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中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更並びに使用済燃料の処分の方法の変更)について(答申) 53原委第368号
昭和53年7月11日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長
昭和53年5月18日付け53安(原規)第165号(昭和53年6月19日付け53安(原規)第196号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。 記 ① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。 ② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。 (別添)
昭和53年6月21日
原子力委員会
委員長 熊谷 太三郎 殿
原子炉安全専門審査会
会長代理 三島 良績
中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に係る安全性について
当審査会は、昭和53年5月19日付け、53原委第279号(昭和53年6月19日付け、53原委第360号をもって一部補正)をもって審査も求められた標記の件について結論を得たので報告する。 Ⅰ 審査結果 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書」(昭和53年5月12日付け、申請及び昭和53年6月12日付け、一部補正)に基づき審査した結果、本稿子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。 Ⅱ 変更内容 1 放射性固体廃棄物の廃棄設備の変更(1、2号炉)
(1)固体廃棄物貯蔵庫(1、2号炉共用)固体廃棄物貯蔵庫第2棟の貯蔵能力をドラム缶詰廃棄物約35,000本に変更する。(変更前は約7,000本)
(2)復水系粉末樹脂貯蔵槽(1号炉及び2号炉)容量約380m3のもの3基(1号炉)及び5基(2号炉)を設置する。 (3)雑固体廃棄物保管室(1、2号炉共用)床面積約1,100㎡のものを設置する。 (4)可燃性雑固体廃棄物焼却炉(1、2号炉共用)処理能力約475,000kcal/h(ポリエチレン約43㎏/h又は紙約113㎏/h相当)のもの1基を設置する。 (5)サイトバンカ(1、2号炉共用)使用済炉内構造物を貯蔵する設備一式を設置する。 2 復水脱塩装置の変更(2号炉)
復水脱塩装置に復水処理容量約4,800t/hのろ過脱塩装置1系統を設置する。 3 原子炉格納施設の変更(1号炉)
原子炉格納施設に可燃性ガス濃度制御系を設置する。 Ⅲ 審査内容 1 放射性固体廃棄物の廃棄設備の変更
(1)概要
本変更は固体廃棄物貯蔵庫第2棟の貯蔵能力を増強するとともに、雑固体廃棄物保管室、可燃性雑固体廃棄物焼却炉、サイトバンカ、復水系粉末樹脂貯蔵槽等を設置するものである。 本変更に係る1号炉用復水系粉末樹脂貯蔵槽を収納する復水ろ過脱塩装置建家は1号タービン建家北側(標高6m)の地点に、鉄筋コンクリート造りとし、その基礎は岩盤に固着され、復水系粉末樹脂貯蔵槽と共に重要度分類Bクラスの耐振設計とされる。 各槽は鉄筋コンクリート壁でそれぞれ分離して配置され、復水ろ過脱塩装置建家周囲のコンクリート壁は十分なしゃへい効果を有する厚さとされる。 復水ろ過脱塩装置建家内にはエリアモニタを設け、同建家内の空間線量率を測定し、その結果を中央制御室で連続記録するとともに設定値を超えた場合には、警報を発するように設計される。 復水ろ過脱塩装置建家内の換気系の排気は排気フィルタユニットを通した後、排気筒から放出するようになっている。 また、本変更に係る廃棄物減容・貯蔵設備及び2号炉用復水ろ過脱塩装置を収納する廃棄物減容処理装置建家は、2号タービン建家南側(標高6m)の地点に鉄筋コンクリート造りとし、その基礎は岩盤に固着され、廃棄物減容・貯蔵各設備と共に重要度分類Bクラスの耐震設計とされる。 