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日米再処理交渉について 調査国際協力課
東海再処理施設の運転、第二再処理工場の建設等に関する日米再処理問題については、昭和52年の日米再処理交渉の結果、同年9月下記(1)~(7)の2年間の当初期間(INFCEの予想期間)についての合意が得られた。 (1) 東海再処理施設を2年間、99トンまで既定の方式(プルトニウムを単体で抽出する方法)で運転する。 (2) 東海再処理施設に付設される予定のプルトニウム転換施設の建設を2年間見合わせる。 (3) 混合抽出法の実験を行い、その結果を核燃料サイクル評価(INFCE)に提供する。 (4) 2年間の運転終了後、上記(3)の実験結果及びINFCEの検討結果に照らして、日米両政府によって混合抽出法が技術的に実用可能であり、かつ効果的であると合意された場合には、東海再処理施設を混合抽出法に改造する。 (5) 新たな再処理施設については、2年間、主要な措置をとることを見合わせる。 (6) 軽水炉へのプルトニウムの商業的利用に関する決定を2年間延期する。 (7) 再処理施設に対する改良保障措置技術の研究開発を行う。 以後、INFCEの期間が延長されたこと等によりこの合意の期限は4度にわたり本年10月末日まで延長されてきた。この過程において
(1)については、昭和56年7月再処理枠を50トン追加し149トンまでとなり
(2)については、昭和55年7月、同転換施設に混合転換方式を採用することで建設開始することとなった。 昭和56年5月、鈴木総理大臣とレーガン大統領の首脳会談において、我が国にとって使用済燃料の再処理が重要であることが、米国側に理解されるとともに、東海再処理施設の運転期間延長、第二再処理工場の建設等の日米再処理問題について早急かつ恒久的な解決を図るべく速やかに協議を開始すべきことが合意された。 その後、同年7月に対外原子力政策についてのレーガン大統領声明が出され、日米首脳会談でうたわれている再処理問題に関する恒久的解決をめざし、日米間で事務レベルでの協議が同年の7月と9月の2度にわたってワシントンで行われた。この事務レベルの協議の結果、前回昭和52年の共同声明・共同決定により相当前進した内容を日米間で合意しえたものの、東海再処理施設の運転期限の問題の決着がつかなかった。 このため、9月17日、中川原子力委員会委員長とマンスフィールド駐日大使との間で会談が持たれた結果、米側の主張する期限はその満了とともに東海再処理施設の運転を中断するとの意図を示すものではなく、この期限内に長期的な取り決めを行うとの趣旨であることが確認され、日米間で合意されることとなった。 その後米国内の所要の手続を経た後、10月30日ワシントンにおいて、日米原子力協定第8条C項に基づく共同決定の署名、再処理に関する日米共同声明の発表、保障措置技術開発に関する書簡の交換が行われた。 今回の合意の主要点は以下の通りである。 (1) 東海再処理施設の運転
従来は期間、再処理量の面で制約が課されていたが、今回の合意では施設の能力(210トン/年)の範囲内で運転できることとなり、また、昭和59年12月末との期限はついているもの、上記のように、これは、運転を中断させる意図ではないことが確認されており、実質的に期間、再処理量の制約が撤廃されたものになっている。 (2) 第二再処理工場の建設
今回の合意により、「主要な措置」をとらないとの従来の制約は、完全に撤廃され、今後は、保障措置の改善点の観点から意見交換を行っていくこととなった。 (3) 東海再処理施設で行う保障措置技術開発については従来TASTEX計画により広範な範囲にわたって行われてきたが、今後は、IAEA保障措置の改善に関し、IAEAを支援する目的で、TASTEXの成果のうち、保障措置の有効性の改善に資すると評価されたものについての追加的作業等を行っていくこととなった。 〔合衆国産の特殊核物質の再処理についての共同決定(仮訳)〕
1981年10月30日に発表された日本国政府とアメリカ合衆国政府との共同声明に述べられた考え方及び国際原子力機関による保障措置の効果的かつ効率的な適用について特に定めている核兵器の不拡散に関する条約に対する日本国の変わらない支持に留意し、
日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、ここに1968年2月26日の原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(改正を含む。)第8条C項に基づき、同協定第11条の規定が、合衆国から受領した燃料資材を含む照射を受けた燃料要素を東海再処理施設において、同施設の設計再処理能力の範囲内で行われる再処理であって、日本国政府及びアメリカ合衆国政府が、本日付けの共同声明第5節第2項にいう、相互に受け入れ得る取り決めの作成作業を完了するまでの間に行われる再処理に、効果的に適用されるとの共同決定を行う。 本日付けの共同声明に言及されている日以前に、東海再処理施設の継続運転の確保のため、前記の共同声明中に述べられている取り決めをもって、この共同決定を包摂又は代替することが各々の政府の意図である。 1981年10月30日
日本国政府のために
大河原良雄
アメリカ合衆国政府のために
リチャード・T・ケネディ
〔共同声明(仮訳)〕
1981年10月30日
