプラントの設計・建設を通して取得できるデータは、実規模カスケードになるべく近い規模のもので実施すればするほど、商業プラントの設計を合理的なものとし、商業プラントの経済性・信頼性を向上させるものとなること、②遠心機製造の観点から重要なのは、商業プラントへの導入に向けての製造技術の検証であり、パイロット・プラントにおける遠心機の製造本数がその大きな要因となることなどを考慮すれば、1000台程度とすることが適切と考えられる。 また、パイロット・プラントの設置場所としては、既設施設を活用することにより、その建設を短期間に行うことが可能であり、かつ、建設費の大幅な低減化が可能であることから、動力炉・核燃料開発事業団の人形峠事業所が適切と考えられる。 (3)以上の考え方に基づき、動力炉・核燃料開発事業団、日本原燃産業(株)及び電気事業者は、共同して、パイロット・プラントの詳細設計を速やかに進めるものとする。 なお、このパイロット・プラントの建設・運転体制等については、引き続き、当ワーキング・グループにおいて調査審議を進めるものとする。 |
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