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JT−60装置の建設完了とプラズマ初点火


原子力局技術振興課

1. 概要

 JT−60装置は、本体、ガス注入・予備電離装置、トロイダル磁場コイル電源(Tコイル電源)、ボロイダル磁場コイル電源(Pコイル電源)、2次冷却設備、操作用配電設備・非常用電源及び全系制御設備より構成される。

 上記の各設備はそれぞれの設備ごとに、原子力5社に発注され、独立に製作が進められて来た。従ってJT−60における納入試験の形態としては、まず各設備単体の試験から始まり、2設備間結合、全設備結合へと順次組み合わせを複雑にし、また無負荷から軽負荷、実負荷へと負荷レベルを高めるような方法で行われた。これらの試験段階を経て、昭和60年4月3日にJT−60装置が完成し、8日午後3時5分にファーストプラズマの点火に成功した。

2. ファーストプラズマの生成

 JT−60装置の完成に伴い、60年4月1日よりジュール加熱実験の準備を開始した。第1図に示すように4月1日、2日に弱電流パルス放電洗浄(TDC)および実験のシーケンスの起動確認試験を行い、4月3日より5日までTDC放電を行った。この後4月8日再びTDC放電を行った後午後3時5分実験放電シーケンスによるファーストプラズマの点火に成功した。

第1図 実負荷総合機能試験及びファーストプラズマ試験

 ファーストプラズマは変流器コイル電流値18.5KAを真空遮断器(VCB)によって急速遮断することによって得られ、プラズマ電流値は最大150KAに達した。このときの実験条件およびプラズマの主要パラメタを第1表に、またプラズマ電流波形およびプラズマワンターン電圧を第2図に示す。JT−60のファーストプラズマの代表的パラメタについて、先に完成している米国のTFTR、ECのJETなど各国の大型トカマク装置との比較を第2表にまとめた。プラズマ電流値についてはTFTR、JETの2〜3倍程度となっている。

第1表 ファーストプラズマ諸パラメタ値

第2図 ファーストプラズマの電流波形およびワンターン電圧

第2表 各国大型トカマク装置のファーストプラズマパラメタの比較

 なお、本体室壁(2m高)に設けた放射線管理モニターによって検出した放射線強度は、TDC中は約0.1mR/hr以下、ファーストプラズマでは約0.7μR/ショットであった。

 JT−60の運転に係る放射線、火災等に対する安全管理に関しては、「那珂地区安全衛生管理規則」に放射線管理の条項を付け加え、また火災その他の非常事態に対する「那珂地区防災規則」を制定した。さらに、内規として「JT−60安全管理要領」を作成してJT−60の安全な運転の確保に努めている。

3. 今後の予定

 第3図に示すように、4月9日以降6月末まで第1期ジュール加熱実験OH(I)を実施する。当面、弱電流パルス放電洗浄(TDC)によって真空容器内面の清浄化を実施して、トカマクプラズマの実現を図る。これと平行して、計測装置の調整、プラズマ制御機能の充実、ダイバータ付きプラズマの生成などを進め、1MA程度のトカマクプラズマの達成を目指す。この間、計測装置の据付などのため4月15日(月)〜27日(土)の期間実験を休止する。さらに7月初めより、加熱装置の据付などのため半年間、実験を停止する予定である。

第3図 JT−60の実験計画

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