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新型動力炉開発懇談会報告書 昭和54年3月30日
原子力委員会
新型動力炉懇談会
1.まえがき
i)我が国の長期的な動力炉開発の進め方については、昭和51年8月に新型動力炉開発専門部会の検討結果が報告されている。 同報告では、当面の原子力発電の担い手として軽水炉の定着化を進め、長期的にはウラン資源を効率的に利用できる高速増殖炉を活用することとし、その開発を進めることを基本としている。 官民共同プロジェクトとして自主技術により開発が進められている新型転換炉については、高速増殖炉の実用化の進展状況によっては特に重要な意義を有すると考えられるので、当面原型炉の運転等により技術的諸性能の確認等に努力を傾注するとともに実証炉の概念設計及びこれに必要な研究開発を進め技術の蓄積を図っていくものとした。 CANDU炉についてはウラン資源の有効利用及び供給保証への期待等から我が国においても関心があるが、炉の安全性、安全審査に必要なデータ等、導入に当たって、なお我が国として研究開発を要する面も多く、その進展を考慮しつつ、新型転換炉の開発との関連性をも含めて、なお十分に検討する必要があるとされた。 ii)同専門部会の報告以来ほぼ2年を経過し、核燃料サイクルをめぐる国際環境の変化、新型転換炉及びCANDU炉に関する研究開発及び調査の進展等が見られたので、軽水炉から高速増殖炉への基本路線を補完する発電用原子炉について今後の進め方を検討する目的で、昭和53年4月に本懇談会が設置され検討が進められてきたものである。 iii)新型転換炉とCANDU炉はともに重水炉とはいえ、構造及び性能を異にし、特に新型転換炉が軽水炉の使用済燃料中のプルトニウムを主として活用する炉であるのに対しCANDU炉は天然ウランを利用する炉であり、核燃料の利用の面での違いがある。 また新型転換炉が自主技術で開発された原型炉段階の炉であるのに対し、CANDU炉はカナダでは既に実用化されている炉であり、開発段階と経緯も異なっている。 従って、本懇談会においては両炉の優劣を比較検討するというのではなく、総合的な原子力発電システムの中で各々の炉が果し得る役割及び問題点について検討するという観点に立って審議を進めてきた。 なお、CANDU炉に関して、カナダが我が国の主要な天然ウラン供給国の1つであることからくる資源外交をめぐる問題については、別途更に検討することが望まれる。 2 核燃料サイクル上の評価
(1)核燃料サイクルの長期的展望
i)我が国のエネルギー供給の安定化と自立化の実現のために新しいエネルギー源についての技術開発が進められているが、現実的にその担い手としては、原子力発電に期待するところが大きく、長期的には原子力発電への依存度は高まる方向にある。総合エネルギー調査会長期エネルギー需給暫定見通しにおいて、長期の原子力発電規模の見通しとして「対策促進ケース」では1985年3,300万kW、1990年6,000万kW、「対策現状維持ケース」では1985年2,600万kW程度を見込んでいる。核燃料サイクルの展望に当たっては、更に長期について2,000年には1億kW乃至1億5,000万kW、2025年には2億2,500万kW乃至3億5,000万kW程度の原子力発電規模を考慮して検討を行った。 ii)軽水炉-高速増殖炉の基本路線において軽水炉でのウランリサイクルが支障なく進められ、かつ、2,000年には高速増殖炉が実用化されるという極めて順調なケースで、原子力発電規模が上記の下限値の場合でも2025年までの天然ウラン累積所要量は約40万トンと計算されるが、この量は現在国際的に推定されている世界のウラン資源量から見て決して容易に確保できる量ではない。 天然ウラン所要量に影響を及ぼす要因は多々あるが、特に高速増殖炉の実用化時期による影響が大きく、また、2,000年までに高速増殖炉が実用化されるということについて的確な見通しが得られる段階にはなく、その遅れが懸念されるところであり、高速増殖炉の開発の促進には多大の努力が必要とされるところであるので、軽水炉から高速増殖炉への転換を進める基本路線の開発に一層精力的に取り組むことが必要である。 iii)ウラン濃縮については、6,000万kW程度の発電規模の維持に必要な量は既に米国等との契約により一応確保されており、また我が国の自主技術によるウラン濃縮技術の開発も順調に進められている。 また、再処理については、当面東海再処理施設によるほかは海外の再処理工場に依存することになるが、長期的には国内における再処理体制の確立のために再処理工場建設の準備が進められている。 しかし、ウラン濃縮、再処理及びプルトニウムの軽水炉での利用等核燃料サイクルの各分野においては、立地等国内問題による制約に加えて、近時核不拡散政策との関係から国際的制約が増大する傾向にある。二国間の問題にとどまらず、多国間においても現在INFCEにおいて核不拡散との両立を目指す核燃料サイクル評価作業が進められている。これらの動きの中から将来の核燃料サイクルに関する種々の構想が生まれてくるものと見られる。このような動向に対して我が国としては核燃料サイクルに関する自主性の確保に配慮しつつ弾力的な対応が必要となることが予想される。 (2)核燃料サイクル上の新型転換炉の役割
