前頁 | 目次 | 次頁

第6回遠心分離法濃縮施設保障措置プロジェクト(Hexapartite Safeguards Project)全体会合の結果について


原子力安全局
保障措置課

1 期間 昭和57年11月1日~11月5日及び11月8日
2 場所 西独アーヘン市

 オーストリア
3 日本側出席者: 松澤(科技庁)

 萩野谷(三菱金属)

 川本(動燃)

 玉井(動燃)
4 これまでの経緯

(1) 世界の遠心分離法ウラン濃縮施設は、日本及びトロイカ(英国、西独、蘭)が、既に運転中の施設を有し、米国が施設を建設中である他、豪州が施設建設を計画中であるとともに更に、日本及びトロイカは今後の施設の拡大を計画している。

 これらの施設に対し、IAEA保障措置は、日本の人形濃縮施設及びトロイカのアルメロ濃縮施設に対して暫定的な査察を適用しているが、通常査察は未だ適用されていない。

(2) この状況の中で、遠心分離法ウラン濃縮施設に対する通常査察の適用の方法を確立するため、日本、米国、トロイカ、豪州、IAEA及びユーラトムの6者が、参加していわゆるヘキサパータイトセイフガードプロジェクトが、昭和55年11月に発足した。本計画は、当初から約2年間の計画で進められ、来年2月に終了の予定である。

(3) 遠心分離法ウラン濃縮施設は、核不拡散及び商業機密の観点から「機微な技術を有する施設」であり、特に、機微な技術は、遠心分離機室に集中している。一方、当該施設は、核兵器の材料となる高濃縮ウランを生産し得るので、通常の核物質不明量の検知に加えて高濃縮ウランの生産の検知が保障措置適用の重大な目的となっている。

(4) このため、本計画においても、議論の焦点は、機微な情報の保護と有効な保障措置の適用とのバランスをどう図るかという事にあてられ、特に、遠心分離機室に査察官の立入りを認めるか否かが最大の争点となった。

 この論争点に関しては、日本及び西独が査察官の立入りがなくても効果的な保障措置の適用が可能であると主張したのに対し、米国及び豪州が、より効果的かつ容易な査察のために査察官の立入りが必要であるとして意見が対立した。

 なお、英国及び蘭の意見は特にいずれかにも偏したものではなかったが、査察官の立入りも認め得るという姿勢であり、その後西独を含めたトロイカの意見としては、この方向でまとめられた。

(5) この点に関し、第5回全体会合(本年4月)及び第6回全体会合(本年11月)と議論を重ねた結果、以下の三点が満たされることを条件に、「立入り回数を制限した事前通告しない限定的な立入り査察」(いわゆる「限定的な立入り査察」以下、LFUAという。)が、最も適当な方法であることを本計画の結論とすることとなった。

(ⅰ) HSPに於けるすべての参加者による受入れとすべての技術保有国に対する平等な適用
(ⅱ) 査察官の検認活動の性格と範囲に関する明白な定義と記述
(ⅲ) 機微な情報の保護に関する安全保障に関係した問題の解決
5 今回会合の概要
(1) 今回の会合で多くの時間をかけて討議された議題は、

-わが国が提案したLFUA(カスケード室へのLimited Frequency Unanounced Access)を受け入れるための3条件の具体的内容に関すること、及び-IAEAが作成したLFUAペーパー(原案)の内容に関することの2点であった。

(2) いずれの議題についても、国によって事情が異なるため、全体会合よりもむしろ、各議題毎の組合せによる2者会合に多くの時間があてられた。

(3)① 3条件の具体的内容に関する日本の提案は、前回会合の合意内容を変更するものではなく、その内容の一部をより具体化するものであるとの了解のもとに、字句が修正され、今回会合の議長ノートに記録されることになった。

② 3条件の内2つの条件(核兵器保有国施設への保障措置適用の約束、および機密保持手段の構築)は、若干の政治性を含む問題であるためHSPの枠内で実現することには、困難さを伴なうが、関係出席者がそれらの条件成立に努力することが確認されたので、日本は人形ペーパー(人形時パイロットプラントのLFUAに関するペーパー)を全体会合に提出した。

(4)① IAEA作成のLFUAペーパーに関しては、日、米、トロイカそれぞれから不満が表明されたが詳細なつめた議論は行なわれず、単にペーパーの性格が、IAEAのポジションペーパーではなく、HSP全体のペーパーとしてまとめられるべきことが確認された。

② 日本が提案している査察アプローチは、IAEAその他のメンバー国に機会ある毎に説明し理解を得たが、合意されるには至っていない。

③ 米国は、その濃縮施設が、日本やトロイカのものと保障措置上大きな差が存在しないのにもかゝわらず、IAEAに充分に説明できていなかったとして、IAEAペーパーの大幅な書き換えを求め、米施設のみを特別扱いしないよう強く主張した。

(5) 各国メンバーの意見を取り入れ、IAEAペーパーを修正し合意するには、未だ多くの議論が必要であり、そのため、12月13日からDrafting Meetingを開催することになった。

(6) HSPの次回最終回全体会合は、来年1月31日から開催されることになった。

前頁 | 目次 | 次頁