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昭和63年度電力施設計画の概要(1)

昭和63年4月
通商産業省
資源エネルギー庁



 はじめに

 昭和63年度電力施設計画は、3月に指定電気事業者15社から、通商産業大臣に届け出が行われた。(指定電気事業者 別表-1)

 本施設計画の概要は、これら15社に加え、公営(34事業者)、共同火力(12社)等その他の電気事業者の計画をも含めて、全電気事業者(66事業者)としてとりまとめたものである。

 当省としては、電力需要が、長期的には内需を中心とした安定的な経済成長に伴って着実に増加すると見込まれること、さらに、電力が国民生活、産業活動の基盤を支える重要なエネルギーであることにかんがみ、電力の安定供給確保を図るため、本施設計画に沿った電源及び流通設備の計画的開発が不可欠であると考えている。

1.需要電力量、最大需要電力及び年負荷率の見通し

 今回の施設計画の前提となった、昭和72年度までの需要電力量、最大需要電力及び年負荷率の見通しは、次のとおりである。(表-1)

表-1 需要見通し

(1)需要電力量
① 昭和61年度は、円高による鉱工業生産活動の停滞を反映した産業用需要の減少等により、総需要電力量において昭和57年度以来の低い伸び、さらに、自家発の高稼働もあり、電気事業用需要電力量は対前年度減となった。

 しかしながら、昭和62年度においては、サービス経済化の進展、新規住宅着工戸数の伸長、夏季の高気温の持続等によって民生用需要が増加し、また、昭和61年度まで低迷していた産業用需要についても、電気機械、輸送用機械が好調であったことに加え、内需拡大政策の効果等により、素材型産業である鉄鋼、化学等の需要が増加に転じたことから、堅調な伸びを示した。このため、全体として、昭和61年度の反動もあり、高めの伸びを示した。

② 今後の電力需要については、猛暑等による一過性要因もあった昭和62年度のような伸びが継続するとは見込めないものの、長期的にも、内需を中心とした安定的な経済成長に伴って着実に増加していくものと予想されている。

 すなわち、民生用需要は、家電機器の省電力化等が引き続き進展するものの、アメニティ志向の高まりやライフスタイルの変化による家庭用電気機器の大型化・多機能化、ルームエアコンの普及、更にはサービス経済化、情報化等に伴うビルの新増設や高層化、オフィスオートメーション、通信関連機器の普及等の増加要因により、昭和61年度から72年度まで年平均3.8%の堅調な伸びを示すものと見込まれている。

 一方、産業用需要については、産業構造調整の進展による鉄鋼を始めとする電力多消費型の素材型産業の成長鈍化、及び個々の産業における生産工程の省電力化の進行等が考えられることから、昭和61年度から72年度まで平均1.2%の伸びにとどまるものと見込まれている。

③ この結果、昭和72年度の総需要電力量は、7,782億kWh程度となり、昭和61年度から72年度までの年平均伸び率は、2.4%となるものと見込まれている。また、このうちの電気事業用需要電力量は、7,090億kWh程度となり、昭和61年度から72年度までの年平均伸び率は、2.5%となるものと見込まれている。
(2)最大需要電力
 最大需要電力(電気事業用夏季ピーク電力)は、主として民生用需要における冷房機器の普及拡大による夏季需要の急増により需要電力量を上回る伸びを示してきた。昭和62年度は、景気の回復に伴い夏季ピーク時以降産業用の需要が増加したこと、夏季が高気温で推移したことから需要電力量の伸びが大きかった反面、最大需要電力については、関東・東海地方を除き最高気温が平年並みあるいは低めであったことから、伸びは比較的小さかったことにより、最大需要電力の伸びは需要電力量の伸びを下回る結果となった。

 今後は、引き続き冷房機器の普及が見込まれるほか、サービス産業をはじめとする昼間操業型の業務用電力の需要の増加、産業用需要にあっては機械等の昼間操業業種の増加等の変化が予想されることなどにより、依然として高い伸びが見込まれる。

 この結果、最大需要電力は、昭和61年度の1億1,054万kWに対し、昭和72年度には1億5,121万kW程度となり、年平均2.9%程度の伸びを示すものと見込まれている。