各設備は、鉄筋コンクリート型でそれぞれ分離して配置され、廃棄物減容処理装置建家周囲のコンクリート壁は十分なしゃへい効果を有する厚さとされる。 廃棄物減容処理装置建家内にはプロセスモニタ及びエリアモニタを設ける。プロセスモニタは廃棄物減容処理装置建家換気系排気及び可燃性雑固体廃棄物焼却炉排ガスの放射能を測定する。エリアモニタは廃棄物減容処理装置建家内の空間線量率を測定する。これらの結果は、廃棄物減容処理装置建家制御室で連続記録されるとともに、設定値を超えた場合には警報を発するように設計される。 廃棄物減容処理装置建家内の換気系の排気は排気フィルタユニットを通した後、同建家排気筒(地上高さ約100m)から放出する。 以上の事から復水ろ過脱塩装置建家及び廃棄物減容処理装置建家の設計方針等は妥当なものと判断する。 (2)固体廃棄物貯蔵庫(1,2号炉共用)
本変更は固体廃棄物貯蔵庫第2棟の貯蔵面積を約2,200㎡から約10,800㎡に拡大し、貯蔵能力をドラム缶詰廃棄物約7,000本から約35,000本に変更するものである。本変更に伴い増設分の貯蔵能力は1,2号炉から発生する量の4年分以上となる。 本変更に当ってはしゃへい設計及び貯蔵方法等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 (3)復水系粉末樹脂貯蔵槽(1号炉及び2号炉)
本設備は復水ろ過脱塩装置の運転に伴い発生する使用済粉末樹脂を貯蔵するとともに、その放射能を減衰させるためのものであり、1号炉の貯蔵槽は復水ろ過脱塩装置建家内に、また、2号炉の貯蔵槽は廃棄物減容処理装置建家内に設置される。 本設備は容量約380m3のものが1号炉については3基、2号炉については5基設置され、1、2号炉から発生する粉末樹脂の4ないし5年分を貯蔵することができる能力を有しており、この間に放射能の減衰がはかられる。 また、貯蔵槽の内面はステンレス鋼でライニングされ、放射性物質の漏えいが防止される。 本設備は貯蔵方法等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 (4)雑固体廃棄物保管室(1、2号炉共用)
本設備は使用済換気空調用フィルタ、保温材、配管、弁等の雑固体廃棄物を保管するものであり、保管室は構造的に分類された複数個の室からなり、廃棄物減容処理装置建家内に設置される。 本設備の床面積は、保管室約1,000㎡、ドライピット約90㎡であり、1、2号炉から発生する雑固体廃棄物の約10年分を貯蔵することができる能力を有している。 本設備は保管方法等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 (5)可燃性雑固体廃棄物焼却炉(1、2号炉共用)
本設備は、低レベルの可燃性雑固体廃棄物及び廃油の焼却減容をはかるための設備であり、焼却炉、セラミックフィルタ、高性能フィルタ、排ガスブロワ、排気筒、焼却灰処理装置等から構成され、廃棄物減容処理装置建家内に設置される。 焼却炉は耐火性能を有する自燃式であるが、焼却炉の予熱にはプロパンガスが用いられる。その処理能力は約475,000kcal/h(ポリエチレン約43㎏/h、又は紙約113㎏/h相当)である。 焼却灰はドラム缶に充てんし、焼却灰ドラム缶貯蔵室に保管される。焼却に伴う排気は1次セラミックフィルタ、2次セラミックフィルタ及び高性能フィルタを経て、焼却炉用排気筒(地上高さ約25m)から排気される。本設備の除染係数は2次セラミックフィルタまでで105以上となるように設計される。 また、本設備の系統内の温度、内圧及び1次セラミックフィルタ差圧は監視され、異常の場合には燃焼物の投入が自動的に停止されるように設計される。 本設備は焼却排ガスの漏えいを防止するため、内部を負圧状態となるように設計される。また、万一焼却炉の圧力が上昇した場合でも圧力逃がし系統が設けられるので、設備は保護される。 本設備は処理方法等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 (6)サイトバンカ(1、2号炉共用)