i)新型転換炉は天然ウランにプルトニウムを富化した燃料を使用することを主たる目的としたものであり、高速増殖炉の実用化が遅れた場合には軽水炉の使用済燃料から回収されるプルトニウムを有効活用することにより、天然ウラン所要量の増大を抑制するとともにウラン濃縮分離作業量を軽減することに有効な炉である。 なお、新型転換炉はプルトニウムの燃焼率が高いので、高速増殖炉でプルトニウムが利用されるまでの間においてプルトニウムの炉外の蓄積量を少なく保持できるという利点もある。 ii)また、新型転換炉の開発により、プルトニウム燃料を取扱う技術が我が国に定着され、この面における高速増殖炉の核燃料サイクルの整備を促進することに寄与できる。 iii)更に新型転換炉は微濃縮ウランを核燃料として運転することが可能であり、その場合でも天然ウラン所要量は軽水炉より少ないことが期待される。従って種々の核燃料サイクルのタイプに対応しつつ、天然ウラン所要量を軽減できるという特性が期待される。 iv)これらを併せ考えると、早期に実用化されるならば、新型転換炉は核燃料サイクル上有効な役割を果し得ると期待される。 (3)核燃料サイクル上のCANDU炉の役割
i)現在建設、運転中のCANDU炉はウラン濃縮を必要とせず、しかも天然ウラン所要量の点ではワンススルーで使用した場合、軽水炉をワンススルーで使用した場合に比し約2割少なく、かつ、軽水炉においてウランリサイクルする場合に対しても、同程度になるという特長を持っている。 ii)また、CANDU炉はプルトニウムへの転換比が高いので、使用済燃料中のプルトニウムを、新型転換炉の燃料として、あるいは高速増殖炉の初期装荷燃料として活用すれば、天然ウラン所要量の節減に寄与できる。 iii)従って、CANDU炉はカナダではワンススルーの炉として使用されているが、CANDU炉を我が国において発電炉として活用していく場合には天然ウラン所要量節減の観点からも、その使用済燃料を再処理してプルトニウムを活用することが必要である。 この場合、CANDU炉の使用済燃料の量は軽水炉の場合の約4倍と多いことに留意しなければならない。 iv)なお、CANDU炉を我が国において発電炉として活用することにより、我が国の主要な天然ウラン供給国の1つであるカナダからの天然ウランの確保が円滑に行われることへの期待が持たれているが、具体的保証については今のところ定かではない。 v)これらを併せ考えると、CANDU炉については、我が国の環境、風土に適合するように改造された場合において、所期の性能が得られるとすれば、軽水炉に比し再処理量が増大するというマイナス面はあるが、濃縮作業量及び天然ウラン所要量の低減が期待される。将来の天然ウラン需給、高速増殖炉の実用化時期等核燃料サイクル上の不確定要因もあり、その状況によっては将来において、特に新型転換炉と併用する場合において、有効な役割を果す可能性があると期待される。 vi)なお一般的に核不拡散の観点から核燃料サイクルについては国際的規制が厳しくなる方向にあり、自主開発炉でも核燃料、重水等を外国に依存すれば国際的規制の影響を受けるが、CANDU炉については日加原子力協定により、同炉で使用した燃料について原産地の如何にかかわらず各種の制約が生ずることに留意すべきである。 3 技術及び経済性の評価
(1)新型転換炉
i)新型転換炉は昭和42年に核燃料の安定供給と有効利用を図り、かつ原子力発電の有利性を最高度に発揮せしめるための適切な動力炉として、高速増殖炉とともに自主的に開発することが決定され、官民共同のナショナルプロジェクトとして動力炉・核燃料開発事業団において開発が進められてきた。 原型炉の開発に当たっては、安全性については勿論のこと、炉物理、伝熱流動、構造機器、燃料材料、設計法等広い分野において10年に及ぶ研究開発が重ねられ“ノウ・ハウ”は確実に我が国に蓄積されている。 ii)自主技術による開発は、軽水炉の導入の例に見られるように発電炉を定着化していくうえにおいて国内における技術の蓄積が重要であること、産業基盤の高度化と先端技術水準の向上に寄与すること、近時原子力分野においては自主技術の保持が国際場裡における国の立場を強めるうえで重要になっていることなどの面から高く評価される必要がある。 