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発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針について


昭和53年9月29日
原子力委員会

 当委員会は、昭和53年9月21日付けをもって原子炉安全技術専門部会から「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」について報告を受けた。

 当委員会は、同報告書の内容を検討した結果、次のとおり「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」を定める。


発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針

Ⅰ 目的

 本指針は、発電用軽水型原子炉施設の平常運転時において、環境に放出される気体廃棄物及び液体廃棄物中の放射性物質の放射能量を測定するための標準的な方法を定めたものである。

 本指針で定めた測定方法は、現在における測定技術と経験に基づいたものであるが、測定技術の進展に応じて適宜見直されるべきものである。

 また、本指針に定めた方法以外の方法を用いて測定する場合であっても、十分な根拠があれば、その方法は認められるものである。

 なお、本指針は発電用軽水型原子炉施設に適用されるものとしているが、他の原子炉施設における測定対象核種についての測定方法にも参考となり得ると考える。

Ⅱ 測定対象核種、測定下限濃度及び計測頻度

 発電用軽水型原子炉施設から放出される気体状放出放射性物質及び液体状放出放射性物質は、それらの放出状況、放射性物質の物理的・化学的性状、放出管理の方法等を勘案し、第1表に示す測定対象核種、測定下限濃度及び計測頻度により測定するものとする。

Ⅲ 試料採取方法

 試料の採取は、放射性物質が放出する放射線の種類、放射性物質の物理的・化学的性状、放射能計測方法及び測定下限濃度との関係を考慮し、かつ、放出される放射性物質の濃度を代表できるような方法を用いて行うものとする。また、試料採取装置は、使用中に不具合が生じた場合でも採取を継続的に行いうるように配慮しなければならない。

1. 気体状放出放射性物質

 1.1 試料採取頻度及び採取場所

(1) 試料採取は原則として連続とする。

第1表 放出放射性物質の測定対象核種、測定下限濃度及び計測頻度

(2) 試料採取場所は、原則として最終ダクト又は排気筒とする。

 1.2 サンプリングノズルの配置及び構造

(1) サンプリングノズルは、放出される気体状放出放射性物質が十分に混合された位置に配置し、必要に応じて複数個設置するものとする。

(2) サンプリングノズルは、試料の必要量、最終ダクト又は排気筒内の流速等を考慮して大きさと形状を決定するものとする。

(3) サンプリングノズル部の流速は、原則として最終ダクト又は排気筒内の流速と同等な流速とする。

 1.3 試料採取配管の構造

 試料採取配管は、放射性物質の配管への沈着を避けるため、できるだけ短かく、また、急激な屈曲部を少なくし、かつ、沈着が少ない材質とする。

 1.4 試料捕集方法及び試料採取量

(1) ガス状物質は、測定容器に連続的に導き、これを直接計測するものとする。測定容器の容量は、放射能計測装置の性能を考慮し、測定下限濃度の測定が可能な大きさとする。

(2) 揮発性物質は、活性炭カートリッジ等の捕集材を用いて捕集するものとする。この場合、捕集材は、揮発性物質の物理的・化学的性状、ろ過速度等を考慮して、特別な補正を必要としないような適切な捕集効率を有するものを選択するものとする。また、採取空気量は、放射能計測装置の性能を考慮し、測定下限濃度の測定が可能な量とする。ただし、トリチウムについては、冷却凝縮法により捕集してよいものとする。

(3) 粒子状物質は、集塵ろ紙を用いて捕集するものとする。この場合、集塵ろ紙は、粒子状物質の物理的・化学的性状、粒径分布、ろ過速度等を考慮して特別な補正を必要としないような捕集効率を有するものを選択するものとする。

 また、採取空気量は、放射能計測装置の性能を考慮し、測定下限濃度の測定が可能な量とする。

 1.5 捕集材の交換頻度

 捕集材は、捕集効率の低下、目詰まり等が著しくならないような頻度で交換するものとする。

2 液体状放出放射性物質

 2.1 試料採取頻度及び採取場所

(1) 試料採取は、液体状放出放射性物質の放出の都度行うものとする。

(2) 試料採取場所は、各放出系統の最終タンクとする。

 2.2 タンク及び配管

 試料採取を行う放出系統の最終タンクは、代表試料が採取されるよう十分な撹拌が行える設備とする。また、試料採取配管は、放射性物質の配管への沈着を避けるためできるだけ短くし、試料採取前に十分な洗浄が行える設備とする。

 2.3 試料採取量

 試料採取量は、放射能計測装置の性能を考慮し、測定下限濃度の測定が可能な量とする。また、長半減期核種の測定等のため、コンポジット試料を作成する場合には放出量に比例した量を採取するものとする。

Ⅳ 放射能計測方法

1. 気体状放出放射性物質

(1) 放射性希ガスは、オフライン方式又はインライン方式により、NaI(TI)シンチレーション計数装置、電離箱、プラスチック・シンチレーション計数装置、GM計数装置等を用い、連続的に計測するものとする。

 なお、貯留タンク等により減衰後放出する場合には、タンク等から採取された試料の放射能計測に基づき放出放射能量を決定してもよい。

(2) よう素-131及びよう素-133は、試料を採取後すみやかにGe半導体検出器・多重波高分析器(以下「Ge半導体スペクトロメータ」という。)等を用いて計測するものとする。

(3) トリチウムは、試料を液体シンチレーション計数装置を用いて計測するものとする。

(4) 粒子状物質中の放射性物質は次により計測するものとする。

 ① ガンマ線放出核種は、試料を採取後すみやかにGe半導体スペクトロメータを用いて計測する。

 ② ストロンチウム-89及びストロンチウム-90は、試料から放射化学的に分離し、GM計数装置等を用いて計測する。

 ③ 全ベータ放射能は、試料をそのまま、又は適切に処理し、ガスフロー型GM計数装置、ガスフロー型比例計数装置等により計測する。

 ④ 全アルファ放射能は、試料をそのまま、又は適切に処理し、ガスフロー型比例計数装置、ZnS(Ag)シンチレーション計数装置等を用いて計測する。

2. 液体状放出放射性物質

(1) ガンマ線放出核種は、放出の都度採取した試料又はコンポジット試料をGe半導体スペクトロメータを用いて計測するものとする。

(2) ストロンチウム-89及びストロンチウム-90は、採取試料をもとにコンポジット試料を作成し、放射化学的に分離した後、GM計数装置等を用いて計測するものとする。

(3) トリチウムは、採取試料をもとにコンポジット試料を作成し、適切に処理した後、液体シンチレーション計数装置を用いて計測するものとする。

(4) 全ベータ放射能は、採取試料をもとにコンポジット試料を作成し、蒸発乾固等により適切に処理した後、ガスフロー型GM計数装置、ガスフロー型比例計数装置等を用いて計測するものとする。

(5) 全アルファ放射能は、採取試料をもとにコンポジット試料を作成し、蒸発乾固等により適切に処理した後、ガスフロー型比例計数装置、ZnS(Ag)シンチレーション計数装置等を用いて計測するものとする。

3. 放射能計測装置の校正

 3.1 校正方法

 放射能計測装置は、適切な標準線源又は校正用試料(以下「標準線源等」という。)を用いて校正するものとする。標準線源等は、対象核種と同種類の核種又は着目エネルギーを含むようなエネルギー範囲の放射線を放出する他の核種とする。標準線源等の形状は、計測試料と同一又は類似したものとする。

(1) 放射性希ガスの計測装置の校正は、Ge半導体スペクトロメータ等を用いて実際の試料の核種毎の測定によって求められたそれぞれの放射能濃度〔μCi/cm3〕の合計値と計測装置の計数率〔cps〕又は電離電流値〔A〕とを対応させることになって行うものとする。

 ただし、実際の試料の放射能濃度が低く、核種毎の測定が困難な場合には、標準線源等を用いて計測装置の計数効率又は電離効率のエネルギ依存性を求めておき、試料の核種組成を適切な方法で推定し校正を行うものとする。

(2) 放射性希ガス以外の核種の計測装置の校正は、実際の計測試料と同様の幾何学的形状を持つ標準線源等を用いて行うものとする。この場合、Ge半導体スペクトロメータ等は、(1)に準じて計数効率(ピーク効率)のエネルギ依存性を求めておくものとし、また、ストロンチウム-89、ストロンチウム-90及びトリチウムの計測装置は、それぞれの対象核種の標準線源等を用いて校正を行うものとする。

(3) 全ベータ、全アルファ放射能計測装置の校正は、適切なベータ線又はアルファ線の標準線源等を用いて行うものとする。

 3.2 校正頻度

 計数効率又は電離効率は、少なくとも1年に1回の頻度で測定するものとする。

4. 放射能計測装置のバックグラウンド及び感度限界

 4.1 バックグラウンドの計測

 計測装置のバックグラウンドを適切な頻度で把握するものとする。

 4.2 感度限界の算定

 放射能計測装置の感度限界は、実際の使用条件におけるバックグラウンドの変動に基づいて定めるものとする。

V 放出放射能量の算出

 放出放射能量は、放射能計測装置から得られる計測結果のうち感度限界値以上のものについて計測試料の放射能量又は放射能濃度への換算係数、放出量、必要な補正係数等を用いて求めるものとする。

1. バックグラウンドの差し引き

 正味の計測値は、放射能計測装置から得られる試料の計測値から、バックグラウンド値を差し引いて求めるものとする。計測値は、計数率〔cps〕又は電離電流値〔A〕とする。