本設備は使用済制御棒、燃料チャンネルボックス等の炉内構造物を貯蔵・保管するための設備であり、廃棄物減容処理装置建家内に設置される。 サイトバンカは容積約1,150m3及び約800m3のものが、それぞれ1基設けられ、1号及び2号原子炉からとり出された炉内構造物の20年分以上を貯蔵できる能力を有している。 また、サイトバンカの深さは約9mであり、水による十分なしゃへいがなされるとともに内面はステンレス鋼のライニングにより、水の漏えいを防止するように設計されている。さらに万一、ライニングの損傷が生じても漏えいを検知することができるようになっている。 本設備は、貯蔵方法等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 2 復水脱塩装置の変更(2号炉)
本変更は既設の混床脱塩装置の上流にろ過脱塩装置を設置するものであり、廃棄物減容処理装置建家内に設置される。 本設備は、原子炉内への鉄分の持込みを極力少なくすることによりプラント放射能を抑えようとするもので、実機の運転条件を模擬した実験及び先行炉の実績においても、その有効性が確認されている。 また、本設備の運転に伴い発生する使用済粉末樹脂は、新設の復水系粉末樹脂貯蔵槽に貯蔵される。 本設備は、鉄分除去性能等について十分考慮されており、妥当なものと判断する。 3 原子炉格納施設の変更(1号炉)
本変更は、原子炉格納容器内の可燃性ガスの発生源として、冷却材喪失事故後におけるジルコニウム・水反応及び水の放射線分解を考慮して、これら可燃性ガス濃度を余裕をもって制御するため可燃性ガス濃度制御系を設置するものである。 本設備は、冷却材喪失事故が発生した後に、原子炉格納容器内雰囲気中の水素ガス濃度を4vol%以下あるいは酸素ガス濃度を5vol%以下に維持するように設計される。 水素又は酸素ガスの燃焼限界に関する各種の実験結果によれば水素又は酸素ガス濃度のいずれか一方が前述の制限値以下に維持されるならば、燃焼反応は生じないことが確認されている。 可燃性ガス濃度制御系の容量を定めるに当っては、十分な安全余裕をもった前提条件が用いられている。即ち、ジルコニウム・水反応により発生する水素ガスは、ECCS解析値よりも更に厳しい値を採用し、放射線吸収に対する水素ガス及び酸素ガスの発生割合としては、水の放射線分解に関する各種の実験結果からみて十分な安全余裕をもった値であるG(H2)=0.5(分子/100eV)、及びG(O2)=0.25(分子/100eV)が用いられている。 これらの条件を基に、冷却材喪失事故後における原子炉格納容器内可燃性ガス濃度の時間変化を検討した結果、本設備は、原子炉格容器内の可燃性ガス濃度を制限値以下に十分抑制できると判断する。 4 平常運転時における原子炉施設周辺の被ばく線量評価(1、2号炉)
今回の変更に伴い、本原子炉施設が「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」(以下「線量目標値に関する指針」という。)に適合していることを確認するため、平常運転時に放出される気体廃棄物及び液体廃棄物中の放射性物質による原子炉施設周辺の被ばく線量について「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する標価指針」に基づき、評価を行った。 その結果、希ガスからのγ線による全身被ばく線量が最大となるのは排気筒から東方約850mの敷地境界上であり、その地点における全身被ばく線量は液体廃棄物の寄与を含めて年間約1.8mremである。 また、気体廃棄物中のよう素による甲状腺被ばく線量が最大となるのは排気筒から東方約3㎞の地点であり、その地点における甲状腺被ばく線量は液体廃棄物からの寄与を含めて年間約1.9mrem(幼児)である。 これらの評価結果は、いずれも「線量目標値に関する指針」に示される線量目標値を下まわっている。 Ⅳ 審査経過 本審査会は、昭和53年5月23日第170回審査会において審査を開始し、昭和53年6月21日第171回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。 |
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