新型転換炉開発計画は我が国における初の自主技術による動力炉開発のナショナルプロジェクトの1つであり、その帰すうが今後における我が国の原子力分野における自主技術による開発プロジェクトの推進や国産技術の育成の面に与える影響が大きいことに留意すべきである。 iii)新型転換炉開発の第1段階である原型炉は順調に試運転を続け、本年3月に本格運転に入ったところである。 第2段階として予定されている実証炉においては、重要な機器システムについて原型炉の設計及び研究開発の成果を活用することとしており、基本的な技術上の問題は少ないと考えられるが、原型炉から実証炉へのスケールアップに伴う技術上の問題、安全確保に関連して提案されている新しい設計等については十分検討する必要がある。 なお、新型転換炉は良好な負荷追従特性を有することが期待されるので、今後の技術開発によりこの特長が活かせるよう配慮することが必要である。 iv)実証炉の建設を決定するに当たっては、経済性及び運転保守性等について具体的評価を行い、実用化の見通しを明確にすることが必要であり、このため詳細な設計を進める必要がある。この場合、将来のユーザーである電気事業者の意見を積極的に反映することが、実用化を図って行くうえで必要である。また、信頼性の評価については原型炉の運転実績が重要な意味を持つので、その着実な運転実績を積み重ねることが必要である。 なお、新型転換炉については我が国の軽水炉を対象とした諸基準に適合させつつ開発を進めてきたが、新型転換炉特有の事項については、今後その基準について検討することが望まれる。 v)経済性については、現在未だ実証炉の設計が固まっていないので、その経済性を十分評価できる状態ではないが、実用化段階において軽水炉と競合し得る発電原価を実現することを目標として開発が進められており、設計の合理化及び大型化等により、今後実証炉から実用炉へと段階が進むに従って建設費の低減がなされることが期待される。 今後、実証炉の詳細な設計を進め、炉の建設費について客観的に確度の高い見通しを明らかにするとともに、核燃料サイクル費についても具体的検討を行う必要がある。 (2)CANDU炉
i)CANDU炉は現在世界で12基合計593万kWの発電所が運動中であり、カナダにおいてはピカリング発電所等で高い設備利用率を達成している。これまでの建設、運転中にいくつかの技術上の問題点が発見されたが、所要の対策が講じられている。また、負荷調整を予定したCANDU炉発電所の建設に既に着手している。 ii)しかし、我が国での経験はなく、今後もし我が国に導入する場合には、我が国の環境、風土に適合させる必要があり、特に日本における軽水炉の設計思想とカナダにおけるCANDU炉の設計思想とでは、若干の違いがあるので、我が国の安全評価の考え方に適合させる必要がある。このため施設の一部に改造が必要とされ、現在電源開発㈱においてその検討が行われている。この改造による性能への影響について慎重に検討して行く必要がある。 なお、我が国の原子炉設備に関する諸基準は、主として軽水炉を対象として定められており、軽水炉特有の規定を除けばCANDU炉に対しても適用すべきであるが、CANDU炉特有の事項についてはこれに適する基準の検討が必要となろう。 iii)水平圧力管等CANDU炉特有の構造に起因する技術的事項の中には、安全上の観点から更に詳細な検討を必要とするものがあり、今後具体的な設計を通じて、詳細な解析または確証試験によって、これらの点を明らかにして行く必要がある。 iv)日本向けに改造された場合のCANDU炉の詳細な技術評価のためには、現在までカナダから入手した技術情報だけでは十分とは言えず、今後、カナダから入手される技術情報加何によるが、事故評価、耐震設計等について設置者の立場から行わなければならない研究課題とともに、国自ら実施すべき研究課題も相当程度生ずるものと考えられる。 これに関連して、現在資源エネルギー庁及び電源開発㈱において各種確証試験が実施または計画されている。 更に将来、国内にその技術を定着させ、機器の信頼性向上を図る等の観点からは、新たな研究課題が生ずるものと予想される。 v)カナダにおいては、CANDU炉は発電原価において軽水炉と競合できると評価されているが、我が国において発電炉として活用する場合のCANDU炉の経済性については、日本向けの改造に伴う建設費の増加及び環境、風土の違いによる影響のほかに、使用済燃料を再処理する場合の核燃料サイクル費への影響をも考慮する必要がある。 確度の高い経済性評価を行うためには、日本向けに改造された場合のCANDU炉の詳細な設計がなされる必要がある。 vi)なお、CANDU炉技術を導入する場合、日加原子力協定の解釈によっては、自主技術により開発の進められている新型転換炉に制約が及ぶおそれがあり、この点に留意し、事前に政府においてこのようなおそれがないよう措置する必要がある。 4 炉型多様化に伴う問題