2. 換算係数

 IV・3で示した校正の結果と計測に用いた試料採取量とから測定対象ごとに計測値〔cps又はA〕を試料放射能濃度〔μCi/cm3〕へ換算するための換算係数を定めるものとする。

 ただし、放射性希ガスについては、実際の試料の放射能濃度が低く核種ごとの定量が困難な場合は、核種組成を適切な方法で推定し、IV・3.1(1)で求めた計数効率又は電離効率のエネルギ依存性に基づいて換算係数を求めるものとする。

3. 補正

 3.1 放射能減衰に対する補正

(1) 捕集期間中及びコンポジット試料の作成期間中の減衰については、期間を通じて一定の濃度で放出されたものとして補正を行うものとする。

(2) 採取から計測開始までの期間中の減衰及び計測中の減衰については、それぞれの時間記録に基づき適切な補正を行うものとする。

 3.2 その他の補正

 オフライン方式による放射性希ガスの放射能測定については、測定容器内の圧力に対する補正を行うものとする。

4. 検出限界濃度の算出

 IV・4.2に示す放射能計測装置の感度限界の値に基づき、検出限界濃度を算出するものとする。

VI 記録方法

1. 測定結果の記録

 測定結果の記録にあたっては、測定の状況を確認しうるような事項もあわせて記録し、保存するものとする。

2. 測定結果の集計

 放出放射能量の集計は、第2表のとおりとする。

 ただし、全データ放射能については必要に応じて集計するものとする。

第2表 集計期間

解説

 I 指針作成の考え方

 原子力委員会は「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」(昭和50年5月13日)を定め、平常運転時における環境への放射性物質の放出に伴う周辺公衆の被曝線量を低く保つための努力目標として線量目標値を示している。

 原子力発電所においては、気体廃棄物及び液体廃棄物の放出に際しては、この指針に基づき線量目標値を満足するような放出管理目標値を定め、その値を超えないように放出管理を行うこととしている。

 本指針は上記の事情を踏まえ、平常運転時における発電用軽水型原子炉施設から放出される放射性物質の放射能量の測定に関し、主として放出管理目標値との関連で行う測定方法の斉一化をはかるため、標準的な方法を定めたものである。

 気体廃棄物及び液体廃棄物中の放射性物質(以下「放出放射性物質」という。)の組成と放出量は、原子炉の型式、運転モード、燃料の状態、廃棄物処理設備の能力等に依存するが、周辺公衆への被曝線量寄与が大きい放射性核種は比較的限られている。

 前述の放出管理目標値は、これらのことを考慮したうえで定められていることにかんがみ、本指針においては放出管理目標値に定められている放射性核種の測定方法に重点を置くこととした。

 また、放出管理目標値の対象とされていない放射性核種についても環境への影響が比較的小さいことを把握する観点から、それらの測定方法を合わせて定めることとした。

 放出放射性物質の測定方法を定めるに当たっては、放出放射性物質が物理的、化学的性状の異なる放射性核種によって構成されているため、それぞれの性状に応じて放射性核種ごとに測定することを基本とした。

 しかし、放射性核種の物理的、化学的性状によって放射性核種ごとの測定に限界がある場合には、測定の対象としている放射能量のレベルが比較的低いレベルにあること等を考慮して、放射性核種のグループを一括して測定する方法も考慮することとした。

 放出放射性物質の測定システムについては、測定対象核種の物理的、化学的性質、試料の処理、計測条件等によって最小量の測定に限界が生じるが、ここでは測定技術の現状を考慮して目標とすべき測定下限濃度を定め、前述の線量目標値又は放出管理目標値を十分達成していることを確認するのに必要な機能を持たせることとした。

 なお、本指針は核分裂生成物及び放射化生成物に起因する放射性物質を放出する発電用軽水型原子炉施設を対象として定めたものであるが、他の原子炉施設においても放射性核種の組成、放出量、放出方法等を勘案すれば本指針を参考にできるものと考える。

 II 測定対象核種、測定下限濃度及び計測頻度

 原子炉施設で生成される放射性核種としては非常に多くのものがあるが、これらは核燃料物質の核分裂から直接生成する核分裂生成物と原子炉構造材などが放射化されて生成する放射化生成物の二つに大別することができる。これらのうち大部分は、燃料要素内あるいは施設内に保持されるが、ごく一部は気体状あるいは液体状となって、それぞれの処理系統をへて環境へ放出される。気体状放出放射性物質はさらにその性状によって、集塵ろ紙で捕集することのできる放射性粒子状物質(以下「粒子状物質」という。)、吸着あるいは冷却凝縮によって捕集することのできる揮発性物質(放射性よう素(以下「よう素」という。)、トリチウム水蒸気など。)及びガス状物質(その大部分は放射性希ガス(以下「希ガス」という。))に分類される。

 気体状及び液体状放出放射性物質中の放射性核種の組成と放出量は、原子炉の型式、運転モード(定常運転、起動、停止、定検)、燃料の状態、廃棄物処理設備の能力などに依存するが、周辺公衆への被曝線量寄与が大きい放射性物質の種類はある程度限られているため、定常的に行う測定は、これらの主要なものに重点を置くことができる。

 2.1 測定対象核種及び計測頻度

 本指針第1表の測定対象核種及び計測頻度は次により定めたものである。

 測定対象核種としては、放出管理目標値と関連する放射性物質のほか、環境への影響が比較的小さいとして放出管理目標値の対象とされていない核種についても測定対象とした。

 放出管理目標値は、気体状放出放射性物質については希ガス及びよう素-131、液体状放出放射性物質についてはトリチウム以外の放射性物質に対して、それぞれ年間の放出量について定められている。

 このうち希ガスについてはγ線スペクトロメトリ等による核種毎の測定が実用上困難であるので、いわゆる全放射能(全γ放射能又は全β放射能)の計測を行うこととするが、放出される希ガスの核種組成は主な系統の発生源に近い位置の高濃度試料を計測すること等により推定できるので、全放射能計測方法により放出放射能量の把握及び環境への影響評価を行うことができる。

 なお、本指針で核種分析の対象とした核種以外の核種の存在の有無を確認するため、気体状放出放射性物質中の粒子状物質及び液体状放出放射性物質の全β放射能及び全α放射能測定を行うこととした。従って、測定結果が分析対象核種の測定結果と較べて異常と思われる場合、たとえば全β放射能については、測定された全β放射能濃度から各核種の測定結果を基に求めたβ放射能濃度の和を差引いた値が測定下限濃度の100倍を超えた場合、全α放射能については、測定された全α放射能濃度が測定下限濃度の100倍を超えた場合、核種分析等を実施する必要がある。

 計測頻度については、測定対象ごとに放出管理目標値との関連、環境における被曝線量への寄与、測定下限濃度及び測定の難易度等を考慮して定めた。

 希ガスについては、①環境における被曝線量の寄与が最も大きいこと、②その放出率の変動は、気体状放出放射性物質中の他の放射性核種の放出率の変動傾向の把握に役立つことから、連続計測を行うものとした。

 また、よう素-133については、その被曝線量への寄与がよう素-131に比べて小さいこと及び放出放射能量の変動傾向がよう素-131に類似することから、よう素-131の測定値に特に異常のないときには、1週間捕集後の測定値から減衰の補正をして求めてよいものとした。

 一方、ストロンチウム-89及びストロンチウム-90のように測定に長期間の労力を必要とする核種、あるいはその被曝線量への寄与が小さいか、又は他核種の測定により一定レベル以下であることが推定できる核種については、四半期に1回又は1ヵ月に1回の測定でよいものとした。

 なお、たとえば、異常に高い値の希ガス濃度が検出されたときはよう素-131、よう素-133、その他の核種についてその都度間隔を短かくして測定する必要がある。

 2.2 測定下限濃度

 放射性物質の放出量〔Ci〕は、気体状及び液体状放出放射性物質中の放射能濃度の測定値〔μCi/cm3〕と一定期間の排気量又は排水量〔cm3〕とから求められる。

 指針第1表に示される各測定対象毎の測定下限濃度は、①放出管理目標値を達成していることを確認するために必要な感度を有すること、②実用されている計測装置及び測定方法により十分な精度で測定できる濃度範囲、③試料採取及び処理の時間や必要な計測頻度、計測時間など放出管理の実際を考慮して定めたものである。

 第2.1表に測定下限濃度を決める際に参考とした代表的な測定方法とそれによって得られる検出限界濃度を示す。

 III 放出放射能量の測定方法の概要

 3.1 測定方法の計画

 検出限界濃度は、使用した計測装置の感度限界(これは、計数時間の関数でもある。)のほか、試料の採取量、計数効率、捕集効率等に依存する。測定方法を立案する段階において、予想される検出限界濃度が指針第1表の示す測定下限濃度の値を下回るように、これらの値をそれぞれ適切に決定する必要がある。実際の測定にさいしては、これらの値が当初定めた値のまま一定値に保たれるとは限らない。たとえば、何らかの事情で計数時間が短縮されたり、また、とくにγ線スペクトロメトリーにおいては、計測試料中にたまたま通常量以上の高エネルギーγ線放出核種が含まれていると、低エネルギ側のバックグラウンド(ベースライン)が増加し、その領域に解析対象ピークを与える核種に対する感度限界が上昇するため、検出限界濃度が測定下限濃度を超える場合もある。このような事情を考慮し、できるだけ余裕をもった測定条件を設定する必要がある。