Ⅰ 1981年5月8日の共同声明第14項において、鈴木総理大臣とレーガン大統領の述べたところは、次のとおりである。両者は、「…核兵器の拡散防止の死活的重要性にかんがみ、引き続きそのための国際的な努力を推進してゆく必要があることを再確認した。他方、両者は、世界の増大するエネルギー需要に対応するためには、適切な保障措置の下で今後益々原子力の果たすべき役割が拡大されなければならず、日米両国が原子力平和利用の促進のために一層協力すべき特別の責務を有していることにつき意見の一致をみた。この関連において、大統領は、日本にとって再処理が特に重要であるとする総理大臣の見解を支持した。総理大臣と大統領は、これを受けて、東海再処理工場の運転継続及び新たな再処理施設の建設等の懸案事項の早急かつ恒久的な解決を図るために、両国政府が速やかに協議を開始すべきことに意見の一致をみた。」
Ⅱ これを踏まえて、日米両国政府の代表者は、東海再処理施設(以下「東海施設」という。)を1968年2月26日の原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(改正を含む。)(以下「協力協定」という。)に従って運転すること及びその他の相互に関心ある事項に関して討論を行った。 Ⅲ 1. 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、両国のエネルギー安全保障及び経済発展にとっての原子力の平和利用の重要性を認識するとともに、この面で引き続き充分に協力を行う意図を有する。 2. アメリカ合衆国政府は、日本国にとっての再処理の特別の重要性を充分認識し、これとの関連で、日本国にとって東海再処理施設の継続運転及び予定されている新たな再処理施設の建設が重要であることを理解する。 3. 日本国政府は、合衆国は「・・・進んだ原子力計画を有し、かつ核拡散の危険がない諸国における民間の再処理及び高速増殖炉開発を禁止したり、或は抑制したりしない。」との1981年7月16日のレーガン大統領声明に表明されているアメリカ合衆国政府の姿勢を歓迎する。 4. 両国政府は、それぞれの国における原子力の平和利用を促進し、原子力利用の分野で相互に協力し、更に、核爆発物の拡散を防止するに当たり、国際核燃料サイクル評価の結論及び所見を考慮に入れる意図を有する。 5. これとの関連で、アメリカ合衆国政府は、核兵器の不拡散に関する条約に対する変わらない支持及び核爆発物の拡散防止のための種々の国際的努力に対する大きな貢献を含む日本国の確固とした核拡散防止政策を高く評価する。 6. アメリカ合衆国政府は、また、東海施設における保障措置の適用を改善するために日本国が今日まで国際原子力機関と協力しつつ行ってきた特段の努力を評価する。この努力は、再処理施設における保障措置の適用に関して貴重な経験となるものである。 7. 両国政府は、再処理施設において分離されたプルトニウムに対する保障措置の効果的な適用を極めて重視するものである。したがって、両国政府は、IAEA保障措置活動の改善のために、IAEAと協力するとの決意を再確認する。両国政府は更に、それぞれの対IAEA技術支援計画を通じて、相互に、また、他の関係国と今後とも協力してゆく意図を有する。 8. この関連で、日本国政府は、日本国内の再処理施設、プルトニウム転換施設、プルトニウム燃料加工施設及びプルトニウム貯蔵施設が、IAEA保障措置の効果的かつ効率的な適用を容易にするように設計されるよう推奨する用意がある。日本国政府は、この目的を推進するため、IAEAと協力する用意がある。 9. 両国政府は、国際プルトニウム貯蔵システムのような、核爆発物の拡散防止に効果的な制度の設立を目指して努力する意図を有する。 10. 合衆国から受領した燃料資材を含む照射を受けた燃料要素の再処理のための長期的取り決めの作成との関連で、また、保障措置の改善のための共同の努力の一環として、日本国政府は、予定されている新たな再処理施設に関し、アメリカ合衆国政府と適宜意見交換を行う意図を有する。 11. 日本国は、広汎なプルトニウム使用に関連した核拡散の危険を最小限のものに止める必要があることに適切な考慮を払いつつ、軽水炉におけるプルトニウム・リサイクルに関する研究開発活動を今後とも引き続き実施してゆく意図を有する。 Ⅳ 1. 東海施設では、合衆国から受領した燃料資材を含む照射を受けた燃料要素を、同施設の設計上の再処理能力(年間210トンの燃料資材)の範囲内で再処理することが計画されている。 2. 日本国の法令に従って、運転される東海施設の運転のための指針は次の通りである。 A 日本国政府は、別途、書簡で述べるとおり、日本国政府とIAEAとの間の保障措置協定に従い、常時査察を含め、東海施設における保障措置の効果的かつ効率的な適用の機会を今後ともIAEAに充分与える用意がある。更に、実行可能な場合、保障措置の実施を今後とも改善していく用意がある。 B 東海施設において分離されたプルトニウムは、特に日本国の原子力研究開発計画上の要請に照らして実用上最も高いプルトニウム比で、東海村のプルトニウム転換施設において、混合酸化物に混合転換される。日本国は、1981年10月30日の共同決定及び従前の共同決定の対象となった燃料資材から得られた混合酸化物を、日本国の高速増殖炉及び新型転換炉研究開発計画用に使用する意図を有する。 Ⅴ 1. 両国政府は、協力協定に関連するいかなる事項についても、定期的にまたはいずれかの政府の要請により、今後とも引き続き協議を行うべきことを再確認する。 2. 前記の共同声明中で鈴木総理大臣及びレーガン大統領が言及している「恒久的解決」を達成するため、両国政府はできる限り早期に、かつ1984年12月31日以前に、長期的かつ予見可能で信頼性のある基礎の上に、それぞれの国における原子力平和利用を一層促進する態様で協力協定の規定を実施するための相互に受け入れ得る取決めを作成する作業を完了するとの意図を有する。 |
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