(1)研究開発資金及び技術者の確保
i)我が国においては、現在軽水炉の定着化を進めるとともに、新型動力炉、ウラン濃縮、再処理、放射性廃棄物処理処分等原子力の広い分野において精力的に研究開発を続けているところであり、今後とも長期にわたって多くの資金と技術者が必要とされる。 今日我が国の経済は高度成長から安定成長期に移行しつつあることでもあり、原子力研究開発に投入する資金及び技術者の配分については、費用対効果の面から優先度を十分に考慮することが原子力政策の重要な課題である。 炉型多様化に伴う研究開発資金の増大が、原子力研究開発全体の投資計画に影響を及ぼすおそれがあり、これに対する慎重な配慮が必要である。 ii)今後、電気事業者においては、原子力発電規模の増大に伴い基本路線による場合でも、技術者の確保が大きな問題となることが予想されているが、炉の種類の増加は、炉の運転管理体制の違い等により量的のみならず質的にも、この困難性を更に拡大するおそれもある。従って炉型多様化が行われる場合には、更に長期的展望のもとに計画的に人材の養成を図る一方、発電ユニット規模の増大や自動化の推進を図るなどの努力が必要である。 iii)原子力機器製造業者においては、生産設備面よりも技術者の確保が問題となるので、炉型多様化に当たっては長期展望のもとに、計画的に人員の増強を進めることが必要である。 (2)製造技術の確立
i)重水生産
重水炉を我が国の発電炉に組み入れる場合には重水の確保が重要な課題となる。現在カナダには生産余力があり当面輸入が可能であるとしても、重水の長期にわたる海外依存は重水の安定確保の点で好ましくなく、長期的には国産化が必要である。 重水生産技術としてはアンモニア・水素交換法が確立されているが、この方法では生産規模に制約があり、長期的には大量生産の可能な水・水素交換法が有望な技術と考えられる。水・水素交換法は現在開発途上の技術であり、実用化のためには更に触媒を中心とした研究開発を進めることが必要である。 ii)新型転換炉用燃料製造
新型転換炉ではプルトニウムとウランの混合酸化物燃料を使用するため、実用化に当たっては商業的規模における製造技術を確立する必要がある。このため動力炉・核燃料開発事業団では大量生産用施設の設計研究を進めており、今後従業員の被曝低減化及び加工費の低廉化の観点から、自動化及び遠隔操作技術の活用、製造単位の最適化並びに工程の合理化等の点について、研究開発を推進する必要がある。 更に、長期的には民間における生産体制を確立するため、将来の高速増殖炉燃料の生産との関係を考慮しつつ、具体的方策について検討する必要があろう。 iii)CANDU炉関連技術
CANDU炉燃料及びカランドリア管、圧力管等特殊材料の一部については当面輸入の方が経済的であるが、その国産化については比較的容易であると考えられる。 なお、CANDU炉を国産化する場合には、国内原子炉製造業者における技術導入の進め方について、技術提携に係わる検討課題があることに留意する必要がある。 CANDU炉の使用済燃料の再処理については、現在実用化されている軽水炉使用済燃料用再処理と同様、ピューレックス法で再処理することが可能であり、軽水炉使用済燃料より燃焼度及びプルトニウム濃度が低い等の点から、技術的問題はむしろ少ない。 CANDU炉は、プルトニウム生成量が軽水炉の約2倍であるというメリットはある反面、使用済燃料の量が軽水炉に較べて多量であり、かつ軽水炉の場合と異なり減損ウラン中のウラン235の含有率が低い点から、専用施設による再処理費用の低減の可能性はあるが、経済性の面では軽水炉より負担が大きくなると見られる。 5 結び
(1)動力炉開発の基本路線と補充の意義