 3.2 トレーサビリティの確保

 放射能の測定は一般的に、基準となる放射能量との比較によって行われる。

 この比較の方法には、一定量の基準となる放射能と測定すべき試料とからほとんど同様に物理的、化学的操作によって計測試料を作り、比較測定する直接法と、基準となる放射能量と計測装置の指示値との関係を明確にし、以後その計測装置を一つの標準と考え放射能の測定を行う間接法とがある。このような比較を二次、三次とくりかえすことにより測定精度は順次低くなるが、どの段階からでも基準となるべき放射能量との関係が明確になっている必要がある。このようにいつでも基準となるもとの量(一般には国家標準)にまで遡及できるようになっていることをトレーサビリティ(traceability)を保つという。

第2.1表(1)測定下限濃度を満たすための代表的な測定条件

第2.1表(2)測定下限濃度を満たすための代表的な測定条件

 3.3 測定方法の現状

 以下に各測定対象について、一般的な測定方法の現状を示す。

  3.3.1 希ガス

 希ガスは連続測定が原則であり、電離箱に連続的に試料空気を導入してその電離電流と放射能濃度を対応させる方法と、GM計数装置やシンチレーション計数装置の計数率と放射能濃度を対応させる方法の2通りがある。

  3.3.2 よう素-131及びよう素-133

 気体状の場合は活性炭捕集材を用いて捕集するが、放射能濃度を算出するときは捕集効率を考慮しなければならない。捕集効率は試料空気を予熱したり、TEDA等を添着した活性炭捕集材を用いることにより、向上させることができる。計測は一般にはGe半導体検出器・多重波高分析器(以下「Ge半導体スペクトロメータ」という。)を用いて行われる。

  3.3.3 γ線放出核種

 放出放射性核種の大部分はα崩壊やβ崩壊に伴ってγ線やX線を放出するので、広いエネルギ範囲について計測できるように設定したγ線スペクトロメータを用いれば大部分の核種が同定・定量でき、崩壊にさいしγ線やX線を伴わない核種について別途考慮しておけばよいことになる。しかし、γ線のエネルギにより計測装置の計数効率が異なり、また、一つの核種から多数のγ線やX線が放出されていてその放出比が異なっている点に注意する必要がある。

 あらかじめ対象とする核種がある場合には、それぞれのγ線及びX線の放出比、エネルギ等を勘案してそのうちから対象核種を代表するエネルギーのγ線1本~5本程度を核データ等により選定しておくことが実際的である。一方、特に注目する核種を測定するのではなく検出しうる全核種を同定・定量する場合は、まず存在の認められる各ピークのエネルギ値を決定し、核データにより対応する核種を求めることになる。

 いずれにしても、測定対象核種を明確にし、その核種の放出するγ線エネルギ値を調べておき、そのうちから検出に最も有利なエネルギーのγ線に着目して計測することが実際的である。付録にそのように配慮のもとに整理された核データをまとめて示した。

  3.3.4 ストロンチウム-89及びストロンチウム-90

 これらの核種はトリチウムと同様崩壊にさいしてβ線のみを放出し、γ線による分析は不可能である。そこで化学的に分離してβ線による定量を行う方法がとられているが、その処理にかなりの時間と労力を必要とする。

  3.3.5 トリチウム

 気体の場合は、冷却凝縮等により空気中に水蒸気として存在するトリチウムを捕集し計測する。

 液体の場合は原則として前もって試料を蒸留する。

計測は両者とも液体シンチレーション計数装置により計測する。

  3.3.6 全α放射能及び全β放射能

 全α放射能及び全β放射能測定の場合は、天然ウランの標準線源を用いて、それぞれα放射能、β放射能を代表させ、試料中の放射能を求めるのが一般的である。

 放出放射性物質中に含まれる多数の核種の放出するβ線のエネルギー範囲はきわめて広く、使用する計測装置によっては低エネルギβ線放出核種に対する感度が極端に低いものもあることを認識しておく必要がある。

 全α放射能はガスフロー型比例計数装置等により、全β放射能は、ガスフロー型GM計数装置等により計測する。気体試料の場合は大気中にある天然のラドンの娘核種が同時に捕集されるので、一般にはその減衰を待って約1週間経過後に計測する。

 IV 試料採取方法

 4.1 気体状放出放射性物質

 現在、BWR及びPWRでは、第4.1図及び第4.2図に示すように試料採取系統を用いて、気体状放出放射性物質の放出量を把握するために必要な試料の採取を行っている。

 このような試料採取系統を用いて試料を採取する場合には、採取した試料が放出放射性物質の濃度を代表できるように、適切な採取場所や採取方法を選定する必要がある。

  4.1.1 試料採取頻度及び採取場所

(1) 試料採取頻度

 試料採取装置は、気体状放出放射性物質の放出量を把握するため、試料の採取が連続して行えるよう設計する必要がある。

 また、実際の放出管理にあたっても、試料の採取は原則として連続とするが、気体状放出放射性物質(特に希ガス)を貯留タンク等により減衰後放出する場合には、貯留タンク等から試料を直接採取して、放出放射能量を求めてもよい。

(2) 試料採取場所

 最終ダクト又は排気筒(以下「排気筒等」という。)から試料を採取する場合には、その採取した試料が放出放射性物質の濃度を代表する必要がある。

 したがって、代表となる試料を得るためには、各排気系ダクトから排出された気体状放出放射性物質がほぼ均一に混合された場所で試料採取を行うか、又は代表となる試料が得られるようにサンプリングノズルの配置及び構造並びにサンプリング流速に十分な配慮をする必要がある。具体的には次に示すとおりである。

 ① 試料採取場所として、各排気系ダクトの合流点から排気筒等の直径の少なくとも5倍、できれば10倍以上排出側に寄った場所を選定する場合には、ほぼ均一に混合された試料を得ることができる。1,2)

 この場合、短形ダクトの等価直径は次式を用いて求められる。


ここに、D:ダクトの直径〔m〕
S:ダクトの面積〔m2
L:ダクトの内周長さ〔m〕

 ② サンプリングノズルの配置及び構造が4.1.2に示される条件を満足しており、さらに、サンプリング流速が4.1.4に示される条件を満足している場合には、排気筒等の中での気体状放出放射性物質の混合状態にかかわらず試料の代表性は確保される。3)

 ③ 混合に必要な距離の短縮については、実験等によって検討されており、次のような方法がある。2)

  a. 混合距離は、最終ダクトに何回かの直角の曲折がある場合には、非常に短縮され、1回の直角の曲折によって直線のときの約1/3になり、2回目の直角の曲折によって少なくともさらに1/2以上は短縮できるものと考えられる。

第4.1図 BWR気体状放出放射性物質試料採取系統概略図(例)(オフライン方式)

第4.2図 PWR気体状放出放射性物質試料採取系統概略図(例)

  b. ファン等による強制混合が行われていたり、排気系ダクトの合流点の配置又は構造に十分混合が行われるように配慮されている場合には、混合距離を短縮することができる。

 なお、実測によって測定対象の放出放射性物質に対して代表となる試料を得ることができることを確認している場合には、その位置において試料採取を行ってもよい。

 また、試料の採取場所としては、最終ダクトの屈曲部分や断面形状の急激に変化する部分を避ける必要がある。この理由は、このような位置では、流れの乱れ、ときには逆流もあって、代表となる試料の採取ができないからである。3)
  4.1.2 サンプリングノズルの配置及び構造

(1) サンプリングノズルの配置

 4.1.1(2)の①及び③に示すような方法によってほぼ均一に混合された場所において試料採取を行う場合には、サンプリングノズルは、排気筒等の中央付近に1個設置すればよい。4)

 気体状放出放射性物質が均一に混合されていない場所において試料採取を行う場合には、サンプリングノズルは、排気筒等の断面積の形状と大きさに応じて断面を適当数の等面積に区分し、その区分面積ごとに配置する必要がある。この場合のサンプリングノズルの配置はJIS規格又はISO規格を参考にして行う。

(2) サンプリングノズルの構造

 サンプリングノズルの構造は、次の条件を満足する必要がある。3)

 ① サンプリングノズルの内外の気体の流れが乱れないようにし、サンプリングノズルの内外面は滑らかになっていること。

 ② サンプリングノズルの大きさは、排気筒等内の流速と流速分布、試料の必要量等を考慮して決定すること。

 ③ サンプリングノズルの先端は、サンプリングノズル内外の気体の流れが乱れないように鋭角に仕上げるか、滑らかな半球とすること。

 ④ サンプリングノズルの曲がりの部分は、放射性物質の沈着を避けるためにゆるやかに曲げること。

 ただし、採取する試料が希ガス又は粒径数μm以下の粒子状物質であり、サンプリングノズルの孔が気体の流れに面した方向にあいているならば、上記のような厳しい条件は必要としない。なほ、HEPAフィルタ(高効率粒子除去用フィルタ)を通過した後の粒子状物質の粒径は、1μm以下とみなしてよい。

  4.1.3 試料採取配管の構造

 試料採取配管の設計にあたっては、揮発性物質及び粒子状物質の配管への沈着をできる限り少なくする必要がある。その方法として、次の配慮が考えられる。

(1) 配管の長さに対する配慮

 配管への沈着についての正確な機構については、十分に解明されていないが、今日迄の実験結果等によれば、主な沈着機構として次のものがある。

○重力沈降による沈着
○粒子の慣性力による沈着
○層流拡散
○乱流拡散

 これらのうち、重力沈降による沈着は、サンプリングノズルから測定容器や捕集材までの径路の配管をできる限り短かく、また、水平部分をできる限り少なくすることによって、小さくすることができる。

