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遠隔技術に関する日米共同研究



動力炉・核燃料開発事業団

 動力炉・核燃料開発事業団は、本年1月15日から約1年間の予定で遠隔技術に関する日米共同研究を米国オークリッジ国立研究所(ORNL:Oak Ridge National Laboratory)内の試験施設を利用して開始した。

 以下、その概要を紹介する。

1. 経緯

 日米高速炉協力協定(昭和44年3月締結)に基づく燃料サイクル分野の日米間の技術協力を推進するため、昭和57年5月、合同調整委員会(JCC)の下に高速炉燃料サイクルワーキンググループ(FBR Fuel Cycle Working Group)が発足した。その際、本ワーキンググループの先行テーマとして①遠隔技術協力と②共同臨界実験が合意された。

 遠隔技術協力については、米国側からエネルギー省(DOE)及びオークリッジ国立研究所が、日本側からは動力炉・核燃料開発事業団が出席した専門家会議を過去4回開催し、この過程で単腕型高性能マニピュレータの性能比較試験をはじめとして以下に示す7項目にわたる協力項目が合意された。

① 高性能マニピュレータの性能比較試験
② マニピュレータ操作室のマンマシンインターフェイスに関する評価研究
③ 両腕型高性能マニピュレータの仕様に関する情報交換
④ 信号伝送技術に関する情報交換
⑤ テレビシステムの耐放射線性研究に関する情報交換
⑥ 核燃料サイクル施設の放射線分布図の交換
⑦ 高品位TVシステムの開発

 これらの協力項目は、高放射性物質を取り扱う核燃料サイクル施設の保守作業に際して、保守性の向上(施設稼働率の向上)及び作業被曝量低減のための重要な要素技術となる。

 今回の共同研究は、上記7項目のうちの①項及び②項の2テーマを実施するものである。

2. 共同研究の内容

 高性能マニピュレータの性能比較試験では、米国側の両腕型マニピュレータ(CRL M-2)、同単腕型マニピュレータ(PaR Model 6000)と日本側の単腕型マニピュレータ(BILARM83A)を使用し、種々の作業モードでその所要時間、エラー数等を測定し、各マニピュレータの操作特性を評価する。

 試験のパラメータとしては、以下の項目などが考えられている。

① 作業の種類
 ・遠隔操作治具の取扱い(例、インパクトレンチ)
 ・部品等の取扱い(例、棒、ボルト)
 ・プロセス機器の取扱い(例、モーター)

② マニピュレータの操作モード
 ・CRL M-2 操作感覚 有(マスター/スレーブ操作)
 ・ 〃 〃 無(  〃  )
 ・BILARM-83A 〃 有(  〃  )
 ・ 〃 〃 無(  〃  )
 ・ 〃 〃 無(ダイヤル操作)
 ・PaR Model-6000 〃 無(  〃  )

③ 作業者の慣れ
 ・作業を連続して実施した場合
 ・ 〃 断続 〃

④ 作業の繰り返し回数

 尚、今回の共同研究に使用するCRL M-2、BILARM-83A、PaR Model-6000の各マニピュレータの特徴を表-1に示す。


表-1 各マニピュレータの特徴


 マニピュレータ操作室のマンマシンインターフェイスに関する評価研究では、日本側から小型高品位TVを提供し、高品位TVを使用して作業を行った場合と、通常のモニターTVを使用して作業を行った場合の作業時間、エラー数等の差を測定し、高品位TVの作業効率向上への効果を評価する。

 今回の共同研究は、動力炉・核燃料開発事業団より2名の専門技術者が参加して実施されている。

 尚、今回の共同研究の成果は、高レベル廃液固化プラント及び高速炉燃料リサイクル試験施設等今後の主要核燃料サイクル施設の設計、運転などに反映される。


日本の単腕型マニピュレーター(BILARM-83A)


米国の単腕型マニピュレーター(PaR-Model 6000)と同型のマニピュレーター


3. 今後の遠隔技術協力

 今回の共同研究以外に、今後日米間で積極的に協力を進めて行く主要な項目として、以下に示すものがある。

① 両腕型高性能マニピュレータの日米共同開発

 昨年7月に開催された遠隔技術専門家会議にて共同開発計画を進めて行くことで基本的合意に達している。

 また、お互いのマニピュレータ仕様を調整する分野として当面、以下の項目が挙げられた。

・マニピュレータ駆動モータ
・ギア材料及びギア潤滑剤
・操作感覚伝達技術など

② 遠隔配管継手の性能評価

 ORNLにある遠隔配管継手の試験装置を利用して、種々の継手の機械的、化学的耐久性を評価することが検討されている。

③ 電子部品の耐放射線性評価

 高性能マニピュレータには、種々の電子部品が使用されるため、この分野に関する情報交換を積極的に進める。

以上


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