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新しい電子加速器の設置について


日本原子力研究所高崎研究所

更新1号加速器

 新1号加速器は、200万電子ボルト・30ミリアンペアと出力性能がすぐれているばかりでなく、新しい照射技術に対応するため、垂直方向と水平方向との2方向のビームがとり出せるデュアルビーム方式の電子加速器という、今までに例のない方式を採用している。メーカーは日新ハイボルテージ社で、主要出力性能は次のとおりである。

 加速電圧:50万~200万ボルト連続可変
 電子線電流:0.1~30ミリアンペア連続可変
 電子線走査巾:垂直方向120cm、水平方向60cm

 この新しい加速器を収納する建家は55年8月末に竣工し、3階建高さ17m、建築面積995㎡、延床面積1,922㎡である。加速器本体は2階に加速器室に設置され、その隣には水平照射室があり、直下の1階には垂直照射室がある。各照射室は2m厚の遮蔽壁(普通コンクリート)で区切られており、いずれも西側遮蔽壁に隣接して照射実験室が配置されている。さらに、水平照射室の真上の3階には、照射用の実験装置を設置するための照射機械室が配置され、各照射室の東側には作業室をはさんで制御室、管理室及び4つの実験室等が配置されている。

利用計画

 本加速器を利用して、今後高崎研究所で種々の研究開発が進められるが、その主なものとしては次の研究が予定されている。

(1) 電子線による排煙処理法の研究
(2) オゾンと電子線の併用による廃水処理法の研究
(3) 汚泥のコンポスト化のための殺菌処理
(4) セルロース廃資源の糖化発酵のための電子線処理
(5) 電池用隔膜等に使用するイオン交換膜の製造

経緯

 日本原子力研究所高崎研究所では、高分子材料の開発、環境保全、食品照射等の分野への放射線利用技術の研究開発を進めており、これらの研究のための重要な照射施設として、コバルト60線源を用いたガンマー線照射施設と、電子加速器による電子線照射施設とがある。このうち電子加速器については、従来1号加速器及び2号加速器が稼動していた。

 しかしこれらの加速器は、いずれも老朽化してきた上、これらを設置した昭和40年頃に比べてその後の電子加速器の出力性能の進歩は著しく、高崎研究所の新しい研究開発を進めるためには、これらの加速器の更新をはかる必要が生じた。このため、種々検討の結果、昭和53年にまず2号加速器を更新し、さらに今回1号加速器を更新する運びになったものである。

現在までの経過概要

55.8.30 建家完成

10.11 加速器工場検査完了

10.17 据付工事開始

12.22 納入(摺付調整)完了
56.1.9 納入時検査完了


 線量測定、運転条件設定等の作業の後

2.16 照射運転開始予定

電子加速器とは

 気体分子と衝突させないように真空にした状態の中で高電圧を働かせることにより電子を高速度に加速することができる。

 こうした方法で加速した電子の流れを電子線といい、電子線はβ線と同じ性質をもった放射線である。またこうして電子線を発生させる装置のことを電子加速器という。

 電子加速器は放射線による加工、処理用として、電線被覆材の耐熱化や、熱収縮フィルムの製造プロセスに使われている。

更新1号加速器棟 棟内配置

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