 粒子の慣性力による沈着は、粒径及び流速が大きいときに配管中の曲線部分に対して重要になってくるが実験によれば、粒径が2μm以下の粒子状物質についてはそれほど問題とはならない。5)しかし、設計にあたっては、この沈着をより少なくするために、配管曲折部の曲率半径をある程度大きくすることが望ましい。

 層流拡散による沈着は、粒径が0.1μm以下では重要になってくるが、流速を大きくすること等により、沈着を小さくすることができる。

 乱流拡散による沈着は一般に粒径及び流速が大きい場合に重要になるので、流速を適切に選択する必要がある。

 実際には、配管長さは、試料採取場所と測定容器や捕集材の設置場所との位置関係によって影響されるため、設計にあたっては、これらの点を十分考慮する必要がある。

(2) 配管の材質に対する配慮

 配管の材質については、沈着の少ない材質を用いる必要がある。一般に、よう素などは塩化ビニール及びゴムには非常に沈着しやすいが、管内の流速を増せば沈着率を小さくすることができるという報告6)がある。粒子状物質の沈着を防止するためには、内面の滑らかな配管を用いることが必要である。したがって、配管の腐食防止も含めて、よう素などが沈着しにくいステンレス鋼のような不銹金属を用いることが望ましいが、他の材質であっても配管長さと流速の適切な選定によって沈着に起因する誤差を小さくすることができる。

(3) 配管の内径に対する配慮

 配管の内径については、配管内の流速と沈着率との関係、サンプリング流速と排気筒等内の気体の流速との関係及びポンプの容量を考慮して決定する必要がある。

  4.1.4 サンプリングノズル部の流速4)

 排気筒等から粒子状物質を採取するとき、十分に混合された位置で排気筒等内の気体と等しい流速でサンプリングノズルへ吸引する(これを「等速サンプリング」という。)ことにより、代表的な試料が採取できるので、サンプリングノズルの部の流速は、原則として、排気筒等内の流速と同等な流速とする。

 ただし、サンプリングノズル部の流速が排気筒等内の流速より比較的遅い場合は、以下の理由から非等速サンプリングであってもよい。

 非等速サンプリングの場合、サンプリング流速がその部分の気体の流速より大きいとき、大きな粒子より小さな粒子が多くサンプリングノズルに吸引される。サンプリング流速が気体の流速より小さいときは、大きな粒子がより多くサンプリングノズルに吸引される。前者の場合は粒子状物質の濃度は実際の濃度より低く後者の場合は逆に高く評価され安全側の結果が得られる。(第4.3図参照)

第4.3図 サンプリング流速と粒子状物質の濃度との関係7)

 また、実験8)によると、粒径が最大数μm以下ならば、排気筒等内の流速とサンプリング流速との比が数倍程度あっても、採取試料の濃度の真値からの偏りは10%以内であるといわれており、排気系のHEPAフィルタでろ過された粒子状物質は、ほとんどが1μm以下の粒径と考えられるので、排気筒等におけるろ過後の試料採取ではほとんどの場合、非等速サンプリングによって生じる誤差は無視できる程度となる。

  4.1.5 試料捕集装置

(1) 希ガス

希ガスの捕集には次の事項を考慮する必要がある。

 ① 粒子状物質等の混入を防ぐため、測定容器(放射線検出器として電離箱を使用するときには、電離箱が測定容器を兼ねる)の前段にフィルタを設置すること。このフィルタは、粒子状物質等の捕集材と兼用してもよい。

 ② 電離箱を用いる場合は、試料空気中に含まれているイオンを除去するため、測定容器の前段にイオンの除去装置を設置する必要がある。

 ③ 放出放射能量を算出する際に測定容器内の圧力について補正を行うが、その補正のため圧力計を設置する必要がある。ただし、測定容器内の圧力がほとんど大気圧と同じであることが定期点検時等に確認されている場合はこの限りではない。

(2) よう素及び粒子状物質

 よう素及び粒子状物質の捕集には次の事項を考慮する必要がある。

 ① よう素を捕集する場合は、試料空気の相対湿度を下げるため、捕集材の前段にヒータを設置することが望ましい。

 ② 活性炭カートリッジは、試料空気が鉛直に流れるように設置することが望ましい。ただし、活性炭の充填等について十分な配慮がなされている場合はこの限りではない。

(3) トリチウム

 トリチウムの捕集には次の事項を考慮する必要がある。

 ① トリチウムを捕集する場合には粒子状物質等の混入を防ぐため、捕集材上流側の試料取入口にフイルタを設置する必要がある。

 ② 冷却凝縮方法による場合は、温度計・湿度計を設置する必要がある。ただし、捕集効率が90%以上ある場合は必要ない。

 ③ 固体捕集および液体捕集方法による場合は、捕集効率が90%以上になるように、吸着剤量・流量などの捕集条件を定めることが必要である。

 ④ シリカゲルなどの吸着剤は、通常の保存状態でも水分を吸着していることに留意する必要がある。

(4) その他

 希ガス、揮発性物質及び粒子状物質に共通な事項として次の事項を考慮する必要がある。

 ① ポンプ等の可動機器及び計測装置は、故障によって生じる長期間の欠測を防止するため、2重化するか又は直ちに予備品と交換できるようにしておく必要がある。

 ただし、バックアップの計測装置が設置されているか、又は仮設の捕集装置を設置することによって、放出放射能量の確認ができればこの限りではない。

 ② 試料の捕集及び連続計測の中断を避けるための電源設備を有することが必要である。

 ③ 試料の捕集や計測ができなくなった場合には、警報が発信できるようにする必要がある。

 ④ 捕集装置に一定量の試料が流れるように流量調整を行う必要がある。

 ⑤ 捕集装置は試料の物理的条件(温度、湿度、圧力等)及び化学的条件(腐食性、燃焼性等)に十分耐えうるものとする必要がある。

 ⑥ 捕集装置は、設置場所の周囲条件(温度、湿度等)に十分耐えうるものとする必要がある。

 ⑦ 試料採取配管が、屋外を通過することなどにより、水分の凝縮の恐れがある場合には、配管の保温対策を行うことが望ましい。

  4.1.6 試料捕集材

(1) よう素
 ① 活性炭捕集材の種類と性能

 よう素の捕集効率は、よう素の物理的・化学的性状及び雰囲気条件、捕集時間、吸引流速等の捕集条件により変化する。

 そのうちでも特に捕集効率の低下をまねく要因は、有機よう素の比率が大きい場合と相対湿度の高い場合である。

 これらの対策として、種々の添着材(KI、SnI2、TEDA等)の採用、相対湿度を低下させるため試料空気を加熱する方法がある。9)また、捕集時間が長い場合や吸引流速が大きい場合等よう素の通過が予想される時は、活性炭捕集材を2段とすること等で対処することが望ましい。

 ② 活性炭捕集材の選定

 活性炭捕集材は、上記の性能、計測結果の一様性を考慮し、よう化メチルに対し捕集効率が捕集期間を通じて90%以上のものを選定する必要がある。

(2) 粒子状物質
 ① 集塵ろ紙の種類と性能

 集塵ろ紙には、セルローズ系、アスベスト系、ガラス繊維系、メンブラン系等がある。

 捕集効率は、塵埃の物理的・化学的性状、粒径分布及びろ過速度等の捕集条件によって変化するが、これらの条件を考慮しても補正を要しない捕集効率である必要がある。

 ② 集塵ろ紙の選定
 集塵ろ紙は上記の性能、測定結果の一様性を考慮し、0.3μmの粒子に対し捕集効率が99%以上のものを選定する必要がある。4)

この性能を有する集塵ろ紙を使用すれば、捕集効率の補正を行わなくてもよいこととする。

 4.2 液体状放出放射性物質

 現在、BWR及びPWRでは、第4.4図に示すような試料採取系統を用いて液体状放出放射性物質の放出量を把握するために必要な試料の採取を行っている。

 このような試料採取系統を用いて試料を採取する場合には、採取した試料が放出放射性物質の濃度を代表できるように、適切な採取場所及び採取方法を選定する必要がある。

  4.2.1 試料採取頻度及び採取場所

(1) 試料採取は、液体状放出放射性物質の放出の都度行う。

(2) 試料採取場所は、各放出系統の最終タンクとする。

  4.2.2 タンク及び配管

 試料の採取にあたっては、タンクに設けた循環用の配管等により、タンク内の試料がほぼ均一になるまで撹拌を行った後、この循環用の配管より分岐した試料採取配管より行う。この系統を設計並びに使用するにあたってはに下の点を考慮する必要がある。

(1) タンク水の撹拌

 代表となる試料が得られるよう、採取する前にタンク水を循環することにより、タンク内の放射性物質の濃度をほぼ均一にする。循環時間はタンク容量分を循環させることを目途とするが、循環時間と試料濃度の変化の関係を実測により求めた場合は、これにより設定した循環時間を用いてもよい。なお、強制混合できるような設備がある場合には循環時間を短かくすることができる。

第4.4図 液体状放出放射性物質の試料採取系統概略図(例)

(2) 配管の設計

 試料採取配管が取付けられる循環用配管の設計にあたっては代表となる試料を採取するため管内流速が乱流領域となるような配管径及び流量とする必要がある。放射性物質の配管への沈着を避けるため、配管長さはできる限り短かくするものとし、配管材質は放射性物質の沈着が少なく、腐食の少ないものを選定する必要があり、ステンレス鋼等を使用することが望ましい。配管の引回しはなるべく垂直又は勾配をつけるものとし、水平部分はできる限り短かくする。

