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米国エネルギー省、次期ウラン濃縮法を原子レーザー法に決定


原子力局核燃料課

1. 米国エネルギー省はかねてから省内にプロセス評価委員会(PEB)を設置し、原子レーザー法と遠心分離法との比較評価を行っていたが、本年6月にその報告を踏まえ、3つの要点からなるウラン濃縮新戦略を発表した。

2. 第1は原子レーザー法を有望と判断したことである。米国では1975年に毎時mgオーダの低濃縮ウランの生産に成功するなど、その開発の歴史は古く、1982年のチェックアンドレビューによって、分子レーザー法とプラズマ法をしりぞけ原子レーザー法を新濃縮技術として積極的に開発を進めてきている。今回の米国エネルギー省は原子レーザー法を21世紀の技術とはしながらも遠心分離法やガス拡散法に比較してより高い性能と、より低い生産コストを達成できる、技術的、経済的可能性を有していると判断したものである。技術開発を原子レーザー法に集中することにより今後3ケ年で4~5億ドルを節約できると見込んでいる。

3. 第2はガス拡散工場のうちオークリッジ工場(7,700トンSWU/年)をスタンドバイ(休止状態)としたことである。米国は現在テネシー州オークリッジ、ケンタッキー州、パテユーカ、及びオハイオ州ポーツマスの3ケ所に総計27,300トンSWU/年のガス拡散工場を所有している。このうち2工場を稼動させることで1985年から2000年までの需要に十分対応できることから、電力費の一番大きなオークリッジ工場を休業状態とすることで年間約5千万ドルの節約になると判断したものである。

4. 第3は遠心分離法の完全中止である。遠心分離法工場(GCEP)は1977年に全8棟8,800トンSWU/年の規模で運転開始をめざして着工されたが、その後第2棟まで建屋建設、第1棟の半分までの遠心分離機据え付けまで行い、残りはプロセス評価委員会の報告をまって計画を進めることとなっていた。現在setⅢと呼ばれるものが据え付けられているが、今回原子レーザー法と比較されたものはsetVと呼ばれるsetⅢの約3倍の分離性能をもつ高性能遠心分離機(AGC)である。米国DOEはsetVを用いてGCEPの建設を継続しても、濃縮コストはガス拡散工場と同程度しかならず、GCEPの完成に更に30~50億ドルの追加資金が必要であることを考慮すると中止せざるを得ないと判断したものである。

AGC/AVLISコスト比較

DOEの濃縮役務売上高

5. このように米国DOEはウラン濃縮市場における競争力の回復を目ざすとの観点から戦略を策定したもので、今後、世界のウラン濃縮供給国の技術開発意欲を刺激し一層激しい市場競争が行われるものと予想される。

 このような国際環境下において、我が国の濃縮事業を確立、発展させていくためには、今後とも米国をはじめとする海外の技術開発動向に十分留意しつつ、低コスト化にむけて我が国独自の技術開発を一層推進していくことが必要となっている。


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