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昭和56年度電力施設計画の概要〔抄〕


-石油代替エネルギー供給目標の達成に向けて-

昭和56年4月
資源エネルギー庁

 昭和56年度電力施設計画は、例年どおり3月末に通商産業大臣に届け出がなされた。

 その概要は以下に示すとおりであるが、通産省としては、中・長期の電力需給の安定化のためには、これらの電源の計画的開発が必要であると考えており、今後とも昨年11月、閣議決定により定められた石油代替エネルギー供給目標に沿って、原子力発電を中核とする石油代替電源の開発促進を図っていくこととする。

1. 電力需要及び最大電力の見通し

 今回の施設計画の前提となった今後の電力需要及び最大電力の見通しは、それぞれ昭和65年度について次のとおりである。

(1) 総需要電力量は、昭和54年度の実績5,290億kWhに対し、1.7倍強の9,079億kWh程度になると予想されている。この間の年平均伸び率は5.0%程度となる。

 また、この場合、昭和54年度から昭和65年度までのGNP弾性値は0.96である。

 なお、このうち全電気事業用需要電力量は、昭和54年度の実績4,695億kWhに対し1.7倍強の8,186億kWh程度になると見込まれている。この間の年平均伸び率は5.2%程度となる。

(2) 8月最大電力(全電気事業用ピーク電力)は、今後も民生用需要がルーム・クーラーの普及拡大等冷房空調需要を中心に引き続き堅調な伸びを示すと見られること、さらに産業用にあたっては、鉄鋼、アルミ等連続操業業種のウェイト減少、機械等昼間操業業種のウェイト増加など産業構造の変化が予想されること等によりピーク需要は尖鋭化を続けることが予想される。このため、年負荷率は引き続き低下していくことが見込まれ、ピークシフト対策を進推したとしても、昭和54年度の9,136万kWに対し、1億7,574万kW程度(1.9倍強)になることが予想される。これは年平均伸び率6.1%程度である。(表-1参照)

表-1 需要見通し

2. 電源開発計画と電力需要バランス

 電力の供給は、その性格上、常時需給がバランスするよう行われる必要があることから、電力各社が供給責任を果たしていくためには、前記の想定最大電力需要に対し、さらに一定の予備力を保有していなければならない。適正予備率としては最大電力需要の8~10%が必要であり、各社は電源開発計画策定に当たり、これを目標としている。

(1) 今回届け出られた各社の電源開発計画のうち、既に電源開発調整審議会(電調審)で決定された電源のみでは、表-2(略)に示すとおり、昭和60年度において、全国の供給予備率は7.6%と適正水準を下回り、昭和61年度、昭和62年度ではそれぞれ5.9%、1.3%となり、一部の地域を除き、全国的に電力需給がひっ迫するおそれがある。

(2) これに対し、各社はこれらの電力ひっ迫に対処するため、電源開発計画を有しているが、届け出られた昭和56年度の電力施設計画によると、昭和56年度には61基1,194万kW(水力97万kW、火力491万kW、原子力606万kW)、昭和57年度には64基1,961万kW(水力57万kW、火力840万kW、原子力1,064万kW)の電源を電調審に上程することを計画している(表-3)。

 なお、現在建設中の電源(77基2,987万kW)についてはその建設促進を図るとともに、電調審通過後未着工の地点(着工準備中地点)(81基2,728万kW)についても、早期着工を計画している(表-3参照)。

表-3 電源開発計画(全電気事業)

(3) このような電源開発計画及び昭和58年度以降着手が予定されている電源開発計画が計画通り進んだ場合は、表-4(略)に示すように昭和65年度に至るまで適正予備率が確保され、電力の安定供給が確保されるものと考えられる。

 しかしながら、これらの諸計画に遅れが生じた場合、将来の需要動向いかんによっては電力需給に重大な支障が生ずることを覚悟しなければならない。

 このため昭和65年度以降に計画されている電源についても、将来の電力の安定供給を図るため、できるだけ早く立地を進めるよう努力していくことがきわめて重要と考えられる。

3. 原子力発電を中心とする石油代替電源の開発促進

 本計画が実施された場合の昭和65年度末の電源構成は表-5に示すとおりである。

 通産省としては、昭和54年12月の電気事業審議会需給部会中間報告に示された目標、さらには昨年11月に閣議決定により定められた石油代替エネルギー供給目標に沿って、電源多様化を実現すべく電気事業者を指導しているところであるが、本計画は基本的にはこれらに沿ったものであるといえる。

 今後のこの計画の実現のため、特に原子力発電を中心とする石油代替電源の開発推進に当たっては、国民の理解と協力を得ながら、官民の最大限の努力が傾注されなければならない。

表-5 年度末電源構成

 なお、昭和56年度施設計画の主な特徴は以下の通りである。

(1) 原子力発電の積極的推進

 ① 供給目標(5,100~5,300万kW)の達成

 脱石油電源の中核として供給目標を達成すべく官民あげて最大限の努力を傾注することとしており、電気事業用の昭和65年度末設備として5,092万kWの計画となっている。

(注) 自家用として現在稼動中のATR原型炉(ふげん)の16.5万kW、さらには計画が予定されているFBR原型炉(もんじゅ)の30万kWを含めると、供給目標の下限である5,100万kWを上回ることになる。

 ② 電調審への早期上程

 昭和55年度末の第84回電調審で2年3ヶ月ぶりに3基302万kWが上程されたが、昭和56年度には7基606万kW、昭和57年度には10基約1,064万Kwの上程が計画されている。

(2) 石炭火力の計画増

 原子力発電に次ぐ石油代替電源として各電気事業者とも積極的に新規の開発計画を打ち出すとともに、石油からの転換を進める等その開発推進に努めることとしており、現在(昭和55年度末)の39基526万kWから、昭和60年度末には1,250万kWと昭和54年12月の電気事業審議会の需給部会の目標である1,000万kWを、さらに昭和65年度末には2,956万kWと昨年11月の供給目標の2,300万kWを大幅に上回る計画となっている。

図-1 電源種別発電電力量構成比

(3) 石油火力依存度の低減

 以上の結果、電気事業における全発電電力量に占める石油火力の割合は、昭和55年度の約45%から昭和60年度は約39%に、昭和65年度には約22%にも低減することが予想され、脱石油化が加速的に進むことになる。(図-1参照)  (以下略)


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