(3) 試料採取前の洗浄

 試料採取は試料採取配管内容量分をブローした後行う。試料瓶はポリ瓶とし、試料水により共洗いした後に採取を行う。

  4.2.3 試料採取量

 試料採取量は計測装置の感度限界、計数効率等を考慮し、測定下限濃度の計測が可能な量とする。

 コンポジット試料を作成する場合は、放出の都度採取した試料のうち、廃液の種類毎に計測頻度、計測装置の仕様、計測条件等を考慮して測定下限濃度を満足する適当量を放出量に比例して分取する。

参考文献

1) International Organization for Standardization;General Principles for Sampling Airborne Radioactive Materials,ISO/DIS 2889 (Mar.1973)
2) 松井浩、吉田芳和;排気系におけるエアロゾル・サンプリング条件、日本原子力学会誌、Vol.15,No.3,P.165(1973)
3) 日本工業規格;排ガス中のダスト濃度の測定方法、JISZ 8808(1977)
4) 日本工業規格;空気中浮遊粒子状物質の放射能濃度測定法、JISZ 4512(1976)
5) L.C.Schwendiman,A.K.Postma,and L.F.Coleman;Radioactive Particle Retention in Aerosol Transport Systems,HW-SA-3210(1963)
6) C.L.Lindken et al;UCRL-7811,26(1964)
7) E.Zimmermann;VDI-Z.Vol.75,P.481(1931)
8) G.A.Sehmel;Subisokinetic Sampling of Particles in an Air Stream,BNWL-217(1966)
9) 労働省安全衛生部労働衛生課編;作業環境測定ガイドブック(4)、P.58(1976)

 Ⅴ 採取試料の計測方法

 5.1 希ガス

  5.1.1 系統構成

 計測の方式にはインライン方式(検出器がプロセス流体に入っている場合)、オフライン方式(プロセス流体から一部を取り出して計測する場合)の2つがある。

 インライン方式では、試料採取に伴う誤差を考慮する必要がないが、バックグラウンドの低減、校正及び保守の点で困難がある。オフライン方式の場合は、使用する計測装置の感度限界を向上するために、検出器、測定容器の形状、しゃれい等を比較的自由に選択できる利点がある。

  5.1.2 計測装置

(1) 計測装置の仕様

 希ガスを測定する検出器としては、γ線計測用のNaI(Tl)シンチレーション検出器及びβ線計測用のGM計数管、電離箱、プラスチック・シンチレーション検出器が用いられている。

 BWRでは、一般的にNaI(Tl)シンチレーション検出器が用いられ、PWRではキセノン-133、クリプトン-85の割合が大きいので、一般的にGM計数管、電離箱、プラスチック・シンチレーション検出器が用いられる。

 これらの放射線を検出するための計測装置の仕様を選定するにあたっては、次のような点を考慮する必要がある。

○計測対象放射線の種類
○要求される測定範囲
○バックグラウンド
○安定性
○耐久性
○取扱いの容易さ等

(2) 測定容器

 オフライン方式の場合、試料空気(希ガス)を測定容器に導くが、この測定容器の形状、寸法等は測定下限濃度に影響する。

 一般的に使用されるものは、ウエル型の容器で10l程度の容量のものが多く、材質は耐久性等を考慮してステンレス鋼である。また、測定容器の大きさ、形状、ガスの導入、排出方法は、希ガスの測定容器内での滞留等を考慮した上で決定する必要がある。

 測定容器にはフィルタ等を通過した希ガスが導入されるが、長期間使用する場合には内壁面が汚染される場合もあるので、除染等の便宜を考慮した構造とすることが望ましい。

 また、低エネルギのγ線の吸収を減らすため、測定容器の検出器挿入部分の壁厚及び検出器の被覆の厚さについては、強度等の許すかぎり薄くし、材質については吸収の少ないものを使用することが望ましい。

 またγ線計測装置については天然及び人工放射性核種のγ線や宇宙線によるバックグラウンドを低減させるために、検出器と測定容器をしゃへいする必要がある。しゃへい体の厚さは、鉛で5~15cm程度、鉄で20~25cm程度が一般的である。

 ただし、計測装置のバックグラウンドが原子炉の流転状態等により大きく変化する場合には、上記のしゃへい厚にかかわらず、十分なしゃへいを施す必要がある。

  5.1.3 計測方法

(1) 計測条件

 ① 環境条件

 計測装置は、要求される環境条件(温度、湿度、振動、放射線レベル等)を十分満足できる場所に設置する。

 ② 電気回路

 計測装置の電源は、要求される電圧の変動範囲を十分満足する必要がある。

 また計測装置は、測定対象核種からの主要放射線のエネルギ範囲について計測可能なものとする。NaI(Tl)シンチレーション計測装置の場合はキセノン-133のγ線エネルギを考慮して波高弁別レベルを50keVとする。

(2) 計測方法

 放出放射能量の算出には原則として積算計数の記録を用いるものとする。

 以下に放出放射能量算出のために必要な積算方法及びバックグラウンド計測方法について示す。

 ① 積算方法

 平常運転時の希ガス放出率及び組成は、過去の運転経験から、短時間に大きく変動しないことが明らかになっているので、放出放射能量の算出にあたっては、24時間以内の積算計数値を用いるものとする。

 しかし、放出される希ガスの核種組成や放出率が大きく変動する場合には、1時間以内の積算計数値を用いることが望ましい。

 ② バックグラウンド計測方法

 バックグラウンドは、検出限界や放出量の算出に必要な情報である。バックグラウンドを求めるには、フィルタ等により浄化された空気で測定容器内を十分置換し、計測値が安定した後に計測を行う。

 バックグラウンドは、

○計測装置の不安定性(検出器、電気回路等)
○周辺環境の線量率の変化
○測定容器の汚染等

 の原因により変動するものと考えられる。これらの変動要因からの影響を見積るためには、適宜バックグランドを計測する必要があるが、この計測装置は放出される希ガスの連続計測を目的としたものであり、バックグラウンドの計測頻度及び計測時間は制限される。このような理由から、バックグラウンドの計測頻度及び計測時間は6カ月に1回以上、24時間以内とする。

 5.2 γ線放出核種

  5.2.1 系統構成

 一般的なGe半導体スペクトロメータの構成を第5.1図に示す。

 なお、多くのデータを処理するため小型の電子計算機を用いることも有用である。

第5.1図 一般的なGe半導体スペクトロメータの構成図

  5.2.2 計測装置

(1) 性能

 Ge半導体スペクトロメータは測定下限濃度の計測ができること及び計測結果の一様性等のため一定の性能を有する必要がある。

 一般的なGe半導体スペクトロメータの性能を第5.1表に示す。

第5.1表 一般的なGe半導体スペクトロメータの性能

(2) 機器設置上の注意事項
 Ge半導体スペクトロメータは、性能を十分に発揮しかつ特性の変動を防止する意味から、その設置について以下のような注意が必要である。1)

① 温度変化が少なく、湿度及び空気中塵埃濃度が低く、床強度の十分な場所へ設置すること。

② 検出器及び電子回路への電気的雑音の混入を防止するため整流子型モータ、バイブレータ、リレー等電気的雑音の発生源となる機器の隣接、電源及び接地の共用はさけること。

  5.2.3 計測方法
(1) 計測条件

 よう素、粒子状物質中のγ線放出核種、液体状放出放射性物質中のγ線放出核種等の一般的な計測条件を第5.2表に示す。

 なお、これら計測条件は、計測装置の性能、試料量等の関連で変るものである。

第5.2表 一般的な計測条件の例

(2) ピークデータの処理及び核種の同定と定量

 計測結果のデータから、ピークチャンネル値及びピーク面積を求め核種の同定、定量を行うが、これらは、科学技術庁編(「ゲルマニウム半導体検出器を用いた機器分析法」)に示されており、これを準用する。

 5.3 ストロンチウム-89及びストロンチウム-90

 ストロンチウム-89とストロンチウム-90(及びその娘核種のイットリウム-90)はいずれも純β線放出核種であるため、他核種から放射化学的手法により分離したストロンチウムフラクションの放射能をβ線計測装置により計測する。

  5.3.1 試料の前処理

 粒子状物質の場合は、集塵ろ紙からストロンチウムを酸を用いて抽出する。

 液体の場合は、コンポジット試料をそのまま使用する。

  5.3.2 放射化学的分離

 試料中のストロンチウム-89及びストロンチウム-90を測定するにあたっては、共存する他核種を完全に分離除去する必要があり、この目的のために共沈法、イオン交換法等を用いる。このさい必要に応じストロンチウム担体を加え、その回収率を求める。

  5.3.3 ストロンチウム-89とストロンチウム-90の分離計測

 ストロンチウム-89とストロンチウム-90の分離計測にはつぎの3つの方法がある。

(1) ストロンチウムフラクションの放射能及び同フラクションからミルキングによって分離したイットリウム-90の放射能を計測し、差し引きによってストロンチウム-89及びストロンチウム-90の量をそれぞれ求める。2)

(2) 分離したストロンチウムフラクションの放射能を、異なった二つの時刻において計測し、その減衰から計算によってストロンチウム-89及びストロンチウム-90の量をそれぞれ求める。

