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東京大学工学部附属原子力工学研究施設の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(答申)


53原委第89号
昭和53年2月28日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年11月15日付け52安(原規)第334号(昭和53年2月16日付け53安(原規)第73号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



① 標記に係る承認の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項に掲げる承認の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記承認の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和53年2月17日
原子力委員会
  委員長 熊谷太三郎 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

東京大学工学部附属原子力工学研究施設の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に係る安全性について 当審査会は、昭和52年11月15日付け52原委第701号(昭和53年2月16日付け53原委第81号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


Ⅰ 審査結果

 東京大学工学部附属原子力工学研究施設の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に関し、同大学が提出した「東京大学原子炉設置変更承認申請書」(昭和52年11月1日付け申請、昭和53年2月2日付け一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容

1 熱出力の変更

(1)C-、C及びD運転位置における定常運転時の連続最大熱出力を以下の通り変更する。

-及びC運転位置 2KW
D運転位置 100W
 (変更前はC-及びC運転位置100W、D運転位置10W)

(2)D運転位置における非定常運転時の最大積算出力を0.6MW・sec/サイクルに変更する。

 (変更前は0.36MW・sec/サイクル)

(3)反応度パルス運転時の最大積算出力として従来の0.6MW・sec/サイクルのほかに140KW・sec/パルスを追加する。


2 主要な核的制限値の変更

 反応度パルス運転時正印加反応度を0.94%ΔK/K以下に変更する。

 (変更前は0.9%ΔK/K以下)

3 パイルオシレーターの変更

 反応度パルス運転時の第2反応度添加装置として、パイルオシレーター(以下POSという)のうちPOS4及びPOS4Sを追加使用する。


4 核計装の種類の変更

 中間出力監視系を廃止し対数出力ペリオド計測系を設置する。


Ⅲ 審査内容

1 熱出力の変更

 本変更はC、C-及びD運転位置における連続最大熱出力を、他の運転位置において認められている範囲内で上昇させるものである。

 管理区域境界における放射線線量率の実測値に基づき変更後の熱出力に対する被曝線量を評価した結果、管理区域境界外の被曝線量が1週間につき30mremを超えるおそれはなく、また、最大年間運転出力量には変更がないので周辺監視区域境界外における年間被曝線量は従来と変らない。以上のことから本変更は問題ないものと判断する。

 D運転位置における非定常運転時の最大積算出力の変更は、すでに他の運転位置において認められている値と同等であり、燃料体の健全性に与える影響は炉心運転位置によって変らないため問題はないものと判断する。

 また、反応度パルス運転時の最大積算出力の変更は、POS4及びPOS4Sによる反応度パルス運転が追加されたことによるものである。

 最大積算出力140KW・sec/パルスは、この場合のパルス出力発生部での燃料体被覆への歪印加効果を、従来のPOS5による反応度パルス運転時と同程度に制限するものであり、問題ないものと判断する。


2 主要な核的制限値の変更

 本変更は反応度パルス運転時の正印加反応度の制限値を0.9%ΔK/Kから0.94%ΔK/Kに増加させるものである。

 本変更に伴い、反応度パルス運転中に炉心に反応度物質が固着し、最大の0.94%ΔK/Kの正の反応度が投入された状態のままとする最大想定事故時のパルス出力規模、燃料体の最高温度等は従来よりも若干上昇するが、燃料溶融温度より十分低い。また想定事故時の被曝評価の前提条件としては、従来から、燃料中に蓄積された希ガス及びハロゲンの100%放出を仮定しており、評価結果は変らない。

 以上のことから本変更は問題ないものと判断する。


3 パイルオシレーターの変更

 本変更は反応度パルス運転の際の第2反応度添加装置として、従来から使用しているPOS5とともに、POS4及びPOS4Sを使用するものである。

 POS4及びPOS4Sによる反応度パルス運転では、反応度素子の炉心通過速度がPOS5に比べて遅いため、パルス出力形成は燃料体の熱膨張に基づくフィードバック効果により出力発生を終端させる方式となっている。

 この方式では同一ピーク出力に対して積算出力が従来よりも増大するので、燃料体被覆への歪印加効果を抑制し、燃料体の健全性を確保するため、前述の最大積算出力の変更がなされている。これにより、燃料被覆にかかる反応は、十分許容応力以下に抑制される。

 以上のことから本変更は問題ないものと判断する。


4 核計装の種類の変更

 本変更は、これまでの反応度パルス運転の経験に基づき、同運転用核計装のうち中間出力監視系(2系統)を対数出力ペリオド計測系(1系統)に変更するものである。

 対数出力ペリオド計測系は、対数増幅器を用いることにより、1系統で中間出力監視系2系統の範囲を計測することができる。また、出力に対する線形性にも問題はなく、瞬時最大熱出力まで十分計測することができる。

 以上のことから本変更は問題ないものと判断する。


Ⅳ 審査経過

 本審査会は昭和52年12月3日第165回審査会において審査を開始し、昭和53年2月17日第167回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。


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