(3)年負荷率
 年負荷率は、昭和50年度61.3%から昭和61年度には59.0%になるなど年々低下傾向にある。今後についてみると、深夜電力の増加、夏期ピーク時の需要を他の時期にシフトすることなどを目的とする需給調整契約の拡充、蓄熱式ヒートポンプの普及など負荷平準化対策の推進による改善が期待されるものの、引き続き冷房空調需要の増大、昼間操業型の業務用電力の比率の増加、産業構造調整の進展による負荷率の高い基礎素材産業の比率の低下などの低下要因が見込まれるため、年負荷率の低下傾向は継続するものと予想され、昭和61年度の59.0%に対し、昭和72年度には56.9%にまで低下するものと見込まれている。こうした年負荷率の低下は、電源設備の利用効率の低下をもたらし、ひいては供給コストの上昇につながるため、負荷平準化対策を従来にも増して積極的に推進していく必要がある。
(注、年負荷率とは、最大需要電力に対する年平均需要電力の比率をいい、夏季ピークが大きくなるに伴い、小さい値となる。)


2.電源開発計画と需給バランス

 電力は、需要に応じ安定的に供給する必要があり、かつ、貯蔵することができないという特性を有しているため、常に最大需要電力の増加に対応し得るよう電源設備を計画的に開発していく必要がある。電源設備の開発に当たっては、認可出力から定期検査、水力発電の出力減少等を控除したうえで、さらに、異常気象、景気変動等の予期し得ない事態が発生した場合においても電力を安定的に供給することができるように、想定される最大需要電力に対して一定の予備力を確保する必要がある。

 こうした観点から、各社は、電力の安定供給を図るため、昭和63年度に、29基276万kW(水力14万kW、火力201万kW、原子力61万kW)、昭和64年度に、34基442万kW(水力12万kW、火力17万kW、原子力418万kW)の電源を新たに電源開発調整審議会に上程することを計画している。(表-2)

表-2 電源開発計画(全電気事業)

 また、現在建設中の電源81基3,030万kWについては、引き続き円滑な建設を進めるとともに、電源開発調整審議会通過後未着工の地点(着工準備中地点)61基2,187万kWについても、計画的着工を目指すこととしている。

 将来の電力の安定供給確保の観点から、昭和65年度以降着手が予定されている電源も含め、これらの電源開発を計画的に遂行する必要がある。

3.電源多様化の推進

 本計画が実施された場合の昭和72年度末の電源構成は表-3に、発電電力量の構成は図-1に示すとおりである。

表-3 年度末電源構成


図-1 年度別発電設備及び発電電力量の構成


 当省としては、昭和62年10月の電気事業審議会需給部会中間報告に示された方向に沿って、電源の多様化を実現すべく電気事業者を指導しているところであり、本計画は同報告の示す方向に沿ったものとなっている。

 本計画に盛られた電源開発計画、特に原子力、石炭火力を中心とする石油代替電源の開発を着実に実現していくため、国民の理解と協力を得ながら、今後とも各般の施策を講じていく必要がある。

4.送変電設備の増強

 電力需要の増加に対応するとともに、系統電圧の安定化等供給信頼度の一層の向上を図るため、送変電設備についても基幹系統等の一層の強化、拡充が図られる計画となっている。

 このうち、送電設備については、送電ロスの少ない超高圧送電線(18.7~50万V)の整備が進められることとなっているが、特に、主力となる50万Vの送電線の整備が重点的に行われることとなっている。また、これに合わせて50万の変電設備、電力用コンデンサー等の調相設備の整備も進められる計画となっている。

 この結果、昭和63年度末の使用電圧50万Vの架空線亘長は4,167kmに、変電所設備容量は11,744万kVAになるものと見込まれる。(表-4)

表-4 送変電設備増強計画(9電力、沖縄、電源開発)

5.設備投資計画

 以上の計画の推進に必要とされる昭和63年度の設備投資額は、全電気事業者総額で約3兆7,000億円と見込まれている。このうち、9電力会社の設備投資額は、表-5に示すとおり、3兆3,982億円で、昭和62年度実績見込み3兆4,256億円に比しほぼ横ばいとなっており、政府の総合経済対策に対応した供給信頼度向上対策等を中心とした追加投資により、61年度年度以降高い水準で推移している。

表-5 設備投資計画(9電力会社)

2-2 長期電力需給バランス(8月最大)



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