(3) β線スペクトロメトリによって、ストロンチウム-89とストロンチウム-90を直接分離計測することによりそれぞれの量を求める。

  5.3.4 計測装置

 計測装置としてはGM計数装置、液体シンチレーション計数装置等を使用する。

 5.4 トリチウム

 トリチウムは低エネルギ純β線放出核種であるので、一般的には液体シンチレーション計数装置を用いて計測する。

  5.4.1 前処理

 試料水中に懸濁物、有機物やハロゲンを含む無機塩類等が含まれていると、トリチウムの低エネルギβ線が自己吸収を受けたり、クエンチング(消光)を起こしたりして計数効率が下がる。また、原子炉施設からの排気及び排水にトリチウム以外の放射性核種が含まれている場合はトリチウムの計数エネルギ領域に影響を与える。この場合には、トリチウム量を正確に測定するため計測前に試料水を蒸留し精製する必要がある。

 排気中のトリチウム水蒸気に関しては、冷却凝縮法による場合は得られた水試料の一部を計測試料とする。

 液体捕集法による場合は捕集水の一部を計測試料とする。

 固体捕集法による場合は吸着剤に捕集された水分を一部脱着し計測試料とする。この場合、水分脱着前に吸着剤を十分に混合し均一にする。

  5.4.2 シンチレータの選択

 トリチウム計測に使用するシンチレータとしては、乳化シンチレータあるいは、ジオキサン-ナフタレンを溶媒とする親水性シンチレータを用いる。

 シンチレータは、市販の試薬を用いて調製するか、市販の調合済みのシンチレータをそのまま使用する。

  5.4.3 計測

 計測試料の適当量をシンチレータと混合し、液体シンチレーション計数装置を用いて計測する。

 5.5 全α放射能及び全β放射能

  5.5.1 全α放射能

(1) 計測試料の調製

 粒子状物質についてはろ紙上に捕集した試料をそのまま計測試料とする。自然に存在するラドン及びトロンの娘核種の影響を除くため捕集後計測までに約1週間デシケータ中等に保管する。

 液体状放出放射性物質については、あらかじめよく撹拌した試料約10mlを試料皿に分取し、赤外線ランプの下で乾燥し、乾燥後試料皿をガスバーナで熱し焼付けを行い計測試料とする。

(2) 計測

 ガスフロー型比例計数装置、ZnS(Ag)シンチレーション計数装置等を使用して計測する。

  5.5.2 全β放射能

(1) 計測試料の調製

 粒子状物質についてはろ紙上に捕集した試料をそのまま計測試料とする。自然に存在するラドン及びトロンの娘核種の影響を除くため捕集後計測までに約1週間デシケータ中等に保管する。

 液体状放出放射性物質については、あらかじめよく撹拌した試料約10mlを試料皿に分取し、赤外線ランプ等で乾燥して計測試料とする。

(2) 計測

 ガスフロー型GM計数装置、ガスフロー型比例計数装置等を使用して計測する。

参考文献

1) 科学技術庁編;ゲルマニウム半導体検出器を用いた機器分析法(1978)
2) 科学技術庁編;放射性ストロンチウム分析法(1974)

 Ⅵ 放射能計測装置の校正

 各種の放射能計測装置により得られた計数値等をもとに放出放射能量を算出するためには、計測装置の計数効率等を求めるための校正を実施しておく必要がある。計数効率は、一度求めておけば、定期的な点検が行なわれ、計測装置は正しく維持管理されている限り大きく変化するものではないが、適切な頻度で変化がないことを確認する必要がある。

6.1.1 希ガスの計測装置

 希ガスの計測装置は、実際の試料の核種毎の測定によって求められたそれぞれの放射能濃度〔μCi/cm3〕の合計値と計測装置の計数率〔cps〕又は電離電流値〔A〕とを対応させることにより校正を行うことが望ましいが、現在のBWR及びPWRでは試料の放射能濃度が低く、核種毎の測定が困難な場合が多い。したがって、校正としては標準線源や校正用試料(以下「標準線源等」という。)を用いて計測装置の計数効率又は電離効率のエネルギ依存性を求めることが主体となる。

 また、校正は実際に使用している測定容器を用いて行うことが望ましいが、形状・材質が同じような校正用測定容器を用いてもよい。

(1) 計測装置設置前の初期校正
 ① 1次校正

 気体状校正用試料(クリプトン-85、キセノン-133等)を1核種毎に測定容器内に導き循環させながら計数値又は電離電流値を求め、この計数値等と測定容器中の校正用試料の放射能とから計数効率又は電離効率(cps/dps等)を求める。

 気体状校正用試料では計数効率又は電離効率が求められないエネルギ範囲については、他の標準線源等又は計算によって補間し、計数効率又は電離効率のエネルギ依存性を求める。

 さらに、2次校正のために、一定の幾何学的条件において数種類の標準線源等を用いて、1次校正によって求めた計数効率又は電離効率との相対的な関係も同時に求めておく。

 ② 2次校正

 設置する計測装置と同型式の装置について既に1次校正が実施されている場合は、所定の幾何学的条件において標準線源等を用いて、1次校正実施済みの同型式の装置と同様な計数効率又は電離効率が得られることの確認を行えば、1次校正を省略することができ、1次校正実施済みの同型式の装置の計数効率又は電離効率をそのまま用いてもよい。

(2) 計測装置設置後の定期校正

 定期的な校正においては、1核種又は混合組成の標準線源等を用いて、既存の計数効率又は電離効率のエネルギ依存性が大きく変化していないことを確認する。

(3) 換算係数

 以下に、ある核種組成を想定した場合の換算係数の求め方を示す。

 計測装置の正味計数率をn(cps(一日平均値)、電離箱を用いて電流を計測する場合はA(一日平均値)、以下本解説においては便宜的に前者の場合を示す。)、核種iの存在割合をpi、測定容器内の放射能濃度をC〔μCi/cm3〕とすると

ここで
ηMi核種iの計数効率〔cps/dps〕
V:測定容器の容量〔cm3
m:試料中に存在する放射性核種の数
ただし

ここで
ij核種iから放出されるj番目のγ線又はβ線の放出比
ηij核種iから放出されるj番目のγ線又はβ線に対する計数効率
〔cps/γps又はcps/βps〕
l:核種iから放出されるγ線又はβ線の本数
したがって(1)式から換算係数Kは

 以上のように核種組成を推定することにより換算係数Kを求めることができる。

 核種組成の決定には放出される希ガスのレベルに応じて次の3つの方法が考えられる。

 ① 排気筒等における排気をGe半導体スペクトロメータにより、核種分析することが可能な場合は、排気筒等の実際の排気を核種分析し、その組成を決定できる。この場合は、核種毎の放射能濃度〔μCi/cm3〕の合計値と計測装置の計数値等とを比較することにより換算係数を直接に求めることができる。

 ② 排気筒等における核種組成を実測により決定することが困難な場合はできる限り、希ガス放出の主な系統の発生源に近い処理・希釈前の高濃度試料を計測することにより核種組成を決定するか、又はそれも困難な場合は、適切な評価方法により推定し、これを排気筒等における核種組成とみなすことができる。

 また、この場合の測定点から排気筒等までの減衰時間は、それぞれの設備の設計値を用いて推定する。

 ③ BWRの原子炉停止時等において放出される希ガスの核種組成が短時間に大きく変化する場合は、停止後の時間経過等を考慮して適切な核種組成を推定し、これを排気筒等にお枝る核種組成とみなすことができる。

 なお、①、②において実測により核種組成を決定する場合には、平常運転時には核種組成の変化は少ないが、1カ月に1回程度確認のための計測を行なうことが望ましい。

第6.1図 希ガス用γ線計測装置のエネルギ依存性(例) 1)

第6.2図 希ガス用β線計測装置のエネルギ依存性(例)

  6.1.2 Ge半導体スペクトロメータ

 Ge半導体スペクトロメータは科学技術庁編「ゲルマニウム半導体検出器を用いた機器分析法」に示されている方法に準じて校正を行うことが望ましい。

  6.1.3 ストロンチウムの計測装置

 ストロンチウムの計測装置は、ストロンチウム-89及びストロンチウム-90のそれぞれの放射能標準体を用いて校正用試料を作り、校正を行う。固体状計測試料の場合には、β線の自己吸収を補正するため、試料の厚さと計数効率との関係を求めておく必要がある。

  6.1.4 トリチウムの計測装置

 トリチウムの計測装置は、トリチウムの放射能標準体を用いて校正を行う。この場合、試料水量の多少等によりクエンチングが変化し、そのため計数効率も変化するので、試料ごとの計数効率の決定が必要である。

(1) 外部γ線源を有する計測装置の場合は、水量を変えた複数個の校正用試料を用い、外部線源チャンネル比と計数効率との関係を求める。

(2) 外部γ線源を有しない計測装置の場合は、試料チャンネル比法又は、内部標準法による。

  6.1.5 全α全放射能及び全β放射能の計測装置

全α放射能及び全β放射能の計測装置は使用の便を考慮し、全α放射能計測の場合には、天然ウラン(U3O8)のα標準線源を、全β放射能計測の場合には、天然ウラン(U3O8)のβ標準線源を用いるものとする。


参考文献

1) 石森富太郎:原子炉工学講座2 放射線防護P.120(1973)

 Ⅶ 放出放射能量の算出

 放射性物質の放出量は、それぞれの試料の計数値からバックグラウンドを差引いて正味計数値を求め、換算係数、減衰補正、圧力補正、排気筒流量、排水量等を考慮して算出する。

