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原子力委員会委員長就任に当たって



国務大臣
原子力委員会委員長

岩動 道行

 原子力委員会委員長の就任に当たり、一言御挨拶申し上げます。

 我が国の原子力発電は、昭和38年に日本原子力研究所において最初の発電に成功して以来20年余を経て、今日では、商業用原子力発電は25基、約1828万キロワットの規模に達しました。また、昭和57年度の総発電電力量の約20%を賄うとともに、約70%の高い稼働率を達成するに至り、石油代替エネルギーの中核として、確実に地歩を固めつつあります。さらに、放射線利用も、工業、農業、医療等の分野で幅広く進められております。このように、今や原子力は国民生活や経済活動に欠くべからざるものとなっています。

 第一次石油危機以降10年を経た今日、我が国をとりまくエネルギー情勢は若干の落ちつきをみせておりますが、エネルギー供給の石油依存度が主要先進国中でも依然として高く、しかも輸入石油の多くを中東地域に依存している我が国のエネルギー供給構造はいまだ脆弱なものであります。このため、将来にわたって低廉なエネルギーを安定的に確保するために引き続き石油代替エネルギーの開発を推進することは、国民的課題であります。石油代替エネルギーの中にあって供給安定性、経済性に優れた原子力発電は大量かつ低廉なエネルギー源として最も有望なものであり、安全確保を大前提として立地の円滑化を図るとともに、軽水炉の信頼性、経済性の一層の向上、自主的な核燃料サイクルの確立、新型動力炉の開発等の推進が強く求められております。

 さらに、21世紀における原子力利用の幅を広げるための高温ガス炉、原子力船、核融合の研究開発を進めることも重要であります。

 一方、国際的には、先進国、開発途上国を問わず、国際協力の機運が大いに高まっており、各国から原子力先進国としての我が国に寄せられている期待は極めて大きなものがあります。

 こうした状況のもとで、私といたしましては、我が国の原子力開発利用のなお一層の進展、拡大を図るべく、国民の皆様の理解と協力を得て、当面する課題の解決に取り組んでいく所存でございますので、関係各位におかれましても、引き続きの御努力を願うと同時に、従前と変わらぬ御支援、御協力を賜りますようお願い致します。



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