i)近来ますます混迷を深める世界のエネルギー情勢の中で、我が国にとって最も重要な代替エネルギー源である原子力発電の着実な発展に期待することろは極めて大きい。この期待に応えるためには、我が国動力炉開発の基本路線として、すみやかに軽水炉の定着化を図るとともに、高速増殖炉の計画的開発を積極的に進める必要がある。 しかしながら一方、ウラン資源の見通し、高速増殖炉の実用時期、核燃料サイクルをめぐる国際情勢など、現状ではなお不確定要因が多いことも事実である。従って基本路線の一層の強化を図りつつも、種々の情勢に弾力的に対応しうるよう基本路線を補完する路線を相応の努力によって準備しておくことが、この際、国のエネルギー・セキュリティ上有意義と考えられる。 ii)補完炉としては、天然ウラン節約への寄与及び基本路線との組合せからみて、国の動力炉開発計画に基づき過去10年余にわたり自主開発が着々と進められている新型転換炉のほか、カナダにおいて実用に供され、耐震性等の面で我が国の環境、風土に適合するよう改造を施せば、我が国においても商業的に利用可能といわれているCANDU炉がある。 これら2つの炉は、同じ重水炉系であっても、将来我が国の核燃料サイクル上果たしうべき役割には差異があり、それぞれに特色を有し、また状況によっては、両者の組合せ利用も予想されることは、「2 核燃料サイクル上の評価」の項で述べたとおりである。 iii)これらのうち、新型転換炉については、特に高速増殖炉の実用化が遅れた場合にその投入効果が大きく、軽水炉の使用済燃料から生ずるプルトニウムを有効に利用しうるなど早期に適切に実用化されるならば、自主技術開発による効果のみならず、我が国核開発サイクル確立の要請に応えうるものとして高く評価される。また利用可能燃料についても弾力性に富み、原型炉の開発によって、既に相当の技術的経験及び知識が国内に蓄積されている。 他方、CANDU炉は、濃縮を必要とせずそれ自体の燃料特性による天然ウランの節減効果があるほか、プルトニウムの生成量が多いので、将来、ウラン需給を逼迫するようなことがあれば、そのプルトニウムを活用しうるなどの面で効果が期待できる。 iv)しかしながら、基本路線の推進及び核燃料サイクル関連施設の開発にも、多大の努力が必要とされるところであり、安定成長下における投資効率の面から、所要資金及び人材の確保が重大な問題となっている状況なので、いたずらに路線を複雑化するのは望ましくなく、慎重に対処すべきである。従って今後とるべき戦略については、内外の情勢を踏まえ、適時検討を加えつつ、適切な対策を講じていく心構えが肝要である。 v)これらの諸点を勘案して評価検討が行われてきたが、いずれの炉型についても、我が国の発電体系への本格的組入れにつき技術的及び経済的面から的確に判断するには、未だ必要な情報、資料が十分に得られているとはいえず、また将来求められる補完炉の役割を具体的に規定するには、現時点は適切な時期とはいい難い。 従って、当面の方策として以下のごとく対処するのが適当と考える。 (2)当面の方策について
i)新型転換炉については、その実用時期が遅れるならば投入効果が減少するおそれがあるので、原型炉につづく実証炉の建設決定を早期に可能とするよう努めるべきであり、このため当面、次の方策を講ずる必要がある。 すなわち、動力炉・核燃料開発事業団は、電気事業者等の協力のもとに、実証炉の詳細設計を早急に進め、かつ、必要な研究開発を実施し、その技術的経済的資料を整備するほか、実用炉の建設費及び関連核燃料サイクル費を含めた経済性見通しについて、より確度の高い情報、資料の整備に努めるとともに、原型炉の運転を着実に行い、信頼性評価に必要な運転保守関係データの集積を図るものとする。 これらに並行して、関係者協議のうえ実証炉の建設主体についても早期に確定すべきである。 ii)CANDU炉については、我が国における建設を想定した場合の技術的経済的評価を詳細に行うことを第一とし、併せて我が国の自主開発路線に重大な影響を及ぼさないことを確認すべきである。このため当面、次の方策を講ずる必要がある。 すなわち、電源開発(株)は、日本向けCANDU炉の技術的経済的評価のための設計を関係者の協力のもとに行い、我が国の安全性評価上からみた技術的問題を解明し、その経済性見通しを明らかにするとともに、我が国の環境、風土への適合性を確認するために必要な各種確証試験を実施するほか、導入に伴う負担の明確化を図るものとする。 この場合、カナダからの情報、資料の入手に関連して、日加原子力協定による制約が新型転換炉の自主開発に支障を及ぼさないよう事前に十分な措置を講ずる必要がある。 iii)その後の進め方については、上記の諸方策を推進することにより必要な情報、資料が得られ次第、それぞれ所要のチェック・アンド・レビューを行い、新型転換炉に関しては、実証炉の建設着手及び実用化のための方策を、またCANDU炉に関しては、その試験的導入について、最終的に決定すべきものと考える。 新型動力炉開発懇談会構成員
新型動力炉開発懇談会開催状況
新型動力炉開発懇談会総括ワーキンググループ構成員
総括ワーキンググループ開催状況
新型動力炉開発懇談会技術検討ワーキンググループ構成員
技術検討ワーキンググループ開催状況
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