 7.1 希ガス

 希ガス放出量の算出は、24時間以内の積算計数値をもとに行う。

 ただし、ガス減衰タンクからの放出時など、より短時間のデータ処理が必要な場合は、実情に合わせて行ってもよい。

 積算時間を24時間とした場合の例を以下に示す。

  7.1.1 放出放射能量算出方法


  7.1.2 正味数計率nn

 試料計測時の計数率ns(24時間平均計数率cps)からバックグラウンド計数率nb(24時間平均計数率cps)を差引いたものを正味計数率とする。

  7.1.3 換算係数

 6.1.1(3)で求めた換算係数を用いる。

  7.1.4 圧力補正P0

 オフライン方式による場合は、希ガス測定容器内が常圧でない場合が多いので、試料空気の見掛の放射能濃度C1に対して圧力補正係数P0を乗じ、実際の放射能濃度C0を求める必要がある。

  7.1.5 排気量F〔m3/day〕

 排気量は、設計流量を用いるものとするが、実測やファンの効率曲線等適当な方法で評価することが望ましい。

  7.1.6 検出限界計数率

① 以下に検出限界計数率を求めるための一般式を示す。

ns-nb
〔cps〕
s:試料計測時の計数率〔cps〕
b:バックグラウンド計数率〔cps〕

1=nn×K〔μCi/cm3
0
0=C1×P0〔μCi/cm3
F 〔m3/day〕
q=C0×F×106〔μCi/day〕

 試料の計測時間をTs〔s〕、計数値をNs〔counts〕とすると試料の計測時の計数率はns=Ns/Ts〔cps〕、また、バックグラウンド計測において計測時間をTb〔s〕、計数値をNb〔counts〕とすると、バックグラウンド計測時の計数率はnb=Nb/Tb〔cps〕となり、正味計数率nn〔cps〕はnn=ns-nbで表わされる。

 ここで、標準偏差σr

正味計数率nnをnn=ns-nb=3σrとおいた時に得られる次の式

を検出限界計数率とする。

② ①で求めた検出限界計数率の一般式は放射線計数の統計変動のみを考慮したものであり、希ガス測定に対しては、一般にその他のバックグラウンド計数の変動要因を加味する必要がある。これらは、測定系の周囲条件の変動等によるものであるが、その各々を定量的にとらえることは困難であり、総合された標準偏差σbを経験的に決める必要がある。

 σbを求める方法としては、例えば以下に示す方法も許されよう。

 月1回~数回、測定容器をパージして約10分~1時間重度の一定時間バックグラウンドを計測し、計数率nbiを求める。次式により、これを1~数カ月まとめてσbを算出する。

bm個のバックグラウンド計数率の平均値
m:バックグラウンド計測回数

 この値を使って次の1~数カ月の変動幅を設定する。

 このようにして、1年以上の経験により、年間変動の傾向が把握されてくれば、それ以後の変動幅は年間で設定することも出来る。

 以上のように経験的にσbを求めた場合の検出限界計数率は3σbとする。

 7.2 よう素、粒子状γ線放出核種及び液体状γ線放出核種
  7.2.1 放出放射能量算出方法


  7.2.2 減衰補正

 核種の半減期が、試料の捕集期間、計測までの放置期間及び計測時間と比較して、十分長くない時は、そのための補正が必要である。


s捕集時間 〔s〕
r計測までの放置期間 〔s〕
m計測時間 〔s〕
λj核種jの崩壊定数 〔s-1

  7.2.3 検出限界計数率

 検出限界計数率は、7.1.6①の一般式に準じて求める。

 7.3 ストロンチウム-89及びストロンチウム-90

  7.3.1 放出放射能量算出方法

イットリウムミルキング法の場合について以下に例示する。

(1) 90Sr


(2) 89Sr

 炭酸ストロンチウムの計数率ntotalを求める。これは、90Sr+90Yを含んだ計数率であるので、それを差引いて89Srに対する計数率nn(89)を求める。

 89Srの量は

(3) 計数効率及びnn(89)の求め方は、科学技術庁編「放射性ストロンチウム分析法」を準用する。

  7.3.2 検出限界計数率

 検出限界計数率は、7.1.6①の一般式に準じて求める。

 7.4 トリチウム

  7.4.1 放出放射能量算出方法

(1) 放射能濃度
① 液体状試料

② 気体状試料
 a) 試料空気中のトリチウムを冷却凝縮により採取する場合

 次式により試料空気中の放射能濃度に換算する。

 ただし、捕集効率90%以上の場合はb)の方法に準じて求める。

 b) 試料空気中のトリチウムを固体捕集方法により採取する場合

 試料空気中の放射能濃度Cは、捕集試料水中のトリチウム濃度の測定値CW〔μCi/g〕から次式により求める。

 c) 試料空気中のトリチウムを液体捕集法により採取する場合

 試料空気中の放射能濃度Cは、バブラ水中のトリチウム濃度の測定値CW〔μCi/g〕から次式により求める。

(2) 放出放射能量

q=C×F×106 〔μCi/月〕
F:期間中(1カ月)排気量又は排水量 〔m3/月〕

  7.4.2 計数効率及び検出限界計数率

 計数効率は、クエンチング校正用標準線源及びバックグラウンド試料を用いて、チャンネル比法によりクエンチング補正曲線を求めておくか、もしくは計測試料ごとに内部標準法により求めるものとする。これらの方法については、科学技術庁編「トリチウム分析法」又は、JIS-Z-4513を準用する。

 検出限界計数率は、7.1.6①の一般式に準じて求める。

 7.5 全α放射能及び全β放射能

  7.5.1 放出放射能量算出方法

(1) 放射能濃度

(2) 放出放射能量
q=C×F×106 〔μCi/週〕又は〔μCi/月〕
F:捕集期間中(気体一週間、液体1カ月)の排気量又は排水量〔m3/週〕又は〔m3/月〕

  7.5.2 検出限界計数率

 検出限界計数率は、7.1.6①の一般式に準じて求める。


 Ⅷ 記録方法

 測定された結果は、一定の方法と様式により継続的に記録し集計されることが重要である。

 国や地方公共団体への報告は、これらの記録に基づき別に定められた様式に従って行われるものである。

 8.1 記録

 測定結果の記録にあたっては、各測定項目ごとに区分け、整理し、測定内容が確認できることが必要である。そのために必要とされる一般的な記録項目は、以下に示すとおりである。

(1) 測定日時(試料採取日時、捕集時間、計測日時)
(2) 測定方法(試料採取方法、分析方法、計測方法)
(3) 計測装置の種類、型式及び性能
(4) 測定場所
(5) 指示値及び計測条件(バックグラウンド値、計測時間)
(6) 測定結果(検出限界濃度、放射能濃度、放出流量、放出放射能量)

 これらの事項の他に、放出放射能量や放出方法に影響を与えるような原子炉施設の運転状態の変化があった場合には、その内容についても注記しておくことが望ましい。

 計測方法、計測装置の種類や性能のように各記録様式に共通な事項については、別に手順書、説明書等を作成しておき、これらの記録は、略号等で引用するのが実際的である。

 また、バックグラウンド計測、点検、校正等により欠測となった期間については、原則として、最小集計期間の平均濃度値が継続したものとして補正するものとし、その内容を記録する。

 8.2 集計

  8.2.1 集計の対象

 集計の対象は、指針第1表に明示した主要な核種、希ガス及び全α放射能について、それらの測定結果のうち、検出限界濃度を超えるものとし、測定結果が、検出限界濃度以下のものについては、集計の対象外とする。

 指針第1表に明示した主要な核種以外のγ線放出核種が検出限界濃度を超えて検出された場合は、半減期が短かく、周辺環境への影響が少ない核種も含まれることを考慮して、集計、記録は、半減期8日以上の核種と8日未満の核種に分けて行う。

 全β放射能については、その測定結果と各核種毎の測定結果とを比較して、核種分析対象以外の純β線放出核種が含まれていることが明らかになった場合には集計の対象とする。

  8.2.2 集計方法

(1) 集計期間

 集計は、指針第2表にしたがい、8.1の記録をもとに、各測定対象核種の計測頻度との関連で行うが、このときの各集計期間の設定は以下のとおりとする。

日……当該日の零時から、24時までとする。
週……原則として、特定の曜日から始まる7日間とする。
月……当該月の1日から末日までとする。
四半期……4月1日、7月1日、10月1日、1月1日を始期とする3カ月間とする。
年度……4月1日を始期とする1年間とする。

(2) 補正

 試料採取期間が、集計の当該1カ月又は3カ月にまたがった場合には、それぞれの日数に応じて割振るための補正を行うものとする。

(3) 集計方法

 集計にあたっては、多種の数値を記録する必要があり、これらの数値は、整数、小数又は10のべき数で表示されることとなるが、特に放出放射能量については、統一された表示方法とすることが望ましいので、本指針では有効数字2桁の指数表示とする。放出放射能量を有効数字2桁で表示することにより、各集計期間について、場合によっては、記録値の合計値と集計値が異なることがある。

 測定した結果が検出限界濃度以下の場合は、集計の対象とはならないが指針第1表に明示した主要な核種については、検出限界濃度以下であったことを明記するものとする。

 また、集計期間を通じて、測定結果が検出限界濃度以下となった場合は、当該集計期間中における検出限界濃度の最大値を記録すること。

 具体的な集計例を参考として以下に示す。



 Ⅸ 用語の説明

 本指針に使用されている用語の意味は次のとおりである。

平常運転時

 起動、停止を含む通常の運転、保守及びそれに伴って当然予想される範囲の変動を含む原子炉施設の状態をいう。

測定

 試料採取から最終結果の算出までを含む全体のプロセスをいう。ここで最終結果とは、目的とする放射能量、放射能濃度等の値である。測定のプロセスには、試料採取、前処理、化学処理、計測試料の調製、放射能計測、目的量の算出等が一般に含まれる。

