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新型転換炉「ふげん」発電所冷却系配管の損傷原因と補修対策等について


昭和56年2月9日
原子力安全局

1. 損傷原因について

 今回の「ふげん」の冷却系配管の損傷は各種の調査結果から、次に示すような3条件が重なったときに発生しやすい応力腐食割れであることが判明した。

 材料 SUS304等のように炭素含有量が比較的多く、溶接による熱影響をうけ鋭敏化されるような材料が用いられていること。
 環境 高温水であって滞留等により、溶存酸素濃度等が高くなる場所であること。
 応力 配管の溶接熱影響部等で、ある値以上の引張応力が働くような状態にあること。(溶接残留応力、熱応力、内圧による応力等)

2. 補修対策等について
(1) 配管材料の変更を行う系統

 動燃事業団は上記、A、B、Cの3条件が重なり、応力腐食割れの発生しやすいと考えられる非常用炉心冷却系(高圧注水系、低圧注水系)、余熱除去系の配管について検査を実施したところ、各配管に応力腐食割れが認められたので、これらの配管をすべて応力腐食割れの起こりにくい原子力用SUS316に取りかえることとしている。

 また、再循環系ドレン・ベント・計装配管については、管口径が小さく応力腐食割れの可能性は比較的少ないが、万一将来補修の必要性が生じた場合には、その都度燃料を炉外へ取り出す必要が生じるので、この際当該部分をSUS316Lに取りかえることとしている。

 更に、これらの系統については、配管材料を取りかえた後、超音波探傷試験(UT)を主体とした供用期間中検査(ISI)計画を作成し、これに従い健全性を確認していくこととしている。

(2) 応力条件の改善等を行う系統

 上記A、B、Cの3条件のうち、配管内に流動があり、Bの条件にふれにくいと考えられる再循環系(下降管、吐出管、マニホールド)、炉浄化系、主蒸気系及び給水系については、応力腐食割れ発生の可能性は少ないと考えられるが、今後の軽水炉における対策の動向等も勘案し、残留応力の改善措置等をとるとともに、今回停止期間中も含め、長期的なISI計画において入念な検査を実施することとしている。

(3) 応力腐食割れ対策が既にとられている系統
① 材料に低炭素ステンレス鋼、炭化物安定化ステンレス鋼又は炭素鋼が用いられている入口管ドレン管、破損燃料検出系配管、隔離冷却系配管、主蒸気系配管の一部

② 炭素含有量の少ない特殊なSUS304を用い、溶接入熱管理を特に入念に行っており、かつ、配管内に流動があって、さらに比較的応力が高い箇所については、固溶体化処理又は水冷溶接により対策がとられている入口管、上昇管については応力腐食割れに対する措置が既にとられているものと考えるが、なお念のため特に②に関し今回停止期間中にUTをとり入れる等、改善したISI計画に基づいて健全性を確認していくこととしている。

(4) 動燃事業団が「ふげん」冷却系配管の損傷対策として講ずることとしている上記(1)~(3)の措置は妥当なものと判断する。

 なお、補修部分の溶接、残留応力改善等の実施については、慎重を要するので、今後当該工事の方法が十分なものであることを確認することとする。

3. 今後の関連研究開発の推進等について

 「ふげん」の安全性を長期的に更に向上させるため、今後とも軽水炉における情報を収集把握しつつ、小口径配管及び接近困難箇所に対する非破壊検査技術の応用、配管溶接部に対する応力・環境条件の改善等につき研究開発を鋭意推進するとともに、これらの成果を「ふげん」の応力腐食割れ対策に適用するよう指導することとする。

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