計測

 計測装置により、放射線計数値などの直接読取値を求める行為をいう。ここには計数時間及び計数効率で割るといった多少の算術処理も含まれる。

気体状放出放射性物質

 原子炉施設の排気筒等から環境に放出される放射性物質をいう。ここには希ガス等のガス状物質、よう素等の揮発性物質及び粒子状物質が含まれる。

液体状放出放射性物質

 原子炉施設の廃液タンクから環境に放出される放射性物質をいう。ここには、液体に懸濁する放射性物質も含まれる。

希ガス

 キセノン、クリプトン及びアルゴンの放射性同位体をいう。

全α放射能

 核種の如何を問わず、α粒子1個の放出が1崩壊に相当すると見なして評価した見かけの放射能をいう。放射性核種から放出されるα粒子のエネルギは比較的せまい範囲にあり、かつ、後方散乱がほとんど無視できるので、たとえば天然ウランα標準線源を用いて校正されたガスフロー型比例計数装置又はZnS(Ag)シンチレーション計数装置により、十分薄い試料を計測する場合には、かなり正確な結果を得ることができる。

全β放射能

 核種の如何を問わず、β粒子1個の放出が1崩壊に相当すると見なして評価した見かけの放射能をいう。放射性核種から放出されるβ粒子のエネルギは非常に広範囲にわたっており、エネルギによってβ粒子の吸収が大幅に異なること、試料支持体によるβ粒子の後方散乱が材質及びエネルギにより異なること、β粒子のみに応答する検出器が無いこと等の理由で、試料の核種組成及び測定方法の如何により、全β放射能の測定結果は変わる。このため、複数の放射性核種の混合物について、核種分析の結果の合計と、その全β放射能とを比べるさいには注意が必要である。

感度限界

 ある計測試料に対する計測装置の指示値(バックグラウンドを含む。)がその計測装置のバックグラウンドに対して有意に増加したと認められる最少の増加分をいう。感度限界は、計測装置のバックグラウンド指示値の変動に起因するその不確かさに関係した量である。

 変動の原因には、放射線計数の統計変動とそれ以外のものとがある。前者の場合、計数型計測装置にあっては、バックグラウンド計数(又は計数率)の偶然誤差がそのおもなものである。

 電離電流計測装置にあっては、その時定数に比べて十分長い期間のバックグラウンド指示値の全変動幅の半分を標準偏差の3倍と考えてよい。

 後者については、環境の放射線レベルの変動や温度変化などの要因が考えられるので、計測場所によって異なり、また必らずしも偶然的とは限らない。したがって、それぞれの場合について実測により評価する必要がある。

 計測室に設置され、十分な放射線しゃへいを施された計測装置においては、後者の寄与は少なく、ほとんど無視しうるのが通常であるが、希ガスの計測装置のように現場に設置される計測装置においては、むしろ後者の方が支配的となることが多い。

 両者の変動を考慮して求められた実効的な標準偏差σのある倍数kσを感度限界とする。kの値を大きくするほど感度限界値にひとしい計測結果の信頼度は増加するが、kの値を2ないし5の範囲内にとるのが普通である。

検出限界濃度

 採取した空気又は水試料の放射能濃度C〔μCi/cm3〕は、計測結果の計数率n〔s-1〕又は電離電流値Ⅰ〔A〕から次式によって求められる。

又は

ここで
V:空気又は水試料の採取量〔cm3
ηM放射能計測装置の計数効率〔cps/dps〕
Y:採取試料から計測試料を調製するさいの対象放射性核種の回収率。この中には、ろ紙の捕集効率、化学回収率、分取の割合などが含まれる。
K:計測試料の放射能と電離電流値との換算係数〔μCi/A〕

 上式のn又はIにそれぞれの感度限界の値を代入したときに得られる濃度Cminを検出限界濃度とする。

測定下限濃度

 測定を計画するにあたって、目標とすべき検出限界濃度をいう。

電離効率

 電離箱によるβ線計測において、実際に得られる電離電流値とβ線のエネルギがすべて電離箱の気体中で消費されたと仮定した場合に得られるべき電離電流値の比をいう。

計数効率

 計数型計測装置の与える計数率と計測試料中に含まれる放射性核種の壊変率との比(たとえばcps/dps)又は試料から単位時間に放出される放射線粒子(たとえばあるエネルギのγ線というように特定の放射線のみを対象とすることがある。)の数との比(たとえばcps/γps)をいう。

コンポジット試料

 採取した複数個の試料の一部又は全部を加え合せて作った試料をいう。

校正

 一般に測定装置の指示値と計測すべき物理量とを関連づける行為をいう。放射能計測の場合、校正は通常、計測試料と同形の既知量の放射能を含む校正用試料を計測することによって行われる。校正用紙料中の放射能量は、原則として、トレーサビリテイがある(すなわち、最終的に国家標準によって精度が保証される状態にある)ことが必要である。

校正用試料

 放射能標準体(溶液又はガス状で放射能濃度の値付けされたもの)の一定量を使用して作った校正用(計数効率決定用)の計測試料をいう。多くの場合、自製である。

標準線源

 全放射能又は粒子放出率の値付けがされた密封放射線源をいう。多くの場合既製である。

バックグラウンド

 計測試料を置かないとき、あるいは、ブランク試料を置いたときに得られる計測装置の指示値をいう。バックグラウンドの原因は外部からの放射線、検出器の放射能汚染などである。γ線スペクトロメトリの場合には、解析対象γ線より高いエネルギーの他核種からのγ線のコンプトン連続分布が、バックグラウンドの大部分を形成する。これをベースラインということがある。


 付録 核データ表

 Ge半導体スペクトロメータを用い、γ線エネルギ分析を行うことにより、核種の同定とその核種の放射能を定量するために必要な核データを表にまとめて示した。第1表は、各核種について、その核種を代表する放出比の高いγ線のエネルギを見出しとしてその核種名と放出比をエネルギ順に示したものである。第2表は各核種の崩壊形とその割合、半減期、生成反応と親・娘の関係、主な放出γ線エネルギと放出比並びに放射能を定量するために利用するγ線に対し妨害を与えるようなγ線とその核種等についてまとめたものである。

 以下に各表を利用する場合の説明を行う。

 第1表について
66.1638 85.1 Cs-137

① 見出しとなるγ線エネルギ〔keV〕
② 当該核種のγ線絶対放出比〔%〕
③ 見出しのγ線エネルギに該当する核種

第2表について


①核種

②崩壊形式とその割合〔%〕1)
β-β-崩壊
ββ崩壊
α:α崩壊
IT:核異性体転移
EC:軌道電子捕護

③半減期2)
S:秒
M:分
D:日
Y:年

④ 主な生成反応(GEN)3)
NTH:主に熱中性子、熱外中性子による(n、γ)反応
NFA:主に速中性子による(n、α)、(n、p)、(n、n′)、(n、2n)反応
NFI:熱中性子による235Uの核分裂反応、数値は分裂生成系列の収率を%で示す。
NAT:天然放射性核種
PHO:γ線による(γ、n)、(γ、γ′)、γ、p)反応
CHA:加速された荷電粒子による反応

⑤ 娘核種(DAU)3)
 ①に示した核種の娘核種

⑥ 親核種(PAR)3)
 ①に示した核種の親核種とその半減期

⑦ γ線エネルギ〔keV〕と放出比

γ線エネルギはR.L.Heath4)の値を用いた。またこの欄に示したγ線は、Ge半導体スペクトロメータで当該核種を単独に計測した場合、γ線ピークがピーク近傍のバックグラウンドレベルよりも2倍以上高く現われるようなγ線のみを選んで示した。γ線エネルギーの次に示す数値はγ線放出比で、W.W.Bowman2)の値を用いた。A、R、Xは下記の意味である。

A:γ線絶対放出比〔%〕
B:γ線相対放出比で当該核種のγ線のうち、もっとも放出率の高いものを100としたときの値
X:X線

 放射能を定量するためのγ線エネルギの前には○印を付けた。またγ線エネルギの後に付けたDE、SEは下記の意味である。

 DE:1022keV以上のγ線が検出器に入射し、電子対生成を生じ、発生した陽電子が消滅するとき511keVのγ線を2本放出する。この2本のγ線が検出器内で吸収されずに検出器外へ逃げた場合に入射γ線エネルギよりも1022keV低エネルギ側に生ずるγ線ピーク

 SE:上記DEと同様な現象で、発生した2本の511keVのγ線のうち1本が検出器内に吸収され、残りの1本が検出器外へ逃げた場合に、入射γ線エネルギよりも511keV低エネルギ側に生ずるγ線ピーク

⑧ 妨害γ線エネルギ〔keV〕とその放出比〔%〕並びに核種名
 γ線放出比の記号は前記と同じ

参考文献
1) C.Michael Lederer,Jack M.Hollander and Isadore Perlman:Table of Isotopes,Sixth Edition,John Wiley & Sons,INC.,New York
2) W.W.Bowman and K.W MacMurdo:Atomic Data and Nuclear Data Tables,Vol.13,No.2~3(1974)
3) G.Erdtmann und W.Soyka:Die γ-Linien der Radionuklide Band I.Jul-1003-AC(1973)
4) R.L.Heath:Gamma-ray spectrum catalogue,Ge(Li)and Si(Li)spectrometry,Third edition,Volume 2,of 2,ANCR-100-2 Aerojet Nuclear Company

第1表 核種のエネルギ順索引表

第2表 核データ表











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